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    U3イノベーションズの創業者が徒然なるままに書き連ねたブログです

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    U3イノベーションズが取り組む環境エネルギー分野のスタートアップエコシステム作り

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再エネタスクフォースのロゴ混入問題:政策議論の正常化を望む

戸田 直樹:U3イノベーションズ アドバイザー       東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 1.はじめに 内閣府の再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(再エネタスクフォース)とその構成員を輩出している公益法人自然エネルギー財団が炎上している。発端は、3月22日の再エネタスクフォースの会合において、構成員の大林ミカ氏(自然エネルギー財団事業局長)が作成・提出した資料に、中国の国営企業である国家電網公司のロゴマークが入っていたことであり

    • EUと日本で適用が始まるハイブリッド市場ー転換期の認識を

      戸田 直樹:U3イノベーションズ アドバイザー      東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 1.ハイブリッド市場とは 1990年代以降、世界各国で実施されてきた電力システム改革は、「市場支配力を極力払拭した市場が発する価格シグナルが電源運用と電源投資の最適を誘導する」という期待に基づいて行われた(図1)。ここで言う市場は卸電力市場、すなわち、電力システムで提供される最終商品であるエネルギー(kWh)の市場を指す。しかるに、各国における改革の経験から、卸電

      • 電力システム改革:錯綜する電力諸政策/所要費用と国民負担

                     阪本周一(公益事業学会会員/東急株式会社) 前書き 東日本大震災、福島第一原子力事故以前の電力政策においては、「安定供給(ベストミックス、ネットワークの健全等カバーする分野は多い)」、「経済性のある価格維持による消費者保護、経済界の国際競争力」が主目的であった。実施に関わる施策は概ねシンプルであり、劇的な外部環境変化を想定もしておらず、経営者達は長期的視点と関係業界事業者間との信頼関係の中で物事を進めることを重視した。穏やかな時代であった。  大震

        • 東京電力パワーグリッドのサイバー・フィジカル融合社会システムの恒常性調節への取組み: 産業革命を世界に燎原の火のように広げるMESH構想

          東京電力パワーグリッド 取締役副社長執行役員最高技術責任者 岡本浩 1.はじめに カーボンニュートラルへのエネルギー転換、AI、ブロックチェーン、5Gなど指数関数的に進歩するデジタル技術、そして一部の国で進行する人口減少が、エネルギー産業を大きく急速に変貌させつつある。日本では「Society 5.0」と呼ばれる第4次産業革命はすでに始まっており、その実現にはデジタル化による電気事業の変革が必要となる。 電力網とデジタルインフラの間には強い相互依存関係がある。出力が変動

        再エネタスクフォースのロゴ混入問題:政策議論の正常化を望む

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          卸電力市場に負の価格(ネガティブプライス)を導入するメリットはあるか

          戸田 直樹:U3イノベーションズ アドバイザー     東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 1.はじめにわが国では、太陽光発電、風力発電などの自然変動性再生可能エネルギー電源(VRE)の導入拡大に伴い、電力需要が小さい春秋等、電力の供給が需要を上回ることが予想される時間帯に、優先給電ルール[1]に基づくVREの出力制御が増加している。VREは燃料が不要で限界費用はほぼゼロと見做すことができるため、出力制御はなるべく行わないことが合理的であり、現行の優先給電

          卸電力市場に負の価格(ネガティブプライス)を導入するメリットはあるか

          将来のエネルギーマネジメントにおける需要サイドの役割

          東京電力パワーグリッド 取締役副社長執行役員最高技術責任者 岡本浩 これから進む発電側の脱炭素化と需要側の電化・AI/機械学習(ML)による自動化の進展により、カーボンニュートラルと第4次産業革命が同時実現されると想定されます。 現在のエネルギーマネジメントの仕組みは左図の通り、変動する需要に合わせて火力発電や揚水発電を調整することで電力系統内の需給バランスを保っています。電源の脱炭素化が進むと、ベースロード電源である原子力、水力、地熱、潮力に加えて、出力が変動する太陽

          将来のエネルギーマネジメントにおける需要サイドの役割

          第4次産業革命がもたらす未来を構想する-電化、ネットワーク融合、Vehicle to XそしてUtility3.0-

          東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者 CIGRE Japan委員長、スマートレジリエンスネットワーク代表幹事                              岡本浩 来るべき第4次産業革命がもたらす未来を構想するために、産業革命の歴史をネットワーク図(Network Diagram)で振り返ってみたい。ネットワーク図は、電化が社会に与えるインパクトを理解するのに役に立つ。 産業革命により、人類はかつてないほど大きな機械力を手に入れる

          第4次産業革命がもたらす未来を構想する-電化、ネットワーク融合、Vehicle to XそしてUtility3.0-

          【対談】分散型電力システムの実現に向けて

          岡本 浩 東京電力パワーグリッド株式会社 取締役副社長執行役員 竹内純子 U3イノベーションズ合同会社 共同代表 分散型電力システムの背景と狙い 竹内:本日は、東京電力パワーグリッド株式会社の岡本副社長をお招きし、「分散型電力システムの実現に向けて」と題して、色々とお話をお伺いしたいと思います。資源エネルギー庁は、2022年11月から「次世代の分散型電力システムに関する検討会」を開催し、2023年8月に第8回目の検討会が開催されました。早速ですが、分散型電力システムが求めら

          【対談】分散型電力システムの実現に向けて

          カルテル疑い事案-背景に「人為的」過当競争

          戸田 直樹:U3イノベーションズ アドバイザー        東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 (電気新聞 2023年6月26日版 3面掲載記事を転載、一部修正、追記あり) 公正取引委員会は3月30日、高圧以上の電力販売などでカルテルを結び独占禁止法に違反したとして、中部電力と中部電力ミライズ、中国電力、九州電力に課徴金納付を命じた。中部電力ミライ

          カルテル疑い事案-背景に「人為的」過当競争

          エネルギーの分散化が創出する地域の産業革命

          スマートレジリエンスネットワーク代表幹事 岡本 浩 1.産業革命の歴史とエネルギー人類が火を使い始めたのは、今から100万年以上前のことです。18世紀、ジェームズ・ワットの蒸気機関の発明により、石炭を燃やして発生する蒸気エネルギーでピストンを動かし、その力を伝えることで、人力や馬力に代わる機械が誕生しました。第一次産業革命です。しかし、燃料を燃やすと必然的にCO2が発生してしまいます。 第二次産業革

          エネルギーの分散化が創出する地域の産業革命

          限界費用玉出しのガイドライン化についての備忘メモ

                    戸田 直樹:U3イノベーションズ アドバイザー       東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 1.はじめに経済産業省は2022年、旧一般電気事業者など大手電力会社への事実上の規制として2012年以降実施されてきた限界費用玉出し(余剰供給力全量を限界費用によりJEPXのスポット市場に投入すること)を、適正な電力取引についての指針(ガイドライン)に記載することを決めた。  筆者は、過小投資対策である容量市場を導入しないまま限界費用玉出しが

          限界費用玉出しのガイドライン化についての備忘メモ

          あるべき電力システムの需給運用方式について

          戸田 直樹:U3イノベーションズ アドバイザー       東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 1. はじめに電力システムには、電気の需要と同量の供給が常に行われる必要があり、その需給バランスが一定程度以上崩れた時は、最悪広域停電に至り、市場そのものが崩壊するというデリケートな制約(同時同量の制約)がある。また、電力システムには必ず単一の系統運用者[1]が存在する。系統運用者は、電

          あるべき電力システムの需給運用方式について

          カーボンニュートラルでレジリエントな社会の実現に向けて

          東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員技監 岡本 浩 (本記事はSTS Forumでの講演を基にしています) 日本では、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて再生可能エネルギーの大量導入を進めており、再生可能エネルギーを最大限活用する社会への移行が大きな課題となっています。 日本における太陽光発電の導入量はすでに約65GWで、米国、中国に次ぐ世界第3位の規模となりました。これは、日本の国土の狭さを考えると、非常に大きな数字です。国土を上から見ても、日本

          カーボンニュートラルでレジリエントな社会の実現に向けて

          あいまいな定義/戦略的予備力とは何か 2022年07月04日

          戸田 直樹:U3イノベーションズ アドバイザー       東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 (電気新聞 2022年7月1日版 3面掲載記事を転載、一部修正、追記あり)  内閣府の再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(TF)は電力需給逼迫を受けて4月25日に公表した提言の中で、戦略的予備力の活用に言及した。これに対し東京電力ホールディングス経営技術戦略研究所経営戦略調査室チーフエコノミストの戸田直樹氏は、「戦略的予備力」の定義をい

          あいまいな定義/戦略的予備力とは何か 2022年07月04日

          失われたバッファーの回復が急務 2022年06月25日

          公益事業学会 政策研究会会員 阪本周一 (電気新聞 2022年6月24日版 3面掲載記事を転載、補足のための追記あり) 電力需給逼迫は2020年末に顕在化して以降、修復の兆しがない。23年1、2月の東京エリアでは、周波数変換設備(FC)マージン開放、試運転電力などを加味してもマイナス予備率となっている。公益事業学会政策研究会会員の阪本周一氏は、電力システム改革の中で失われた「バッファー機能」の回復が急務だと訴える。  2020年末以降、電力需給逼迫が顕在化し、落ち着く兆し

          失われたバッファーの回復が急務 2022年06月25日

          3月の需給逼迫/「電源不足」の認識共有を 2022年05月14日

          戸田 直樹:U3イノベーションズ アドバイザー       東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 (電気新聞 2022年5月13日版 3面掲載記事を転載、補足のための追記あり) 内閣府の再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォースが4月25日、「2022年3月の福島沖地震による停電や需給逼迫警報を受けた提言」を公表した。関東地方の需給が逼迫した3月22日の想定最大需要を満たす供給力は「存在していた」との主張を展開した。これに対し東京電力ホールディ

          3月の需給逼迫/「電源不足」の認識共有を 2022年05月14日