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性的少数者や外国人に対する差別解消のための都条例案についてのパブリックコメントで意見を提出しました

条例の仮称は「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例」です。

パブリックコメントの期間は6月30日までで、以下のリンクから概要と意見提出手続きを参照できます(メール提出可です)。

条例案は、「多様な性の理解の推進(性的少数者(LGBT等)への差別解消)」と、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進(ヘイトスピーチ対策)」を2つの主な内容の柱としています。

条例の概要の一部を紹介します。

(いずれも上記リンク先のPDFファイルより)

これに対し、割とかっちりとした体で細かめの意見を提出しました。
私の意見の要旨を以下に記載します。ご参考になればと思います。

【「2 多様な性の理解の推進」について】
・(1)「目的」については、性自認と性的指向を区別した上で両方を差別解消の取り組みの対象とすることを謳っており望ましい
・現に性的少数者に対する不当な差別が様々な場面で存在していることを、何らかの文言で明記することで、一人一人の問題意識の喚起につなげてほしい

・(2)「都の責務」としては、小学校~中学校における差別撤廃教育にも力を入れることができれば、状況の改善に資する。
・学校には、自身の性自認・性的指向に悩む思春期の児童が存在する。また属性を理由としたいじめや中傷もある。
・早い段階から多様な性についての理解を促進することで、性的少数者の児童が孤立する事態を防ぐことにつながる。
・基本計画の内容についての例示列挙の形で「啓発・教育」といった文言を加えて欲しい。

・(3)「都民や事業者の責務」としては、性的少数者の方に対する差別はどのような形のものであれ許されない旨が、行為規範となるような規定を望む。
・性的少数者がその属性を理由とした差別を一つの原因として、自ら命を絶つといった痛ましい現状があることを踏まえるならば、ヘイトスピーチ対策と同等の態度でもって対峙すべき。
・条例案の策定や、条例制定後の政策の実行にあたっては、専門家や当事者の知見や声を十分に反映すべき。

【「3 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進」について】
・(1)「不当な差別的言動」の定義については、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」の定めによる形で基本的には問題ない。
・しかし、同法第2条の「適法に居住」との文言には問題が指摘されている。
・昨今、入国管理行政の難民(として扱われるべき外国人)に対する不適当な対応に批判が高まっている。そうした難民に対し、偏見に基づくヘイトスピーチが向けられることもある。
・こうした現状も踏まえ、より適切な定義規定の作成をすべき。
 
・(2)「都が保有する公の施設の利用制限」については、示されている2つの要件は適切であると考える

・(3)「拡散防止措置及び事案等の公表」について、特にインターネット上での拡散防止措置が重要。
・最近では、外国人という属性に対する差別的言動に合わせ、性差別や特定個人に対する虚偽の事実などを拡散させるような形で悪意ある情報発信・流通を行う者が散見される。
・インターネット上でのヘイトスピーチ対策を急務と捉え、実効性ある条例の制定と運用を望む。
・また、「事案等の公表」にあたっては、差別的言動に対して専ら批判的な立場から扱うよう徹底されるべき。「言葉は汚いが言っていることに理解もできる」というような形で差別的言動が擁護されることがしばしばあるが、行政がそうした無原則な態度に陥らないよう注意が必要。
・「ヘイトスピーチの実態を世に問い」との方針には懸念がある。
・差別的言動は基本的にマイノリティに対して行われるもの。世の中全体で見ればそうした少数者の声が小さくなるのは必然である。
・世の中に実態を問うというよりは、行政が率先して状況の改善をリードするという立場をとるべき。

・(4)「第三者機関(審査会)の設置」(5)「表現の自由等への配慮」については、示されているもので問題ない。

・ヘイトスピーチ対策についても、条例制定の前後にわたって継続的に専門家や被差別当事者の知見や声を取り入れて欲しい。

以上のようなことをメールで送りました。今回の都条例は①理念法的な側面と②行政の基本方針的な側面と③都民にとっての行為規範的側面の3つの色があると思います。どれも重要ではありますが、私としては③についてどこまで踏み込んだ規定が実現するかが注目ポイントです。外国人に対するヘイトスピーチについては既に違法化されていますが、性的少数者に対する差別的言動についても最低限の行為規範を打ち立てるべきだと考えています。

意見中、入管行政の問題についてはこちらも参考にしてください:
収容ってなんですか?弁護士に聞く収容問題

また、性的少数者の方が命を絶ってしまう例もあると述べたのは、たとえばこうした事例についてです:
一橋大学アウティング事件


マイノリティの方が差別にさらされることのない東京都を作っていけるよう、当事者意識をもってできることをやっていきます。


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