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本の記憶#3 窓ぎわのトットちゃん 黒柳徹子著

小学生のとき、放課後は学童保育クラブに通っていました。

あるとき、ハンバーグをつくることになりました。

僕は、何かに取り憑かれたように、タマネギのみじん切りを果てしなく小さく切り刻み、キャベツの千切りを果てしなく細く切りました。

すごく時間がかかったのですが、学童の先生は、とがめることなく、僕が納得して作業を終えるまで、辛抱強く見守ってくれました。

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中学生のとき、一時期の数学の授業はほとんど聞いていませんでした。

教科書の隅っこに、円周率が何桁も載っているのを見つけてしまい、僕は、それが気になってしまって、ひたすら円周率の数の羅列を眺めていたんです。

授業を聞いていないことは、先生はお見通しで、僕は、職員室に呼び出されました。

怒られるのかなと思ったら、先生は1枚のプリントをくれて、「これ、やってみろ。」と、言いました。

いわゆる数学パズルの問題でした。

得点を競うパズルなのですが、答えが何通りもあって、やり始めると、キリがないんです。

僕はそれに熱中しました。

数学の時間はもちろんのこと、しばしば他の授業中も、そのパズルをやっていました。

自分が納得できる答えが出て、飽きるまで、ずっとやっていたと思います。

数学の先生は怒らずにこっそりと見守ってくれました。他の教科の先生は、どうだったか知りませんが・・・。

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「個性を尊重する」とか、「得意なことを伸ばす」とか、「自己肯定感を高める」とか、よく耳にします。

子どものとき、どれだけの大人が信じてくれて、見守ってくれて、認めてくれたかって、たしかに、大事ですよね。

僕も、納得するまでタマネギを切り刻んだり、数学パズルに熱中したりという、なんでもないような経験が、その後の小さな自信になっていたりします。

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「窓ぎわのトットちゃん」は、徹子さんが小学生のときのお話です。

徹子さんは、小学校1年生のとき、個性が強すぎて小学校を退学になるんですね。それで、不思議な学校「トモエ学園」に転校する。

どこか「疎外感」を感じていた徹子さんは、トモエ学園の校長先生らに見守られ、友人達と励ましあいながら成長していくんですが、その日々が、もう、感動なんです。

いつの間にか、読んでいる自分が励まされ、なぜか勇気が沸いてきます。

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だって、戦後最大のベストセラーと称され(800万部?)、海外でも翻訳されている(35ヵ国?)モンスター本ですよ。

ここまで愛される本になったのは、読みやすい上に、普遍的なことが描かれているからなんでしょうね。

今の時代だからこそ、改めて読む価値があると思うのです。

ただ、この本を読み返す度に、僕は、しばらく徹子さんにハマってしまうんですよね。「徹子の部屋」を思わず録画してしまう病にかかるんです・・・。

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子どもから大人まで、どんな世代の人も、自分の読み方で読むことができる、希有な本だと思います。

僕のお気に入りの1つです。




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