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〈生徒がレジャーを理由に欠席〉高校教員は胸の内でどう思っているか?

家族旅行などのレジャーを理由に学校を欠席したことはあるだろうか。

ひと昔前であれば御法度のような雰囲気が漂っていたのかもしれないが、最近はそうでもないため、過去に経験済みの生徒や保護者は多いかもしれない。

私もいままで高校教員を務めるなかで「明日はディズニーランドへ行くので欠席します」などという連絡が入ったことは何度かあるし、なかには「家族で海外旅行へいくので1週間欠席します」という長期欠席の連絡が入ったこともある。



さて、こういったレジャーを理由に欠席する生徒がいた場合、高校の教員は実のところ胸の内でどのように思っているのだろうか?



まず、前提として、教員は保護者の価値観や都合がさまざまであることを意識しなければならない。

学校の授業よりも家族との思い出を作るほうが大切だと思う保護者もいるだろうし、また、シーズンオフでなければまとまった休みをとれない保護者もいるだろうし、ピーク期間の旅行は割高になるため避けたいと思う保護者もいるだろう。

それぞれの価値観や都合に正解はなく、どれも立派な保護者の意向である。



そのためレジャーを理由に欠席させたいという保護者の意向は尊重されるものであり、教員はきちんと受け入れなければならない。



なお、こういう類の話題になると、上下関係の概念と結びつけられる傾向がある。

たとえばすぐに昭和時代の教育観を引っ張り出してきて比較し、現代は教員が保護者をお客様のように扱い、遠慮したりへりくだったりしているなどと安易に結論づけてしまう。

しかし教員がレジャーを理由に欠席する生徒を受け入れる行為は「教員よりも保護者の立場が上である」ことを意味するのではない、とわたしは思っている。

そのため、先述のとおり、保護者の価値観や都合はさまざまであり、だからこそ教員は受け入れているのだという単純な認識を持ったほうが良いだろう。



ちなみに、わたしはレジャーを終えて登校してきた生徒から、お土産をもらったこともあるし、写真を見たこともあるし、細々とした感想を聞いたこともある。
どれもくすぶった感情などなく、楽しめてよかったね、大切な思い出が増えてよかったね、という気持ちで明るく受け入れていた。
これは紛れもない事実である。



とはいえ、高校側の事情も書かなければならない。



まず、授業は毎日行われているし、生徒たちは毎日出席している。

教員は定期試験までの授業数を計算し、それに合わせてカリキュラムを組み、計画的に進めている。

1回欠席するだけでそのぶん内容に遅れをとるため、特に高校の授業であれば、科目の性質や生徒の能力によっては、取り返すことができない場合もあるだろう。

また、当然、提出物・小テスト・発表なども、随時、授業内に組み込まれている。

公欠・忌引き・出席停止であれば配慮されるが、レジャーによる欠席は配慮の対象とならず、言わずもがな減点となる。

提出物は未提出のためゼロ点。
小テストは未受験のためゼロ点。
発表は未発表のためゼロ点。
(出席後に取り返せば遅れとして満点ではなくともある程度の点数がつく場合もある)

そのため欠席することは、授業や成績という点において、マイナスであることが明白だ。



また、これも当然だが、進路活動の際、欠席日数は重視される。

特に指定校推薦を希望する場合は欠席日数が決め手となることも少なくないし、指定校推薦でなくとも、進学や就職の際に作成される調査書には欠席日数が記載される。

おそらく欠席日数を完全に度外視できるのは、一般受験の生徒(試験による実力で大学などを受験する生徒)だけであろう。

最近は一般受験が減ってきていることもあり、多くの場合は、進路活動の際に欠席日数がついてまわることとなる。



これらの事情を踏まえると、やはり、教員としては、レジャーを理由に欠席などしてほしくないという気持ちを抱くことが自然な流れだろう。



高校は義務教育ではないし、今後の人生を左右しかねない進路活動も控えている。
だからこそ、とにかく、1日でも欠席しないに越したことはないのである。
厳しく感じるかもしれないが、ごく当たり前のことであるはずだ。



そのため欠席する生徒や保護者は、教員からの印象ではなく、自分自身にデメリットがあるという事実をしっかりと把握しておいたほうがいいだろう。



ただ、繰り返すが、前提として保護者の価値観や都合はさまざまであり、教員はそれを受け入れなければならない。

そのため感情的な部分で生徒に対する印象を変えること(たとえばレジャーによる欠席をしたからけしからん生徒だと思うことなど)は不適切だ。

もし何か不満を感じることがあるのであれば、それは単に自分自身の価値観と都合によるものであり決して正解ではないということを、教員は肝に銘じておくべきである。



なお、下記のように別の問題を引き起こしたケースもあるため、追記しておく。



▶︎体調不良のため欠席しますと連絡のあった生徒が、翌日、ディズニーランドのグッズを身につけ、友人たちにもディズニーランドの話をして、明らかに嘘だったことがわかった。

試験前ということもあり、多くの生徒は「こんなことしていいの?」と不満げだったし、教員もそれぞれ思うところがありそうな表情を浮かべていた。

しかし、嘘であることに変わりはないものの、保護者は学校に対して欠席理由を正直に伝えることが躊躇われたのだろうし、その心情は理解できなくもない。

また、それ以外の振る舞いについては生徒自身の個人的な性格などによるものなので、保護者の意向や欠席の理由云々とは関連ないものとし、切り離して捉えなければならないだろう。



▶︎体調不良のため欠席しますと連絡のあった生徒が、実は原付の免許を取りにいっていて、明らかに嘘だったことがわかった。

学校の規則として事前に申請のない免許取得は禁止されていたことや、また、時期的な関係により欠席ではなく出席停止扱いになっていたことなどを踏まえ、この場合は処分が下った。

自己都合による欠席をしたという事実そのものというより、それに付随する部分が規則違反に該当するため、処分は正当な判断だといえるだろう。



これらのケースからわかることは、レジャーなどの自己都合による欠席をしたいのであれば最低限のマナーはちゃんと守ろうね、ということかもしれない。

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