古典を想う:恋しい人を夢に見ること

恋しく思っている、あるいは気になっている相手が夢に出てきたとき、貴方はそれを特別に思うでしょうか。あるいは、ただの夢だと感じるでしょうか。

現代は通信手段も豊富で、家に閉じ籠もっていても、想い人とビデオ通話をしたり、メッセージのやりとりをしたりすることができます。
けれど、いくら連絡の方法があったとしても、相手からリアクションがなければ、「あの人は私をどう思っているのだろう」と不安になってしまいます。これは今も昔も同じはず。
そんなつれない、あるいは交流の少ない想い人が、夢に出てきたらどうでしょう。嬉しいような、寂しいような。

こんな気持ちを31文字にきゅっと込めた、すてきな歌がありました。

うたた寝に恋しき人を見てしより
夢てふものは頼みそめてき

小野小町(『古今和歌集』より)

うたたねで恋しい人が夢に出てきてから、夢というものを頼みにするようになってしまいました……という歌。
なんとも可愛らしい恋心。こんな気持ちを打ち明けられたら、ますます虜になってしまいそうです。さすが、小野小町。

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