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2023大学ラグビー菅平練習試合:帝京対早稲田を簡単な数字で見てみた

みなさんこんにちは
菅平チャレンジに失敗した今本です

今回は8/20に行われた菅平での練習試合のうち、帝京大学対早稲田大学の試合についてレビューしていきます

それではメンバー表から

帝京は固定メンバーに若干の組み替えがあり、早稲田はU20で不在だったメンバーを早速使っていますね
伊藤選手が13番に入るのもなかなか珍しいと思います

次にスタッツです

差があるところと差がないところが見られていますね

順番に見ていきましょう


帝京のアタック・ディフェンス

帝京のアタックシステム

今年の帝京の強みはFWの破壊的なランとそこから生み出されるモーメント、それに合わせてテンポの良いアタックにあると思います

昨シーズンはSOの高本選手(現東京サンゴリアス)が絶対的なゲームコントローラーとしてタクトを振っており、彼を中心にアタックが構成されていましたが、今シーズンは彼が抜けたことにより周りの選手の重要性が増したように感じています

一方でFWの選手の多くが昨年度も活躍した選手のため、選手の入れ替わりに伴う戦術的変容がそこまで必要ないのも大きいかもしれませんね
軸となる戦術に個々の選手の強さが枝葉となって全体が構成されているイメージです

アタックの主なイメージはFWのコリジョンを繰り返し、それによって生まれるギャップを細かいパスワークと思い切ったパスワークを組み合わせてアタックをする、といったものです
パスの精度も高く、前半こそ早稲田のプレッシャーを受けていましたが、選手の状況判断や意思決定に応じたプレーができていたように思います

帝京のキャリー

やはりどの選手も強烈であることに変わりはなかったですね
普段の試合ではバックローの選手のボールキャリーが目立っていましたが、今回の試合の中ではフロントローの選手もキャリアーとして目立ってきていたので、なかなか実力者というのは見極めるのが難しいものです

数値を見ていきましょう
前半についてはポゼッション自体が少し短めなこともあり18回のキャリー、後半は倍増とはいえ38回のキャリーと春大会の試合と比べると少なめの回数となっていました

そのため、全体的に見て傾向を語るのはなかなか難しいのですが、総合的にはかなりバランスが良いということができるのではないでしょうか
後半だけを見ていくと9シェイプでのキャリーが7回、10シェイプでのキャリーが6回、中央エリアでのポッド外キャリーが7回、エッジエリアでのキャリーが9回と、数値的にもバランスよくキャリーが分散していますね

突出してスピードの速い選手はいないですが、おそらく早稲田のディフェンスが中央エリアを中心にプレッシャーをかけることを狙っていた節があり、FWを中心に強さを生かしてすれ違うこととなったキャリーが比較的あった様に見えました

後半はラックからのパスアウトもテンポが良かったため、特に尹選手のビッグゲインは強烈な印象を残したと思います

帝京のパス

パスに関する帝京の良さを挙げるとするなれば、テンポとその多彩さにあると思います

もちろんパスワークが崩れることが全くないというわけでもなく、前半はプレッシャーをかけてくる早稲田のディフェンスにハマる場面もありました
しかし、後半にかけてその多彩さの本領を発揮しており、回数自体が2倍強になっているともにバリエーションも前半と比べて大きく増加しています

回数だけを見ると前後半ともにOtherが最も多いという結果にはなっていますが、Otherにカウントされたパスもパスミスというよりは柔軟なパスワークによってカテゴライズが難しくなっていただけであり、意図的かつ状況に応じたパスをすることができていたのではないでしょうか

ラックからのパスアウトに関しても、速さはありましたが焦っている様子は全く見られず、レシーバー側の準備も素早くできていたために結果としてテンポを出すことができていた様に思います

帝京のディフェンス

帝京にしては珍しくタックル成功率が低かったように見えましたね
Bump-Offされることこそほとんどなかったですが、ステッパータイプの選手に外されたりすることが少し目立っていた様な印象です
これに関しては周りとのコミュニケーションやノミネーションで改善することも可能のように思えるので時間はかからなそうです

一方今後要注意かつ注目していきたいのはタックルの高さですね
帝京の犯したペナルティの多くがハイタックルから宣告されたものであり、喫緊の課題になる部分であると思います
春大会はここまで取られていなかったのですが、その頃から高さは少し気になっていたところなので、対抗戦直前になってレフリングに悪い意味でハマってしまった感じでしょうか

元々1stタックラーはかなり低い高さをキープできていたので問題にはならなかったと思いますが、2ndタックラーに関しては受け止めるもしくは少し勢いをつけて高めにコンテストしていた印象なので、春の時点で修正できる点として挙げられていたことかと思います
対抗戦までの短い時間でどれくらい修正が効いてくるかが気になりますね

早稲田のアタック・ディフェンス

早稲田のアタックシステム

全体的に見ると1−3−2−2感が少し強めだったでしょうか
10シェイプに3人入る場合よりも2人が経っている場合の方が多かった様に思います

今回は普段SOに入ることが多い伊藤選手が13番にうつり、U20から帰ってきた野中選手が10番に入るというミッドフィールドの様相が見られました
これまでにない組み合わせだったのでちょっと驚きましたね
昨シーズンの試合様相では野中選手がSOに入っているときは伊藤選手がメンバー外のことも多く、同時にこの様なコンビネーションが組まれることはなかった様に思います

試合展開のイメージとしては10番の野中選手がゲームコントロールの主な舵取りを担い、体の強さとSOらしいコントロール力もある伊藤選手がゲームコントロールの一端を担いながら、両選手からのパスワークで帝京のディフェンスラインのギャップを狙ったアタックをしていた様に見えました

ただ、状況判断と意思決定のバランスを見ると若干状況に応じたプレーができていない場面の様に見えるシーンもあり、決め打ちの要素が少し多い割合を占めている様にも見えました

早稲田のキャリー

今回の試合ではランナーとして優れたスキル・タレントを有する矢崎選手がU20から戻ってきたこともあり、彼が持つだけでワクワクさせてもらいました

矢崎選手はスピードに優れたランナーですが、同時に細かいステップワークで細かく相手を外すスキルと相手に掴まれても前に出ることのできる強さも兼ね備えており、自身で場面場面を打開する事ができる凄さも持っています
キックも飛ぶので万能型ですね

キャリーは合計で94回と早稲田の試合展開としては平均的か少し多めの数値を示している様に思います
一方で帝京が合計で56回のキャリー数だったため、単純計算でポゼッションは早稲田の方が多く占めていたという事ができるでしょう

キャリーの内訳を見ていきましょう
前半は9シェイプを含めて中央エリアでのキャリーが少し多めだった様に見えますね
エッジに運び切る前にターンオーバーには至らないパスミスが起きていたり、中央でキャリーを選択する選手が多かった様に見受けられます

後半は様相は少し変化していて、バランスの良いキャリーの種類となっていました(それぞれ10回強)
Other Carryは6回と後半生まれたキャリーの中では少ない部類に入っているので、大まかにはシステマチックなキャリーができていたのではないでしょうか

とはいえ、キャリーそのものの強さを見て取れる範囲で考えていくと、帝京には一歩届いていない印象です
もちろん綺麗にタックルに入られるシーンが多かったり、帝京のタックルが高くて相手がペナルティを取られる場面というのも複数回見られていましたが、少なくともゲインを切るよりは押し込まれるシーンの方が多かった様に見えました

早稲田のパス

早稲田はおそらくSOを起点にしようとしている傾向にあると思うので、結果として一般的な割合に比べると10シェイプやバックスラインへの展開が多かったです

前後半合わせて178回のパスが生まれていますが、前半はバックスライン上でのパス回数が21回と最も多くなっています
後半はOtherを除くとラックからバックスへのパスアウトが19回と最も多いパスの種類となっていますが、全てのパス回数自体も後半は前半の3割増となっていることもあり、当然の結果という事ができますね
(前半は16回なので、これはこれで多いです)

ただ、パスの質を見ていくと、後半はOtherが26回と全体の1/4を占めており、前半も含めて「パスはつながったが意図しない相手がキャッチしている、もしくは地面につくなどのミスパス」が少し多かった様に思います
オフロードも全部で7回起きていますが、苦し紛れの様なパスもいくつかあり、ポジティブな結果にはつながっていませんでした

早稲田のディフェンス

最初の方は帝京のアタックラインに向かって良いプレッシャーをかけることができていましたね
帝京のアタックはFWのポッドで前方向へのモーメンタムを作り出し、テンポの良いアタックで全方向から崩しにかかってくるアタック傾向にあるので、早稲田の今回のディフェンススタイルは前半は少なくともハマっていたように思います

後半にかけてはDefenders Beatenを繰り返され、崩されることも増えてきましたが、選手の入れ替えや疲労による影響もあるかと思うので、戦術的方向性は間違っていないように感じています

タックルに関しては帝京のハイタックルが目立ってはいましたが、早稲田は少し飛び込み気味な様相もあったかと思うので、その点に関しては改善点になることもあるのではないかと
また、全体的に受け気味な様にも見えましたね

まとめ

早稲田としては悔しい敗戦になったと思います
セットピースも少し不安定な様子で、前半が良かっただけに後半の帝京の強さや層の厚さがより強調されたように思います

対抗戦での激突にはまだ時間があるので、対抗戦の前半戦で両校がどのようにチームを組み立てていくかが一つ楽しみですね

今回は以上になります
それではまた!

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