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2023大学ラグビー関東対抗戦:筑波対早稲田を簡単な数字で見てみた

みなさんこんにちは
少し時間が開きましたが、今回もやっていきましょう

今回は9/24に行われた関東大学対抗戦のうち、筑波大学対早稲田大学の試合についてレビューしていこうと思います

まずはメンバー表から

両チームともに主力が最後までプレーを続けていますね

次にスタッツです

それでは順番に見ていきましょう


筑波のアタック・ディフェンス

筑波のアタックシステム

筑波はかなり自由なアタックシステムを組んでいるように見えるアタックを繰り広げていました
嶋崎監督も某インタビューで選手に任せている旨をおっしゃっていましたが、筑波の今回のアタックからはその形がひしひしと伝わってきたような気がします

9シェイプがアタックの主となってはいますが、形や参加人数に一貫性がなく、シェイプのどの選手がもらうかもSHの白英選手の判断による部分が多かったと思うので、自分がもらうつもりで構えている選手が多い事もありSHからのパスで相手ディフェンスの意識を切ることはできていたような気がします

逆に10シェイプはほとんど用いられることはなく、SOの横に立っている選手がいても壁代わりに使われることが多かったですね
その代わりに中央エリアでのキャリーは12番の堀選手が担っていたように見え、BKに思いウェイトがかかっていたように思います

自由な発想でアタックラインも引いているため、ある程度の取り決めはあるかと思いますが、表裏を活かしたアタックというよりかはどんどんと順目に湧いてくるようなアタックをしているシーンが多かったです
かなり左右の比重が偏っているような形ですね
一度片方のサイドをアタックすると決めた後はそちら側に多くの選手が移動してきていました

アタックのテンポに関しては白英選手がかなり意図的に遅らせているシーンが多かったように見えます
もちろんテンポがいいシーンも多々見られているのですが、遅らせるときはとことん送らせていた形になります
これを落ち着いているととるか、周りの動きが遅いととるかは指導者によって異なってくるような気もしますね

キックは前半から後半にかけて倍増しており、後半はエリア取りのための蹴り合いに持ち込んでいる or 持ち込まれている印象です
楢本選手の利き足は左のようなので、その点ではエリア取りがうまくいく要素は兼ね備えていたかと思いますが、逆に右足のキッカーが見られず、楢本選手以外にキックでゲームをコントロールできる選手がいなかったようにも思います

また、かなり課題になってくるであろう要素がセットピースです
そこまでスクラムもラインアウトも数多く行われていたというわけでもないのですが、全体的にミスやプレッシャーを受けているセットピースが多く、うまくアタックにつなげることができていなかったり、相手にボールをわあつことになってしまっていたりと、コントロールができていなかった印象です

筑波のキャリー

FWの選手、特にタイトファイブの選手は相手のディフェンスに少し差し込まれていたように感じます
筑波の9シェイプのもらい方としてはあまり走り込んでくる形ではないので、そこからの加速も少なく相手のプレッシャーを直接受ける形になっています
テンポが出てくるとFWの選手が球出しを担ったりすることでハイテンポでFWの選手がキャリーする事もできているのですが、最終的な「パンチ」には欠けていたように思います

BKの選手も体格を鑑みると厳しい状況で戦っているかとは思いますが、12番の堀選手を始め多くの選手がボディコントロールがうまく、相手をいなしたりタックルをされた後も前に出ることができていたりと、相手としてはかなりやりづらいキャリアーになっていたのではないでしょうか
特に14番の飯岡選手はランナーとしても優れており、ランニングのコースどりやスピード、体の強さで相手を外すシーンを何度も見せていました

キャリーの回数を見ていくと100回のキャリーが生まれています
早稲田と比べると多い回数となっていることから、ポゼッション的には筑波が優っていたということができるかもしれません
筑波はラックでキープする時間も長く、よほどの長距離のランニングをしなければ一回のキャリーでそこまで長い時間をとることはないので、キャリー回数がそのまま大まかなポゼッションとして考えることができるかと思います

細かく見ていきましょう
9シェイプでのキャリーが30回と大きな割合を占めており、一方で10シェイプは前後半合わせても1回とほとんど見られていません
ポジショニング的にも10シェイプに谷山選手のような優れたキャリアーが立っているシーンも少なく、ここに関してはあまり重要視していないのかもしれません

シェイプ外のキャリーは前後半を合わせると39回となっており、内訳は中央エリアが22回、エッジエリアが17回となっています
ここだけ見るとそこまで差がないようにも見えますが、FWのポッドのキャリー回数を加えると半数以上が中央エリアでのキャリーとなっています
実際、ブラインドサイドと呼ばれるような狭いエリアを使ったチャンスメイクはほとんどなく、エッジでキャリーをするときは逆サイドからの長いパスワークからとなっており、エッジでラックができると中央方向に折り返していたりと、狭いエリアでの勝負は避けているようにも見えました

筑波のパス

パスワークを総じて見ると単純なパスワークが多く、一方で崩れてもつなぎきることが結果的には重要視されているように見えました
パス精度は全体を通じて見ると少し低めで、相手に届かず1バウンドしたり、相手の勢いを殺してしまうような位置にパスが入ってしまっていたりと、決して綺麗なパスワークで崩しているとは限らないというのが現状だと思います

ただ、特筆すべきはオフロードパスの多さで、直接手渡ししているものも含めると22回のオフロードパスが生まれています
上位チーム対下位チームのような片方が相手を圧倒するような試合展開の試合では多く見られる事もあるのですが、ここまで接戦となった試合でここまで多いというのはなかなか見ないかと思います
チーム全体としても味方のキャリーに対してまずはボールを受け取ろうとする意思が垣間見え、それがうまくいかなさそうであれば後ろからオーバーやハンマーのようなサポートをしたりと、一般的なチームとは優先順位の毛色異なっているようにも見えました

パス回数を見ていくと試合全体で142回のパスが生まれており、キャリー・パス比に換算すると2:3から5:7の間くらいとなっています
大まかに見ると一般的な数値となっていますね

細かく見ていきましょう
9シェイプへのパスは前後半で31回とキャリーと同様の結果となっており、BKへのボール供給は16回となっています
前後半でバックスライン上でのパスワークは差が見られており、前半は4回で後半は18回とかなり違いが生まれていました

今回の試合ではOtherに分類されるようなパスワークも多く、つながってはいても少し崩れているというか、側から見て綺麗なパスワークではないシーンも見られていました
とはいえ、結果的にトライにつながっているようなシーンもあり、何はなくても繋ぐといった意識が果たす役割を改めて考えることができたように思います

筑波のディフェンス

タックル成功率はイマイチと入ったところでしょうか
なんとか80%は切らない水準でキープできていますが、細かいタックルミスの積み重ねで大きなゲインにつながっているシーンも多く、相手にスコアを献上してしまっているような状況になっているのが現状です

ディフェンス自体は9シェイプから10シェイプのエリアにかけてプレッシャーをかけることができており、早稲田がそのエリアでファイトして生きているうちはうまく前に出ることができていたと思います
ただ、外まで回されると連携が崩れたりする事もあり、エッジエリアでのゲインが生まれることが多かったようにも見えました

また、ブレイクダウンには要所要所でディフェンシブなプレッシャーをかけていたように見えます
基本的にチャンスと思ったら2人以上の選手がブレイクダウンにチェイスし、球出しを遅らせたりプレッシャーをかけていたりしました
一方でそこで人数をかけたことによりディフェンスのフロントラインに割くことのできる人数が減っており、エッジでプレッシャーをかけた後の逆サイドのディフェンスには少しスペースが生まれていたかもしれません

ディフェンス面では21番の高橋選手のタックルの質が高かったですね
回数は少なかったですが、一人で確実に相手を倒すことができており、U20代表の試合でも見せた低く鋭いタックルを遺憾無く発揮していました

早稲田のアタック・ディフェンス

早稲田のアタックシステム

SOの野中選手と13番の伊藤選手が主となってゲームをコントロールしており、BKへの展開からアタックのリズムを作ろうとしているように感じます
ラックから9シェイプへのパスとラックからBKへのパスアウトはほぼ同数生まれており、かなりバランスの良いゲーム運びをしているといえます

大まかに見ると1−3−3−1と1−3−2−2の間を切り替えるような様相を見せており、ポッドに入った選手は細かいパスワークを使って相手とのコンタクトをずらしたり、1対1をうまく作り出すことによってキャリアーの負担を減らすことに成功しています
特に2番の佐藤選手はFWながらゲームのコントロールに長けており、9シェイプに入ったり10シェイプに入ったりとポジショニング的な判断・チョイスにも優れています

FWの選手は全体的にゲームの流れを読むのが上手いように見え、特にバックローに入っている永嶋選手、村田選手、松沼選手がそれぞれ自分が最も望まれるポジションに立つことができているような印象です
例えば、ターンオーバーが起こった後などのアンストラクチャーなシチュエーションで、中央エリアに引き寄せられることなくエッジに残って自分の役割を全うしている、と入った感じです

BKは意思決定や状況判断に優れた選手と個人のスキルで状況を打開することのできる選手が揃っており、アタックの方針的にも様々なバリエーションがバランスよく実行されていたように思います
SOを主に担当することのできる野中選手と伊藤選手を同時に起用することによってアタックのテンポが遅れる要因を低減することができていました

キックゲームに関してはうまくコントロールをすることができたように思いますが、裏を取られる事も多く、フィールディングという観点ではもう少し改善の余地はあるかもしれません
筑波の谷山選手のような大砲のようなロングキックを蹴ってくる選手のキックを想定していなかった可能性もありますけどね

ラックのテンポはかなり良かったと思います
多くのラックがオーバーの選手が2人で完結させることができており、プレッシャーを受けても2人の選手が完全に相手を止めることができていたように見えました
フォローの選手のコースやラックに入るし背も良い傾向にあったように感じます

早稲田のキャリー

一人一人がパスをもらった後に前に出ることができるようなキャリーをしていたように思います
FWにもBKにも優れたキャリアー・ランナーが揃っており、どのエリアでも相手にプレッシャーをかけることができたのが大きかったかもしれません

最も目立っていたところでいうと2番に入った佐藤選手でしょうか
最近のFWの中では少し小柄な印象はありますが体がとにかく強く、下に入られても足の動きでタックルを外すことができ、上に入られた場合は体の強さでタックルに入られた状態で前に出ることができていることから、キャリアーとして十二分な活躍をしていたように思います

また、BKでは15番の矢崎選手が類稀なるスキルを発揮していました
シンプルに前に出る速さも優れているのですが、それ以上に特筆すべきはそのボディコントロールです
ステップの切り方がうまく、いわゆるグースステップ気味に足を動かして相手のタックルポイントを外したり、ボールをもらうときにカットアウト気味に外に膨らみながらボールをもらうことで少し外にずらしながらランニングに入ることができていました

キャリーの回数を見ていきましょう
キャリー回数は全体で84回と筑波よりは少ない回数となっています
一方で最終的なアウトカムがトライとなったプレーも多いことから、効率が良かったように思えますね

細かく見ていくと9シェイプでのキャリーが25回、10シェイプでのキャリーが13回、シェイプ外でのキャリーが35回と、ポッドを用いたキャリーとそれ以外のキャリーがほぼ同数となっていることがわかります
野中選手や伊藤選手がうまくゲームコントロールをしていることから、FWのポッドに頼らないアタックをすることができているように見えました

シェイプ外のキャリーでは中央エリアで16回、エッジエリアで19回という回数を見せており、エリア的にもバランスの良いアタックをしているということができます
実際に試合を見ている中での印象でも、ブラインドサイドでのアタックも何度か行っている事もあり、エッジエリアでのキャリーが増えている印象です

早稲田のパス

パスワークは角度や距離も様々で、見ていてもかなりバリエーションのあるアタックをしていたように思います
特に9シェイプからのスイベルパスが上手くハマっているように見え、筑波サイドのディフェンスのギャップをうまくつくことができていたように感じました

細かく見ていくと10シェイプよりも外側でスイベルパスやバックドアへのパスワークは見られませんでしたが、FWからBKへの展開のところで深くパスをすることで、少し相手に詰める傾向のある筑波のFWの選手のディフェンスを寄せることができていて、そこでうまくギャップを作ることができていました

何度も出てきますが2番の佐藤選手がこの辺りのコントロールが非常にうまく、自身のキャリーに優れていることはすでに述べましたが、バックドアへのスイベルパスもかなり器用にこなしていた印象です
他の選手との明確な違いとしては「体は前を向いたまま深くパスをすることができる」という点であり、それによって相手のディフェンスが佐藤選手のキャリーを選択肢から切ることができていませんでした
また、ポッド内のFWの選手へのパスもほぼ同じフォームで実行されており、表裏のどちらにパスをするかが判別しづらいことからも相手に思考的なプレッシャーをかけることができていたと思います

パスを細かく見ていくと9シェイプへのパスが30回、ラックからBKへのパスアウトが28回と、バリエーション的にはかなりバランスが良い状態ですね
ここで9シェイプが多いということになると相手としては9シェイプへのプレッシャーを強めることができ、選択肢が増えることでディフェンスへの精神的なプレッシャーをかけることができます

バックスに回った後は10シェイプへのパスが13回、バックスライン上でのパスが37回と、基本的にはバックスライン上でパスが回っていることがわかります
12番の岡崎選手は球離れのいいCTBで、自身のキャリーもさることながら堅実にボールをパスで繋ぐ事もできる選手であり、エッジにいる矢崎選手や福島選手とSOに立つ野中選手、伊藤選手をうまく繋ぐことができていました

早稲田のディフェンス

タックル成功率は悪くなかったとは思いますが、タックルできずにビッグゲインを切られたシーンもあり、これだけで良し悪しを完全に判断するのは早計かもしれません
タックルの総数も多かったため、ミスタックルの多さの影が少し薄れる結果になっていますしね

ディフェンスとしては主に9シェイプにプレッシャーをかけているように見え、揃って前に出てかつペナルティもなく守り切ることができています
筑波としては何度アタックしても崩れないので、かなり厳しい戦いを強いられていたのではないかと想像します

一方キャリアーに対して2人の選手が寄ってしまうシチュエーションもあり、それによってオフロードをよく繋ぐ筑波の選手のパスワークに翻弄されているシーンも何度か見られました
筑波のように少し無茶とも言えるパスワークをしてくるようなチームとはあまり当たってこなかったような気もするので、その辺りの注意が不足していたのかもしれません

まとめ

「セットピースがわけた明暗」と題して記事は書いていますが、それくらい数値的にはそこまで差が見られなかった両チームでした
あえて言うとしたら早稲田の地力が優ったと言う事もできるかもしれません

今回は以上になります
それではまた!

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