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【書評】サッカー戦術本「サッカーとは何か」の解説と所感 Vol.9

浦和レッズ分析担当コーチ・林舞輝さんのサッカーの本質を問う書籍「サッカーとは何か」

Vol.1-4では、戦術的ピリオダイゼーションの「戦術的」の部分を解説してきた

Vol.5では「ピリオダイゼーション」の部分の入り口である意味や方法を解説した

Vol.6ではそれらをサッカーに落とし込む為の考え方などにスポットをあてた

Vol.7ではそれらの考え方を踏まえて、モルフォサイクルの概念・筋肉の動かし方を解説してきた

Vol.8では月曜日・火曜日・水曜日のメニューを解説した

そして、Vol.9では残りの木曜日・金曜日・土曜日を解説していく

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木曜日:持続性の日 (試合後4日目・試合3日前)

試合から72時間以上が経ち、前の試合の疲労は完全に抜けている

そして、次の日まで48時間以上あり、ある程度の負荷でも回復が見込めると共に、戦術的な面では次の試合のことを頭に入れておかなければならくなる段階でもある

従って、この日のトレーニングの構成は、次の週末に戦う相手に対してのゲームプランの練習を行う

また、「試合」に限りなく近いトレーニングが可能な日であり、攻撃・守備・ポジティブトランジション・ネガティブトランジションのすべての局面をプレーし、それぞれのプレー主原則と準原則をおさらいできる構成にしていく

スケールもこの日が唯一、11対11、チーム対チームをメインに行えるのである

フィジカル面では、この日は「持久力」の日である

持久力のトレーニングということは、移動する距離を長くする必要がある

より広いスペースでレストを取らず長い時間練習を行い、より大人数で行う練習が好ましい

また、集中力や頭の回転の持続性を求められようにしなければならないのだ

注意しなければならないのは、この日のキーである「持続性」と、戦術的ピリオダイゼーションで最も重要視されている「インテンシティ」のバランスである

持続性を重要視し過ぎると、プレーのインテンシティが落ちてしまう為、チーム状況によっては、持続性よりもインテンシティを優先させることがあっても良い場合もある

その為、20分を2セットやるよりも10分を4セット行う方が良い場合もある

長い時間でダラダラやるよりも、しっかりと間のレストを取って1セットを短くした方が、フレッシュな状態でより高い集中力とインテンシティでトレーニングを行うことができる

「私のいう『持久力』とは、チームのコンセプトにおける持久力であり、私たちのゲームモデルの中で必要とされる個人個人またはチームのアクションを繰り返すための持久力だ。それを鍛えるための唯一の方法は、試合でプレーすることを練習でもプレーする、よりリアルな状況設定を広いスペースで行う、それだけだ」

                         ージョゼ・モウリーニョー

金曜日:速さの日(試合5日後、試合2日前)

試合の2日前である金曜日は、モルフォサイクルの中で「学習する」「習得する」という意味では、最後の日と言えるだろう

ただ、次の試合まで48時間になっているため、心理面でもフィジカル面でも次の試合への疲労を取るために、水曜日や木曜日に比べると全体的に負荷を一気に下げなければならない

プレーする頻度を下げ、複雑性の高いタスクを極力減らし、スケールも少人数でプレーできる個人またはグループの単位の練習を行う

練習は準々原則などの、より明快なものや相手のいない練習などが好ましい

そしてこの日は「速さ」を重視したメニューのアレンジを行う必要がある

筋収縮でパワーを出すスプリントとダッシュ、認知―予測―判断―実行のプロセスの速さをトレーニングの中で求めていく

休みを取りつつ、少ない人数でのコンビネーションや単発のアクションの中で「速く」プレーすることが求められる

この日注意しなければならないのは、スプリントなどを行う際に「流す」ことである

ここでダッシュの後に急ストップや方向転換を入れると、それはストレングスの要素になってしまい、身体に負荷がかかりすぎてしまう

その為、ダッシュの後に急停止するのではなく、そのまま走り抜けて流させるようなセッティングが求められる

土曜日:リカバリー&アクティベーションの日(試合6日後、試合1日前)

週の最後の日であり、試合前日であるこの日の目的は二つある

1つ目は、この日までのトレーニングによる疲労からの回復

2つ目は、試合に向けた準備・アクティベーション(スイッチを入れること)である

複雑な練習は限りなくなくし、一週間のモルフォサイクルで行った練習内容をおさらいしたり、既に習慣化しているもの(セットプレーやラインのアップダウン)をもう一度確認し、試合に向けてスイッチを入れていくのが良いだろう

筆者はこの日を「総復習の日」とか「総おさらいの日」と呼んでいる

シンプルな練習しかせず、過度なストレングスは避け、短い練習時間で終わらせるので持久力はまったくいらない

まとめ

長々とVol.1-Vol.9までに渡り、「戦術的ピリオダイゼーション」の解説をしてきた

「戦術的」「ピリオダイゼーション」の融合であるこのトレーニング理論は、とても包括的であり、実用的な理論である

それと同時に総合的な観点からの視点も入り、これができれば一番効率が良いのではないだろうか?と思ってしまう

本書「サッカーとは何か」に記されていることをまとめたものがこの記事であるので、さらにまとめることが難しい

大切なポイントはここまでに記してきたので、是非ご覧頂きたい

続いては2大トレーニング理論のもう一つである、「構造化トレーニング」を解説していく


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