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グラスの水を飲み干すように命の糧を補給する旅-アイスランドとノルウェー

アイスランドへ旅したのは3年前。ニューヨークからだと意外に近く、5時間ちょっとで着くので、カリフォルニアに行くよりも近いアイスランド。秘湯の温泉にたっぷり浸かった後に全身マッサージを1時間受けた、に匹敵するかそれ以上の気持ち良さだった(フェイシャルマッサージ、頭皮マッサージなどなど付けても余りある)。

何が気持ち良いって、まず目にはいる色(景色)、そして空気の味(これほど美味しい空気は未だ吸ったことがない)、鳥の声、水の音(滝の音、氷河の溶け込む音、フィヨルドの港に静かに波が寄せる音など)、そして白夜の空の色(冬はオーロラが美しいらしい)。

くねくねと曲がる道のワンカーブ毎に全く趣の違う絶景が眼球にガッと飛び込んでくるので、その度にオーケストラの演奏がクライマックスに向かう瞬間を経験しているような感動に、息を飲み過ぎて過呼吸になりそうなほど。段々反応のバリエーションも足りなくなって、最後にはひたすら無言になった。

フィヨルドの絶景も、火山跡の絶景も、ノボリフジ(ルピナス)が地平をどこまでも埋め尽くすこの世の景色離れした絶景も(6月下旬に見られる、特に南部から南東部のノボリフジは圧巻)、氷河の水縹色も、ターコイズ色の海も、地面を割って落ちる滝も、空から降る滝も、こんな穏やかで色とりどりの美しい世界が、あの喧噪のタイムズスクエアと同時進行で存在しているのだ!という当たり前の事実に、地球って!!と意味不明の感想を叫びたくなる。 

そういえば、アイスランド滞在中に見たテレビで火星特集をしていたのだが、火星を模したロケ地が、たまたまその日行ってきたところで、「あ!今日行ったとこ!」とミーハーな感動とともに、確かにアイスランドには地球離れした景色が多数存在し、ニューヨークから一番近い疑似火星でもあるなぁとしみじみとなった。

アイスランドで楽しかったのは、町も何もないミドルオブノーウェアな道に忽然とめちゃくちゃおしゃれなカフェが現れたりするところ。入ってみると、これまためちゃくちゃおしゃれなお兄さん二人がとっても美味しいカプチーノを作ってくれた(美味しいビールもあった)。だいたいあなたたちどこから通勤していらっしゃるの?という謎もさることながら、そのオサレヘアー&ファッションはどこで?というどうでもよい疑問も湧く。

だって、私もド田舎育ちですけど、私の住んでいた町では一軒しかない青木という床屋でみんな髪を切るものだから、男子はみんな青木ヘアー(=前髪だけちょっと長めの角刈り)をしていたのだ。アイスランドの青木ヘアーがそもそもおしゃれであるという可能性もあるが。

カフェだけではなく、どんなに小さな集落にあるレストランでも、ニューヨークの高い(高すぎる)レストランに匹敵するかそれ以上に美味しい料理にありつけるところも、さすが観光大国アイスランドといったところ。

そして忘れてならないアイスランドの魅力と言えば、温泉。ブルーラグーンはあまりに有名だが、観光地化し過ぎてそれほどくつろげない。シークレットラグーンもお湯が冷たく温水プールみたい。私たちが最も「これぞ!温泉!」と海と山々の絶景と共に堪能したのは、GeoSeaという島の北部にある温泉だった。

インフィニティプールスタイルの温泉内にドライブスルーならぬスイムスルーなバーもあり、温泉に浸かりながらすーいすいとビールも買えちゃう。当時はオープンしたてで全く混んでおらず、とっても綺麗な脱衣所に、地元の人はタダで入れるとかで、地元民数人がゆっくりと浸かっている長閑な雰囲気も良かった。

アイスランドは小さな島国なので、レイキャビクの空港で降りたらレンタカーを借りて、丁度良い距離毎にお宿を取り、それぞれの地で2,3泊ずつしながらゆっくりと車でぐるっと一周する旅がお勧めです。

と、まるでアイスランド旅行記みたいになったけど、実際に書きたかったのは、今年3年ぶりの旅行でノルウェーに行ったことでした(おいおい)。

アイスランドでフィヨルド大好き人間になった私たちは、今年ついにフィヨルドの大御所ノルウェーへ二週間の旅をしたのでした(Faroe Islandsとの間で迷った)。主にStavangerの辺りとLofoten諸島。上の画像がLofoten。

二週間という期間が丁度良く、何もしない日も多くて、まさに脳のカスが取れる旅。そして二週間もいれば自然と「そろそろ家に帰りたいなぁ」となるもので、去る時の独特の名残惜しさ、一過性の象徴である旅人としての自分がLofotenの世界から明日の朝にはその僅かな存在の形跡もタオルやシーツと共に綺麗さっぱり洗われて、また別の誰かがその存在にとって代わるというまるで人間の生死をぎゅっとコンパクトに凝縮したような旅独特の寂しさもあまりなかった。

グラスの水を飲み干すように十分に命の糧を補給して、よし、家に帰ろう!と搭乗ゲートに並べば、今からまさに夢のマンハッタンへ旅行へ行くのだ!というノルウェー人の家族連れがなんだか楽しそうに旅の計画のあれこれを夢見心地に話している。

そうか、私の住んでいるあのごっちゃごっちゃの現実世界が、この人たちにとっては夢の世界なんだなぁ、と違う角度から見ると全く違う絵が現れるトリックアートみたいに、マンハッタンが見えてきて、帰ることがまた楽しみになってくる。

そんな風に降り立ったニューヨークは涼しくて、住み慣れた街を歩けば、近所の友人がヘイ!なんて声を掛けてくれて、ただいま帰りましたとご挨拶。

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