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社会生活上のヴィルツ

深夜のマクドナルド。へ向かう道中でモバイルオーダーのwebページをSafariで開く。ビッグマックとミルクを1つずつ。 フロリアン・ヴィルツというドイツのサッカー選手がいる。2003年生まれの20歳だ。 ヴィルツはフォワードの1列下、いわゆるシャドウというポジションの選手。シャドウ、影と称されるこのポジションで彼は光の輝きを放つ。 相手選手たちの間でボールを受けたヴィルツはすぐさまゴール方向へ身体を向け、パス、ドリブル、シュート、様々な選択肢が可能な体勢への移行を瞬きの隙に

    • 十日市場

      今日。 新幹線に乗り、新横浜から横浜線で町田へ来た。 電車が駅に停まる度、勝手なことをまた考えている。 十日市場駅 ...この街では、年に一度、夏の最も暑い夜に十日間だけ市が開く。それは、自治体が主催した地元警察に申請を出したようなものではなく、いわば”闇”。 街の中でも普段は息を潜めているような人々(決して毎夜飲み歩くようなやかましい若者たちはこの市に訪れることはない)、そんな人々が自分の家にあるものを持ち寄って好き勝手に売って去っていく。 紙に書いたミミズののたく

      • じょうよう

        桜は綺麗だという話。桜は綺麗だなあ。本当に綺麗だと思うぜ、俺。 でもな、桜が咲いていない桜の名所っつうのも、綺麗なんだって気付いたよ、昨日。 昨日な、我々夫婦でいわゆる桜の名所に行ってきたんだ、電車で、つらつら揺られながらよお。 そしたらさ、その駅に着いて、その駅っつうのは、駅名にまあ桜の名所でなけりゃ一発で読めないようなムズい漢字が使われていてさ、そんなことは良いんだけども、まあ、駅に着いたの。 めっちゃ暖かいし、パーカーの上に薄ジャケットを羽織って出てきたはいいが家から出

        • たぶん興味ないんだろうけどさ

          朝、仕事に向かう時に歩く国道の大きな道 大概、憂鬱な気分で歩いてるんだけどさ、 綺麗なんだよね、具体的に何がってわけじゃないんだけどさ 薄曇りの朝、肌寒くて風が強くて、それでも空は青くて高い、太陽光は間接的に建物を照らして、遠くには変哲のない山、ただ濃いグレーが木や土や石の多くの集まりによって作られているだけ ただそれだけなんだけどさ 今思い出すとなんかこう、涙袋が熱くなるくらい、目の裏に刻んでおける景色なんだよね 自動車がたくさん通って排気ガスなんか物凄いはずな

        社会生活上のヴィルツ

          さあ、きた。獲物がかかった。 こりゃ、大物や。ええか、今からわしの言うことよぉく聞くんやぞ。 ええな、アゴ、アシ、マクラ。 な、アゴ、アシ、マクラ。これさえあればええ。これだけ覚えとけ。 アゴ、つまりは飯や。食うもん。な。 飯があったら三日は動ける。 アシ、こりゃ移動手段やな。自転車やらバスやら飛行機やら。最近は、ハンドルも何も握らんと動いてくれる言うちゃんちゃらおかしな乗りもんもあるみたいやないか。何でもいいから移動せえ。動き続けることが肝要や。 マクラ。これは寝床

          「Mash Room」

          薬剤師が適切な薬を提供するのと同じように、私は適切に髪を切る。美容師だからだ。 顧客に合わせてヘアスタイルの要望を訊き出し、実際に髪の毛を切っていく。顧客はたとえ十分に満足していなかったとしても、大抵満足した風で帰っていく。単調な仕事だ。切ったばかりの髪は黒い絨毯のように地面を覆う。 チリトリと箒で切ったばかりの髪を掬い取る。やがて、チリトリの中は髪の毛でいっぱいになる。顧客を迎え入れてから、ここまで大抵三十分。予約は一時間に一名と決めている。私とアシスタントの足田は、店内

          「Mash Room」

          映画体験記①

          感想を書く。 これまでは、こうした類の文章は極力避けてきた。映画感想文や読書感想文みたいなものを披露し始めると、「これを観てる・読んでるジブン、カッコいいだろ?」になりかねないと思っていたからだ。「人に見せるために観る・読む」は鑑賞者として微妙だと思うので、あまりそれはしたくない。スタンスはあくまで「自分が観たい・読みたいものを鑑賞し、純粋に伝える」。これに尽きる。これを今年はやりたい! だから、感想ではなく、体験を記す。自分との接点を探る。現実世界と作品の世界を、極力地続き

          映画体験記①

          2024.01.01

          あけましておめでとうございます、とも簡単に言えない状態に、今日はなりました。 どうかご安全に。 テレビやネットを見ていると、画面内の情報と現実が、自分の中で上手く紐づかないのを感じます。 たしかに現実に起こっていることです。 それは分かるのですが、なかなか実際自分の周辺でそうした事が起こった場合、どうなるのか想像がつきにくい。 暗闇に沈む黒い画面の中で、橙色の炎が立ち上っている様子など、全く現実味がない。自分の中で落とし込めないのです。 炎が上がって、爆ぜて、また燃え

          疲弊文学.

          疲れていた。 彼はただ、疲れていた。 疲弊の中に自分を見出していた。疲弊があり、自分があった。とてつもない時間を掛けて、労力を費やして、彼は疲れていった。 疲弊はオブラートのように彼を包んでいた。蒲団に包まれ、彼は深く眠った。彼が眠る間、樹木が育ち、熊たちは都市へと赴き、育ち盛りの木の実を齧った。疲弊は彼の中枢を砕き、柔らかくふやけた肉を育てた。疲弊があるからこその成熟した睡眠を得た。 とても信頼できる眠りは彼に束の間のくつろぎを与えた。それでも疲弊は彼の身体の、心の、彼を取

          疲弊文学.

          そうこうしていると、夜になった。 文化的な生活に浸っていた。 文化的な生活を送ると、社会的な生活が覚束なくなってくる。 逆に社会的生活に活路を見出すと、世界に色が無くなってくる。 絶妙なアンバランスの中を、右往左往しながら彷徨う。 朝になり、昼になり、夜になった。 社会の一日は真っ当に、早々と過ぎて行った。 仕事がなくなると、一日はいやに早く、冗長に間延びして行った。 夜が長くなった。 文化的生活は夜と相性がいい。 暗闇で膝を抱えて、破滅的発想に浸る。もしくは極楽閻魔ワ

          さがす

          行きつけのカフェに行こうとショッピングモールの階段を上っていた。 終盤に差し掛かったところに小さな子がいた。 小学校1年生か、もっと小さいくらい。 ポニーテールで、首から白くて音のなるものをぶら下げていて、鼻を出した状態でマスクをしていた。彼女は平然と階段を下る。 私は少し彼女を見た。 階段の端と端ですれ違った。 階段を上り切った。少し歩いてカフェに向かっていると、お母さんがいた。「お母さん」と言っても私の母ではなく、さっき会った幼子のお母さんだ。あまりにも顔が似ていて一目

          片栗粉

          片栗粉に捕らえられて、身動きを取れずにいた。身動きが取れず、徐々に片栗粉は冷えて、固まっていった。それで、いよいよ動きができなくなって、私は狭い範囲でぬるぬると動くしかない。だが、動いた。動くことだけはしていた。それでいい。それでいいぞ。片栗粉の状態の100%。いや、たまに逃げた。95%。片栗粉の柔く厚い膜が動く私を捕らえて離さない。片栗粉は嫌いじゃねえが、今日は朝からずっとだ。片栗粉だ。もう少しで酢豚になっちまう。酢豚になる前に眠ろう。酢豚を作る課程で、パプリカを切ったり、

          大の字になる

          桜が咲いて散って、高貴なる方々との会話が始まって終わって、そうするともう、水炊きは出来なくて、私はかなしい。水炊きを食べたい。腐らないほど私は強くなく、寝込むほど私は弱くない。中途半端にゆらゆらゆらゆらと右に左にけんけんぱをしながらそれでも立ち続けている。立ち続けて、立ち続けて、そして立ち続けて、これは何年目になるのだろう。いつの間にか日は短く、気温は低くなっている。 また日が長く、気温が高くなった時に水炊きを作ろう、と。作ろうと約束してみた。約束してみただけで、多分簡単に作

          大の字になる

          ミート・ミーツ・ザ・ワンダー・ミート

          朝(あした)は来なかった。外套を強く後ろに引っ張る強風は、とても彼には抗いきれなかった。抗ったところで外套は、彼をその場に押さえつけて離さなかった。 彼はとても利口だった。利口で、さらに情緒的だった。だから、強風に晒された外套をすぐさま剥ぎ取り、風の抵抗を無化しようとしたが(実際にそれを剥ぎ取り、より身が軽くなるのを実感したが)、それはこれまで十余年の間、行動を共にした代物。彼にはなかなか手放せるものではない。外套を裏返しにして両腕で包み込むと、そのまままた途方もない大地を行

          ミート・ミーツ・ザ・ワンダー・ミート

          ニョイバナしようぜ!

          ♪♪♪ DJ 肛: さあ、今週も始まりました『ニョイバナしようぜ!』 パーソナリティのDJ肛です。 この世を生きる人々の「如意棒のように伸縮自在な人間性を手にしたい」「自分を意のままに操りたい」「どうせなら他人も意のままに操りたい」そうした危うい願望を、修学旅行の夜11時に布団の中で開催される恋バナのように盛り上げていきたい、そんなややこしい思いを抱いたディレクターの卵・齊藤の脳みそから滲み出したのがこの番組。 齊藤さんが構想したものに近づいているかは分かりませんが、わたく

          ニョイバナしようぜ!

          なんか書く2

          夜を歩いた。寒い。半袖じゃ寒い。長袖をくれ。 満たされた。寒い。裸じゃ寒い。毛布をくれ。 冗談を言った。寒い。薄ら寒い。隠れさせてくれ。 昨日今日と寝て過ごした。本当にベッドの上で40時間くらい過ごした。寝て過ごしたと言っても40時間のうち20時間くらいは目を開けているわけで、何かをしなくてはならない。その間中、ゲームの画面上でサッカーボールを蹴り散らかした。こんなにずっと同じことをしているのに全然相手に勝てない。前回のワールドカップの年から始めたから気付けば5年近く経って

          なんか書く2