ニャンコ🐱UssayNakajima

作家・アーティスト パリ在住 パリ第8大学院映画科 イラスト・英仏翻訳 lit.lin…

ニャンコ🐱UssayNakajima

作家・アーティスト パリ在住 パリ第8大学院映画科 イラスト・英仏翻訳 lit.link/UssayNakajima

最近の記事

  • 固定された記事

【創作大賞2023】サングラスをかけたライオン 1/5

はじめに(あらすじ) 象といっしょにジャングルの中の一軒家に住んでいる小さな女の子、トザエモ。 ある日、家の扉に残されたふしぎな張り紙を見つける。 謎はいつしか、店の常連の語るライオンの話や、コナン・ドイルの古典的名著と絡みあい…。 ミステリの形をとった大人のための童話、もしくはフェーブル(寓話)。 そういうコンセプトのもとに書かれた物語です。 これを読んで何を感じるか、どんなメッセージを受け取るかはあなた次第。 空想の翼を広げ、自由に楽しんでいただけたら幸いです。

    • ポプラ小路のクリスマス

      クリスマスのために新しく書いた物語。パリ市内でたぶんいちばん好きな「ポプラ小路」を舞台にした二作目です。    *** リリとマックスは、小さな田舎町に住む恋人同士。 リリは真っ白ネコ、マックスはタキシード柄の白黒ネコです。 「結婚式にぴったりの柄だね!」とよく言われます。 リリは女優志望で、将来、パリで舞台に立つのが夢です。 夏になると、二人は自転車に乗って、近くの少し大きな町まで出掛けます。 広場でマルシェを見て歩き、通りや川辺を散歩して、カフェでゆっくりコーヒーを

      • 黒山羊の家の紡ぎ歌 9/8

        あとがき  この物語は、14才のときの構想です。これも、いつか書き上げたいなと、ずっと思っていたものです。 「サングラスをかけたライオン」の少し前、つまりほぼ同時期。なので、ビートルズの赤盤青盤でいえば、「サングラスをかけたライオン」の夏版に対して冬版、みたいな感じです。長さも3万字ほどで、ほぼ同じくらいですね。 新潟へスキーに行ったときの印象がおおもとになっています。「トンネルを抜けると雪国だった」みたいな世界。自分も、自分の「雪国」みたいなのを書いてみたいなと思いました

        • 黒山羊の家の紡ぎ歌 8/8

          第8章 大かがり火  …今日は大かがり火だ! 興奮したささやきが、あちらからこちらへと伝わっていった。 …今日は大かがり火だぞ! ささやきが繰り返されて、隅々まで広がっていった。 <黒山羊の家>では年に一度、春の訪れを祈って大かがり火が焚かれる。 家の外に要らなくなったものを積み上げて燃やし、ついでに家の中も掃除して、一年の汚れを落とすのだ。 その日は朝から、家じゅうがゴトゴト、バタバタ、慌ただしく活気に溢れた。 グレゴールもせっせと働き、壊れた家具を運び出し、天井のクモの

        • 固定された記事

        【創作大賞2023】サングラスをかけたライオン 1/5

          黒山羊の家の紡ぎ歌 7/8

          第7章 去りゆくものたち  次の朝、グレゴールが目を覚ますと、ジーホはいつものようにラジオの音楽をかけながら、何やらバタバタと忙しかった。 藤籠の中に敷いていた毛布を窓へ持っていって埃をはたき、きれいにたたんで棚へ収めている。 「何やってるんだい? 大掃除?」 「違うよ、帰るんだよ。休暇は終わり! 日常に戻るんだ」 不意を突かれて、グレゴールは思わずベッドの上で起き上がった。 「もしかして、夕べ狩りに行ったことで、気を悪くしたのかい」 「違うよ、そんなこと、僕にとっちゃ関係な

          黒山羊の家の紡ぎ歌 7/8

          黒山羊の家の紡ぎ歌 6/8

          第6章 一角獣狩り  大蛇が行ってしまってから、<黒山羊の家>には平和が戻ってきた。 グレゴールとジーホは夕食を終えるとたいてい部屋でのんびりした。暖炉の前に椅子を寄せてやかんを火にかけ、お茶がわくのを待って、休みなく形を変えて踊る火を眺めたり、ジーホの小型ラジオから流れる音楽に耳を傾けたりした。 ある晩のこと、グレゴールは狩りに行かないかと誘われた。 「夜の狩りって、すばらしいもんだぜ。知らないだろうが、ここらの山には珍しい生き物がいっぱいいるんだ」 ゲオルクは銃をぴかぴ

          黒山羊の家の紡ぎ歌 6/8

          黒山羊の家の紡ぎ歌 5/8

          第5章 大蛇が来る  その朝、グレゴールは犬たちの異様な吠え声で目を覚ました。 …おかしい。ふだんは吠えることなどめったにないのに。しかもあんなに引きつったような吠え方は。 「何だい…血が凍るようだね」 ジーホは寝床の中でごそごそやって顔をしかめ、毛布を耳の上まで引っぱり上げた。 と、扉がノックされ、ゲオルクが顔を出した。 「空の色を見たかい」 「えっ」 グレゴールが窓の外を見ると、彼方の稜線が山火事のような不穏な色に染まっている。朝焼けだろうか? それにしてもどんよりと雲に

          黒山羊の家の紡ぎ歌 5/8

          黒山羊の家の紡ぎ歌 4/8

          第4章 炎の乙女  ハーボッフェンの一件以来、グレゴールはすっかり毒気を抜かれてしまった。 もう主人を疑うことはなくなったが、さりとて大叔父の行方の手掛かりになるようなものはいっかな見つからない。途方に暮れたまま、日々が過ぎていた。 その朝、グレゴールは窓から外を眺めていて、何か小さなシルエットが向こうからやってくるのに目をとめた。ひょろっと細長い動物のシルエットだ。 そいつは肩に担いだ枝の先に、小さい荷物の包みを括りつけていた。岩陰からひょっこり現れ、雪の中をすばやく進ん

          黒山羊の家の紡ぎ歌 4/8

          黒山羊の家の紡ぎ歌 3/8

          第3章 世間ぎらいの巨人  一日二日して、だいぶ様子も分かってきた。 タイルストーブのある大部屋は<ストーブの間(ま)>と呼ばれ、住人たちの溜まり場になっているようだった。台所ともつながっていて、いつもスープ番がスープの大鍋をかき混ぜている。 <金の雄鶏亭>での話を聞いて、ゲオルクは大笑いした。彼らもめったに行く場所ではないらしい。 他方、この家の主人であるエドモンドは、ほとんどこの部屋に姿を見せることはなかった。 てっぺんにある彼の部屋では、ブリュイックが、月に一度箱詰めで

          黒山羊の家の紡ぎ歌 3/8

          黒山羊の家の紡ぎ歌 2/8 

          第2章 黒山羊の家の主人  翌朝目が覚めて、まず目に入ったのは、黒い天井にびっしりとはった蜘蛛の巣だった。 変てこな夢の続きかと、寝返り打ってもう一度眠りに逃げ込もうとした途端、埃っぽいベッドに猛烈なくしゃみが出た。 と、扉がノックされ、誰かがひょこっと顔を出した。 「やあ。朝飯を食いにいかないか」 きのう、オレンジ色のペンキを塗っていた隣人だった。 一階にはタイルストーブのついた大部屋があって、ちらほらと人が集まっていた。 「こんなところがあったのか」 グレゴールはもの珍

          黒山羊の家の紡ぎ歌 2/8 

          黒山羊の家の紡ぎ歌 1/8

          ときが来た 炎の乙女 身を起こせ 光を放て 愛する者のもとへ発て 第1章 旅人 おそろしく古ぼけた、真っ黒い小さな汽車が、山あいの雪原をふうふうあえぎながら登ってきた。 あたりは見わたす限り、白山羊山脈のけわしい峰々が、ただどこまでも連なるばかり。 空ははがねのような薄灰色。 聞こえるものといえば、ゴットン・シュッシュ…というそのひびきだけ。 汽車の中はほとんど空っぽだった。 こんな山里に用のあるものは多くない───あらかた、どこかしらで降りてしまっている。 いちばんしっ

          黒山羊の家の紡ぎ歌 1/8

          魔法使いナンジャモンジャと空飛ぶバイオリン 8/7

          あとがき この物語は、基本、12歳のときに書いたものです。 当時ときどきやっていた遊びで、なるべくぶっ飛んだ、変てこなタイトルをまず考えて、それからそれに沿って、筆のおもむくままに書いていきました。 なるべく何の教訓もない、バカバカしくて楽しいだけの話にしようと思いながら書きました。 友だちと二人で町のデパートに行ったところまでは実話。 楽しかったな。Kちゃん、元気にしてるかな。 小さな本のかたちで直接書いて、書き終えるとコピーを取らずにその友だちにあげてしまいました。なので

          魔法使いナンジャモンジャと空飛ぶバイオリン 8/7

          魔法使いナンジャモンジャと空飛ぶバイオリン 7/7

          7.ローマ市交響楽団  空はすっかり夕焼けだ。 空の半分は夢のようなピンク色に染まり、もう半分は青い夕闇に包まれながら、沈みゆく地上にはきらきらと街の灯りが灯り始めている。 「わお! 素敵!」 「綺麗だなぁ~! 空を飛ぶには、この時間がいちばんね!」 ユマとリオナはまたまた大はしゃぎ、スマホでパシャパシャ。 一心不乱に進路を取るシーラさん、我関せずの黒猫、死んだように目を閉じたままのブラウンさん、みんな一緒に超特急で、またたき出した星々のあいだを抜けてゆく。 「速く速く! 

          魔法使いナンジャモンジャと空飛ぶバイオリン 7/7

          魔法使いナンジャモンジャと空飛ぶバイオリン 6/7

          6.名匠のイニシャル それから彼らは仕方なく浜辺まで戻ってくると、…とりあえずめいめい、ふわりふわりと着地した。 「ふうう。…なんかこのへん、カフェとかないかな? ひと休みしたいな」 ぽつりと、ユマ。 「あたしもー」とリオナ。 「ありますよ。どうぞどうぞ」 との声に振り向くと、忽然と小さなカフェが現れた。いや、もとからそこにあったのだろうか。白黒のエプロンをつけた、大きなシロクマが立っている。 「ええっ?」 「いつも皆さまのそばに。時空移動式カフェ<シロクマ>です。シロクマア

          魔法使いナンジャモンジャと空飛ぶバイオリン 6/7

          魔法使いナンジャモンジャと空飛ぶバイオリン 5/7

          5.北ポルトガルの大魔法使い さいしょは多少揺れたソファも、やがて飛び方が安定し、まもなくみんなはストラスブールの街をあとに、眼下にはパッチワークの田園風景が広がった。 「うわーっ、いい眺め!」 「ちょっとインスタライブやろっかな」 さいしょの心配もどこやら、うきうきとテンション高いユマとリオナ。 二人とは反対に、高所恐怖症のブラウンさんは真っ青な顔で、息も絶え絶え。 「こんなの聞いていなかったぞ! こっちは、高層ビルでさえ苦手だというのに…しかもシートベルトもなしだなんて、

          魔法使いナンジャモンジャと空飛ぶバイオリン 5/7

          魔法使いナンジャモンジャと空飛ぶバイオリン 4/7

          4.シーラさんの魔法全書 3人はしょんぼり、手ぶらで<ナポリ>に帰ってきた。 ことの顛末を聞いて、シーラさんはいたく同情してくれた。 「それはひどいな! 同業者として恥ずかしいよ。この国の魔法使いがみんなそんなだと思わないでくれるとうれしいんだけど」 「はあ…せっかくここまで来たのになぁ」 ユマは力なく椅子に腰かけた。 「ボクに何かできることがあれば…」 シーラさんは一生懸命考えていたが、やがて 「ボクは魔法使いとしてあまり優秀な方じゃないから、君たちのバイオリンにかかった魔

          魔法使いナンジャモンジャと空飛ぶバイオリン 4/7