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星野リゾートの教科書 星野佳路

星野リゾートの教科書 星野佳路
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○こんな人におすすめ○
・経営に興味のある方
・星野リゾートが大好きな方
・読書好きな方
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本書は、これまでの星野リゾートの様々な課題に対して、星野社長がどんな本を参考にし、その本をどう生かしたのか、実際のエピソードを用いてまとめられた1冊です。
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教科書の理論は机の上でしか通用しない、そう思う人は少なくないかもしれません。しかし、星野社長は「教科書に書かれていることは正しく、実践で使える」と主張しています。
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星野社長の教科書の生かし方は、
1.本を探す。
できれば書店に1冊しかないような古典的な本
2.読む。
1行ずつ理解し、わからない部分を残さず何度でも読む
3.実践する。
100%教科書通りにやる
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最後の100%教科書通りに実践するのがちょっと難しそうだなと思いました。ただ、できる人が少ない分、実践したらかなり成果が出そうです。
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例えば、星野リゾートトマム。トマムは1983年に会員制リゾートとしてオープンした会員権の販売を軸にしたビジネスでした。しかし、90年代に入ってバブル経済が崩壊すると、トマムビジネスは破綻し、2004年に星野リゾートが運営を引き継ぎました。
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この時北海道には、ニセコ、サホロ、キロロ、ルスツといった大規模リゾートが5つありました。トマムは、交通アクセスや規模的な立ち位置は下位の方でした。
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そこで星野社長は、コトラーの「競争地位別戦略論」を参考にしました。
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この理論は、簡単にいうと、市場での企業の地位は4つに分けられますという理論です。内訳は、市場トップ、市場2番手、市場2番手だがただ追従しているだけ、小さな市場でトップの4つです。
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星野社長は、2番手から追従してもトップを追い抜けないと判断し、小さな市場で勝負することにしました。
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そのターゲットに選んだのがファミリーです。星野リゾートの独自調査によると、スキー経験者の約4分の1は現在スキーを楽しんでいる若者で、ほとんどのスキーリゾートはその若者を取り込んでいたそうです。残りは、かつてスキーを楽しんだが今はやっていない人で、その多くが結婚し子供が生まれ仕事が忙しくなった人でした。
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星野社長は、そこからファミリー戦略に転換し、家族サービスを充実させた結果ニッチな市場を抑えることができました。
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実は、本書を読んで驚いたことがあります。それは、地ビールの「よなよなエール」は星野社長の手によって造られたことです。よくコンビニなどに売っていて知っていたので、まさか星野リゾート関連だとは思いませんでした。
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よなよなエールは、1990年後半に地ビールブームで波に乗っていたのですが、1999年をピークに急速に売上が減少してしまいました。
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そんな時、現状を打開しようと他メーカーは製品のバリエーションを広げており、よなよなエールもバリエーションを広げようという声が上がりました。ここでも星野社長は、「受けるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則」という本を参考に、よなよなエール1本で勝負することを決めました。
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何が書かれていたかというと、短期的には製品ラインの拡張は効果があるが、長期的な効果はない」とありました。とにかくこと言葉を信じて突き進んだ結果、しっかりと業績に繋がっています。
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周りに流されず、本質を見極め軸を持つことが大切なのかもしれません。
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僕がスノーボードでよく訪れていた福島県の「アルツ磐梯」。ここも実は星野リゾートが2003年から運営をしています。
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当時、スキー場の昼食はまずいという印象があった。その中でもアルツ磐梯ではカレーが人気で、総注文数の約半数がカレーの注文だったようです。今回も星野社長は、「サービスの100%保証システム」という論文を参考にしました。システム導入の裏には、社員に責任感を持たせる狙いがありました。
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社員も返金を求められると困るので、どうしたら返金されないか自分の頭で考えて行動するようです。最初は返金の申し出が何件かありましたが、原因を調査すると「ご飯がベタついている」とのことで、すぐに炊飯器を最新の物に交換したりしました。おいしいカレーの研究も功を奏し、その後はほとんど返金がないそうです。
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星野社長は、まずくて当たり前だから保証の意味がある。美味しくなった時が100%保証システムが不要になる時だと言っています。最初は信用がない分、無料でもいいからどんどんやるとそのうち信用が貯まるというのは、個人的には間違っていないなと思いました。
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最後に、いろんな会社で参考になりそうな記載があったのでまとめてみます。
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星野リゾートは、当初人材が集まらず苦戦していました。辞職する人が多かったそうです。そんな時星野社長は、社員ととことん話し合いましたが、それでもほとんどが辞めていったそうです。そこで、発想を変えました。会社の現状を語るのではなく、会社の将来の話をする。そこから星野リゾートに興味を持つ人が増えたそうです。
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人は未来のことにワクワクしますし、未来を語る人には未来に共感する人が集まってきます。堀江貴文さんはじめ、キングコング西野亮廣さんやZOZO前澤友作さんも揃って未来を語ります。トップランナーの共通点かもしれません。
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星野社長の教科書通りの運営はとても参考になりました。しかし、単に参考にしただけでなく、現状を分析し、自分で考え、どの理論が利用できるかとことん追求した結果だと思います。経営者の方にはぜひ手にとっていただきたい1冊でした。

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