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臨月、胎児発生を振り返る

 とうとう臨月まで来ました。1ヶ月後には赤ちゃん産まれてると思うとドキドキ。

 このnoteを始めた目的は、大学で発生生物学を学んだ筆者が、自分の中で起こる胎児発生を改めて勉強することでした。記事としてアウトプットすることで私自身の学びにつながりました。
 でも、胎児発生の旅は終わりが近づいています。臓器はすっかり完成し、いつ外の世界に出てきても大丈夫な状態。私が大学で学んできた胎児の発生プロセスを、赤ちゃんはもう全部体験してくれました。

 これから赤ちゃんは胎児を卒業し、出産を経て、新生児になります。そうなると私には未知の世界で、専門知識は何もありません。このnoteもふつうの育児日記みたいになっていくと思います。

 胎児発生解説シリーズの最後に、受精卵からの初期発生を振り返ってみたいと思います。

 妊産婦さん、赤ちゃんはたった1mmの受精卵からこんなに大きくなりました。

●受精

スコット・ギルバート、BIRTHいのちの始まりを考える講義、P.84、図3.5ヒト受精
注)写真はマウス胚、ヒトも同様に発生
注)写真はアカゲザル胚、ヒトも同様に発生

内部細胞塊(青)から胚盤葉が作られる。


各種図は過去の記事より。

●受精後19日

約2.0mm、まず最初に神経系の元が形作られる。体節(脊椎などの元)も少しでき始めている。

Carnegie Stage9

●受精後24日

約3.0mm、体節数13対。心臓の元ができている。
月経が28日周期で排卵日辺りに受精したとすると、受精後24日にはいつもより月経が遅れているので妊娠に気づく頃。妊娠5週くらい。心臓の元(心隆起)があり、心拍確認ができるかどうか、という時期。

Carnegie Stage11

●受精後26日

約3.5mm、体節数22対。くるんと曲がってきた。臍帯ができている。

Carnegie Stage12

●受精後28日

約4.5mm、体節数30対以上。妊娠5週頃の形態変化が著しい。もう手足の元(肢芽)ができている。

Carnegie Stage13

●受精後40日

約9mm。目の元(水晶体胞)がうっすら見える。初期胚らしくなってきた。妊娠8週くらい。しっぽが長い。

Carnegie Stage16

正面から見るとこんな感じ。臍帯を見ると、臍動脈、臍静脈がはっきりと形作られている。

Carnegie Stage16

●受精後44日

約13mm。まだ1cm強。眼球がはっきりしてきた。手の水かきが見える。

Carnegie Stage18

●受精後52日

約23mm。1週間で1cm成長したけど、まだ2cm。1円玉くらいのサイズ。
水かきがなくなって指がはっきりしてきた。しっぽも消えかけている。

Carnegie Stage21
1円玉の直径は2cm

●受精後56日

3cm。もうすっかりヒトです。

Carnegie Stage23

 妊娠2ヶ月頃には外見が胎児らしくなり、今後は体内の臓器がどんどん形成されていきます。

 妊娠2ヶ月って、つわりがきつくてしんどい頃。胎児も3cmしかないし、まだ全然お腹は大きくないのに、嘔吐したり食べられなくなったり食べないと気持ち悪かったりご飯炊くにおいが無理になったり眠かったり、様々な症状に悩まされました。まだ流産の可能性も高いし、家族や職場に伝えるかも悩んでましたよね。

 そんな妊娠初期を経て、徐々に胎盤ができて「つわおわ(つわり終わり)」を迎え、なんとか妊娠中期に入り、少しお腹が出てくるようになりました。戌の日に安産祈願に行った方も多いと思います。

 親しい友人に妊娠報告をして喜んでもらったり。先輩ママパパからアドバイスをもらうようになったり。気が早いと思いつつベビー服買ってみたり。

 楽しい妊娠中期はあっという間に過ぎ去り、妊娠後期に入りました。お腹は大きくなってきて腰を痛めたり、足が浮腫んだり攣ったり、妊娠線がバシバシ入るようになったり、マイナートラブルは尽きません。一時的にイライラしたり悲しくなったりするけど、どれも赤ちゃんが大きくなっている証拠。胎動も激しくなって、4Dエコーで顔がはっきり見えたりして、胎児の存在を感じるようになりました。
 そして気づけばもう臨月。臓器の機能も完成し、いつ外の世界に出てきても大丈夫です。


 赤ちゃんが受精卵から胎児まで成長するすべてのステップに、膨大な数の遺伝子が働いています。細かいところは遺伝子が働いていない箇所があるかもしれないけど、少なくとも今わかる範囲ではヒトを作る遺伝子がうまく働いて、赤ちゃんが成長している。奇跡だと、心の底から思います。


 今回ご紹介した写真は、京都大学の先天異常標本解析センターに収蔵されているヒト胎児たちです。多くはなんらかの理由で流産してしまった子たち。
 ヒト胎児発生の研究は、流産個体や、戦時中の倫理的にアウトな人体実験により進んできたという歴史があります。今も流産個体が研究に用いられることはあります(もちろん親の同意が必須)。

 無数の、この世に生まれなかった命がある。その一方で、今私のお腹の中には痛いほど蹴ったりパンチしたりする命がいる。出産を終えた方の腕の中にはこの世に生を受けた命がいる。その奇跡的な事実を忘れないでいたいなと思います。



出典:塩田浩平, ヒト発生の3次元アトラス , 日本医事新報社, 発行日2011年7月

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《終わり》

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