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「幻想再帰のアリュージョニスト」という山を登りはじめた。


高い山を登っている。頂上がまるで見えない。
その山の名を「幻想再帰のアリュージョニスト」という。

故郷で待つ酒浸りの子供が(ぼく……もう一度、山の頂からの景色が見たいな……ぼくの代わりに見てきて……くれる……ゴホッゴホッウェーゲホゲホヒック)と言い残して緊急治療室に運び込まれた。俺はその約束のために「小説家へなろう」へ登山申請を出した。

まだ山を登っている。視界は霧に包まれている。手探りで岩の突起をつかみ肉体を押し上げていく。どこかで見たような描写をつかみ現代日本への風刺を足掛かりに身体を持ち上げていく。「フゥーフゥー!」呼吸が荒い。第一話の先が見えない。カツン。小石が転がってくる。強固な信念ヘルメットで小石程度は跳ね除けることができるが、問題は小石を呼び水とした大きな落石だ。(この小説は本当におもしろくなるのか?)俺が山なら容赦なくそんなことを考えるやつの頭に石を落とす。ジャンルをトラバース。正調ダンジョンRPGからサイバー空手道場に注目を移す。発勁用意 NOKOTTA NOKOTTA「ハハ……」少しずつ高度を上げる。言葉が通じない相手が何かを話しかけてくる。俺はこいつらを殺すために値踏みする。違う。幻視だ。もうあいつらはいない。全員死んだ。あいつらが居れば楽しかっただろうな。ビールを飲んで……この世界でもビールと呼んでいいのかわからないが似たようなものがあるだろう。ジョッキをぶつけて一日の稼ぎを全て飲み干す。なあカイン。もういいか。この小説はもういいか。俺は一生懸命やったよ。わざと落ちることはできない。それでももういいか。なあ。肉体は意に反して機械的に登り続けている。機械的に右手を異界の雑踏に左手を蛇頭にかけて武侠ジャンルを引き寄せる。左足を機械少女、右足は異形魔術少女にかける。俺じゃない。機械的に登っているアイツは誰だ。シナモリアキラだ。俺は誰だ。俺は。なあカインよ。もういいか。そして俺は最初の山の頂に立った。

第二章第8話(通算12話)で発見された手記。

▼幻想再帰のアリュージョニスト - 小説家になろう

よく来たな。お望月さんだよ。

【お望月さん】胡乱派コラムニスト。映画や小説を愛する一方で「なろう小説」全般をほとんど読んだことがない。当編集部へ恐怖新聞的に原稿を寄稿していただいています。

各方面から困惑的な絶賛を受ける特殊ジャンル小説「幻想再帰のアリュージョニスト」を読み始めました。

「とにかく第三章まで読んでほしい」という山岳シェルパ(酒気帯び)の案内に従って読み始めたわけですが、これが「ハッキリしない目的!引き延ばされる謎!情報過多な超展開!」と、それほど面白いとは思えないのが現状なわけです。

長期連載を経て大人気カルト小説として成長していく大河作品の過渡期であれば面白くなる場面から読めばよいでしょう。しかし、序盤を飛ばすと大切な部分を見落とす可能性があるという善性に満ちた判断により、結果的に「登山」を強いられるハメになり、冒頭のような状況になっています。

作品世界や強いクセに困惑しながら手探りで作品を向かい合う体験は貴重なものですが、そこまでしてこの山を登る価値があるのか。現状までの状況やこれから読み始める新規読者に向けた手がかり、足がかりを整理していきたいと思います。

※本記事の内容はお望月さんが作中で感じ取ったものを羅列しています。新規読者ゆえの読み込みの浅さや誤読やミスリードにはまっている姿をお楽しみください。(よかったら面白いところを教えてね)

(これまでのあらすじ)

近未来日本の殺人サイコパス「シナモリアキラ」「異世界転生保険」により「剣と魔法とインターネットの世界」へイレギュラー転生した。「鉄の義手の言葉が通じない侠客」「異世界ダンジョン都市のトラブルメーカー」等の悪名を轟かせるシナモリアキラは彼をめぐる「魔女達の争い」に巻き込まれていく。

第一章

01話
異世界転生保険によって突然ダンジョンに放り込まれたシナモリアキラは片腕を失い狼のような魔物に襲われる。それを救った冒険者達と同行したシナモリアキラは絶対的な力量差の魔将と遭遇してしまう。

※情報過多及び場面転換がない一本道でありガラス一枚隔てた先でなんらかのドラマが発生する状態が続く。この話は最初の一品目に食すのは不向きではないか。後で真実が明らかになるとしても長く情報不足が続き読んでいて不安になる。

ポイント
・「異世界転生保険」により日本社会の富裕層は死後の転生が約束されている。
・シナモリアキラ(ハンドルネーム)は、高性能義手及びサイバー空手道場や情緒制動等各種アプリを搭載したサイボーク化された人類。
・異種族とのコミュニケーションが難しい。言語の壁(これは単純な言語ではなく、その世界に彼の居場所がないという意味に直結する)

02話
視点が異世界側に移る。何を言っているかわからない異世界人と協力をして闇の四天王的な存在を倒すことになる。異世界人アズーリアはダンジョンの階層を掌握。望む形に作り上げシナモリアキラに権限を委譲して再会を約束して去る。

※世界観の説明がありストレスが大幅に解消される。ハードな殺人描写や壮大な逆転劇など見せ場も多い。

ポイント
・シナモリアキラの情緒不安定さが露呈される。
・表出している態度や感情アプリで補正されたものである。
・魔術/魔女/呪術的な要素が展開される。
・異世界のシステムには現代日本のSE的な観点が導入されている。
・そのような人々には直感的に「権限」等の理解ができるかもしれない。

間章

03話
悪の幹部会議が行われる。悪も苦労している。シナモリアキラは気絶したまま色々とことが起こり第五階層は国際迷宮都市へ変貌する。

※間章ということでページ数も短く読みやすい(通常想定している一話分くらい)「シナモリアキラがアズーリアと再会する物語」という大目的が誕生したのでこの先を読み進める動機が生まれる。

ポイント
・悪と善という区分けではなく、ダンジョン世界を奪い合う「上」と「下」の違いのようだ。
・「下」には下の都合がある。
・アズーリアが奪還した階層は謎の存在によって掌握され国際迷宮都市と化す。

第二章

04-11話まで読了。
言葉が通じず万能言語(暴力)に生きるシナモリアキラ。彼は太い客である蛇頭のボスの紹介を受けて言語通訳者の氷魔女と出会う。順調に通訳を進めるシナモリアキラは路上のいざこざによりヤクザ組織からの襲撃を受ける。完敗を喫したシナモリアキラは闇医院に担ぎ込まれ復活。二人の魔女の協力を受けてリベンジマッチを決行する。

※導入が終わり本編開始。ついに物語が動き始める。実際ここから読み始めても問題ないと思う。(物語や語り部に対して好感をもってから第1話に戻ったほうが読みやすいのではないか)
本来の持ち味であろう会話によるドライブ感は軽妙で、気持ちよくキャラクターに入れ込むことができれば容易に読み進むことができるようになるだろう。だが展開が読めない、というか予測の余地がない。
未だにどのような態度でこの小説シリーズと向き合えばよいのか正体がつかめない。とにかくカッコイイ超絶描写が展開されれば帳尻があってオールオッケー的な小説でよいのだろうか。

ポイント
・猥雑都市の成り立ちや基本設定が説明される。
・やっと会話が成り立つ相手が登場してストレスが大幅に軽減される。
・邪悪な気功カンフー使い、聖炎魔術師、機械少女、氷魔女と言った「属性」付キャラクターが多数登場。
・シナモリアキラがシナモリアキラになった一端が断片的に明かされる。
・暴力に次ぐ暴力。そして暴力。

オススメの導入方法
01話挫折をして認識やエゴや名前が重要なファクターとなる世界観や魔女らのキャラクターが埋もれるのは惜しいと思う。第二章(04話)から読み始めて、猥雑シティの描写が気に入ったら彼の人となりを求めて01話へ戻るとよいのではないだろうか。

未来へ

おそらく第二章の最初の山場を乗り越えた。
荒くれもの集団を巨大なイッカクが押し潰しさらにそれを塗り替える何かがやってきた。魔女と魔女と魔女が全力で戦争を起こしてシナモリアキラが両腕を取り戻した。この戦いで得たものはこれからの物語の核となるのだろう。

まだ第二章は続く。酩酊神が言い残した「第三章、いや第二章後半まではぜひ……(代償として彼は塩の柱になった)」という言葉を信じてもう少しだけ読み進めてみよう。


追記。第12話でこれまでの展開を丸ごとひっくり返す展開が発生。どうしよう。なにを信じたらいいの!?(その叫びはポジティブな意味で発せられた)


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