見出し画像

季節の変わり目に靴の話

だいぶ空気が秋めいてきた。久々に私は、サンダルではなくスニーカーを履いて出かけた。
夏以外はずっと愛用している、履き慣れたスニーカーだ。実は、同じ型で2代目。それなのに今日は、足の指が痛くなってしまった。

夏の間、ずっと解放され続けてた足が、いきなり包まれて閉じ込められたものだから、窮窟だったのだろう。

これと似たことが夏の初めにも起こる。
前年も履いていた慣れたサンダルなのに、その年に初めて履いた日は靴擦れを起こして、下手をすると皮がむけて流血することになる。

ずっと包まれて守られてきたのに急に野ざらしになって、足が、まいったなぁと言っている感じで。そして回数を繰り返すと、徐々にと靴擦れも皮むけも起こらなくなる。

靴。思えば、私は靴にはずっと苦労してきた。
靴のサイズ25cm、身長170cm。となると、靴選びにも男性とのバランスにも悩ましいものがあった。

まずはサイズの問題。
25cm。女性としては、かなり大きい方だ。今でこそ、25cm以上のサイズの靴も手に入りやすくなったが、私が10代20代の頃は、25cm以上の洒落たパンプスやサンダルを手に入れるのには、本当に苦労したものだった。
25cm以上のサイズを生産している国内ブランドは少なかったし、海外からの通販も今ほど、気楽にできなかった。
海外のハイブランドなら、国内でも手に入るし、大きなサイズも展開している。しかし、金額的に手が出なかった。

気に入ったデザインに出会うと、無理やりに、24.5cmサイズで乗り切ろうとして、ひどい目にあったことが何度かある。

ヨーロッパに旅行に行くのを楽しむようになってからは、行った先で、靴を何足か買ってかえるようになった。
ヨーロッパの靴屋さんでは、25cm以上の靴も普通に並んでいた。履けるサイズがある!デザインを選ぶことが出来る!私にとっては天国だった。

タイに住んでいたときも、25cmサイズはわりと手に入りやすかったと思う。
マーケットだと、大きなサイズは見かけないけれど(タイ人女性は、全体的に小柄な印象)、ショッピングモールなどでは、欧米人向けなのか、25cm 以上のサイズが豊富にそろっていた。
大きなサイズだけがセールにかかっていることがあったので、私にとっては、これまた天国だった。
やはり、タイ人はもちろん、中国、韓国、日本などアジア人が圧倒的に多いバンコクでは、比較的、小柄な人が多く、全体としては大きなサイズは売れ残る傾向にあったのだと想像する。

もうひとつの問題である身長。170cmの私が高いヒールの靴を履いてしまうと、そこらへんの男性の身長を超えてしまう。日本では180cm級の身長の方って少ないですよね。
学生の頃はそれを気にして、ローヒールのものにこだわっていた。サイズとローヒールとデザインと、とこだわると、それに見合う靴に出会うのが本当に大変で、何日も何日も靴屋さんを巡ったものだった。

社会人になって、洋服屋の店員として勤めるようになってからは、少しでも見栄えよく着こなしてその服を売っていく、ということが仕事になったので、ローヒールの呪縛からは解放された。
いかに足を長く、スタイルをよく見せるかに注力し、高いヒールの靴をよく履くようになった。私は、目の前の仕事に集中するタイプなのだ。

それでも、当時、お付き合いしている男性の中には私がヒール靴で現れると
「俺の前でヒール靴履かないで、俺が小さく見えるから」
と言ってくる人がいた。

私の身長は変えられないのに、自分の見栄えを優先する人。当時は、何か言い返すでもなく、素直に傷ついたのだった。

一方で夫は、初めてのデートのときに、「俺の身長、気になる?」と確認をしてきた。夫と私は同じくらいの身長だから、私がヒール靴を履くと彼の身長を超える。
もちろん、私は「気にならないよ」と答えた。

「俺の見栄え」よりも、「君から見て、俺がどう映っているか」を気にかける人もいるんだなあ、と新鮮に思ったのだった。私が高いヒールの靴を履こうとも何も言われたことはない。

夫は、私の靴選びにも根気よく付き合ってくれた。旅行先で、靴をまとめ買いしても何も言わないし、私のスーツケースに入りきらなくなった靴を、代わりに自分のスーツケース入れて運んでくれた。

今思えば、夫は、私の大足問題とノッポ問題に、もっとも協力的な人だったといえる。そして、もはや、大足もノッポも私の悩みの種ではなくなったのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?