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【発達障害(神経発達症)に関する本#3】『ぼくとベルさん 友だちは発明王』

読書が得意ではない私がおすすめする、発達障害(神経発達症)に関する本シリーズ。
▶︎#1
#2

今回は文学作品です。
学習障害がある男の子の話ですが、読むうちにストーリーに惹きこまれていきます。
小学生から読めますが、大人にも読んでいただきたい本です。



✏️字が書けない=勉強ができない?

舞台は1900年代のカナダ。
主人公は読み書きが苦手な少年、エディ。
学習障害への理解はなく、左利きが矯正されてしまうような時代です。

10歳になったばかりのエディは、父さんから大事な用事を頼まれます。
丘を下ったところにあるマクレアリーさんの農場まで手紙を届けて、返事を持ち帰るのです。

ところが、返事は書いてもらえませんでした。
「ほれ、こう書くんだ。八時に来ます、とな!」

エディは「eight」が書けません。

だけどなぜだか、そのスペルがなかなか思い出せないのだ。頭では、これ以上ないほど、よくわかっているのに。
(中略)
ただ、字に書こうとするとだめなのだ。

結局時間は父さんに伝わらず、「eight」が書けないことが分かったのを機に、家族の接し方が変わります。
父さんはエディにおつかいを頼むことはなくなり、弟に新しいことを教えました。

エディは「勉強ができない」と思われてしまったのです。
実際は読み書きだけが苦手なのですが、エディにはそれを証明することができません。

✏️ベルさんとの出会い

そんなある日、エディはベルさんに出会います。
発明家として知られるアレクサンダー・グラハム・ベルです。

エディはこの世でいちばんかしこい人にあったと興奮して家族や先生に話しますが、誰も信じてくれません。
その後も、エディはベルさんと会って自分は読み書きができないことを話します。

「読み書きができないって、だれに言われたんだね?」
「みんなです」
「そうか、なるほど。そういう"みんな"とやらに、わたしも以前会ったことがあるよ。でもまあ、"みんな"の方がまちがっていることがほとんどだったがね」

ベルさんはエディを自宅へ招待し、ヘレン・ケラーを紹介してくれました。
エディはヘレンから単語を覚えるコツを教わりました。
ベルさんとの出会いが、エディの日常を少しずつ変えていきます。

✏️得意な数学を生かす

ベルさんはエディとの会話の中で、エディが読み書きは苦手でも、数学が得意であることを見抜きます。
父さんから大きな石のまわりを掘るように頼まれたとき、エディは学校にある応用数学の本を見て(読むのではなく、絵を見て)石を動かすことに成功しました。
「大人三人分の仕事をした」「今日はほかにもわかったことがある。おまえが、とてもかしこい子だということだ」と、父さんから言ってもらえて、エディは幸せな気持ちになります。

エディの知性と判断力が、後の事件解決に大いに役立つのですが……ぜひ本書を読んで確認してみてください。

✏️ゼノンの逆説(パラドクス)

ベルさんからエディにプレゼントが届きました。
小包を開けてみると、中には手紙と「ゼノンの逆説(パラドクス)」という本が入っていました。
「アキレスと亀」の話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

エディは父さんの辞書を使って、少しずつ本を読み進めていきます。
そして、手紙の返事を書くために、毎日毎日書き続けて、7回書き直し、3回父さんに見せて直してもらいました。
こんなに一生懸命に取り組んだのは、エディにとって初めてのことでした。

ベルさんに手紙を出した後もエディは「ゼノンの逆説」を使って読み書きの勉強を続けていました。

ひょっとしたらいつまでたってもゆっくりとしか進めないかもしれない。だとしてもぼくは続ける。ヘレンはずっと目も耳も不自由なままだけど、途中でやめたりしない。それなのに、どうしてぼくがやめられる?

しかし、学校の朗読の授業では、席にはいても参加してはいませんでした。

そんなある日のこと、エディの教室にベルさんがやってきたのです!
ベルさんはエディに「ゼノンの逆説」を朗読するよう、お願いしました。

果たしてエディはみんなの前で朗読することができたのでしょうか?

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ちなみに、私の中でエディは「ホームアローン」のケビンで脳内再生されています。
余談ですが、ケビンも荷造りができないところや、とっさにお店のものを持って帰ってしまうところなど、発達凸凹っぽいなと思います。


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