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【書評】サッカー戦術本「サッカーとは何か」の解説と所感 Vol.2

浦和レッズ分析担当コーチ・林舞輝さんのサッカーの本質を問う書籍「サッカーとは何か」

本記事では、実際のトレーニングにどう落とし込むのかを解説していく

ゲームモデルとプレー原則の理解が進んだ上で、それを実際に選手に落とし込む為に、一体どのようにトレーニングやメニューを構築すれば良いのか

それを全面的にサポートするのが、方法論的原則である

本書では方法論的原則とコンセプトを「トレーニングの法則」とまとめて説明している

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特化の法則

全てのTRはサッカーに特化し、試合に特化し、ゲームモデルとプレー原則に特化しなければならない

砂浜で足腰を鍛えてもそれは砂浜における足腰の強さを獲得できるだけで、サッカーでの足腰の強さにはならない

100kgのバーベルを挙げれるようになるよりも、サッカーをプレーすることでサッカーに使う筋力を鍛えるべきだ

コーンドリブルをしてもコーンドリブルが上手くなるだけで、サッカーは上手くならない

リフティングを練習してもリフティングが上手くなるだけで、サッカーは上手くならない

なぜなら、サッカーという90分間のゲームにおいては、砂浜で走る場面も、バーベルを挙げなければならない状況も、コーンを抜いていくシーンも、ボールを1人で浮かせ続ける場面も、一度たりともないからだ

サッカーを上達させるには、なるべく「サッカー」というリアルな状況に近づけ「サッカー」をプレーしなければならないのだ

言わば、サッカーはサッカーを練習することでしか上手くならない

その為、トレーニングをサッカーの試合に近づける為には、判断の要素を含めなければならない

サッカーのプレーには常に判断を伴うからである

こうした意思決定や判断は、常にチームのゲームモデルに基づいていなければならない

従って、ゲームモデルとそれを支えるプレー原則に特化したトレーニングをしなければならない

「練習での10本のシュートより、試合での1本のシュートの方が自分の成長になる」

                         ーラウール・ゴンザレスー

傾向の法則

「傾向の法則」とは、ある特定のプレーやプレー原則を改善する為には、それに相応の頻度で練習を積まなければならず、試合で起こることまたは起きるべきものからトレーニングしていくべきという法則である

例えば、70%ボール保持することを想定しているようなポゼッション主体のゲームモデルのチームならば、トレーニングの70%はボールを持っている時のトレーニングに割くべきである

また、セットプレーにもこの法則は転用が可能で、最も頻度が高く起きるスローインやゴールキックにトレーニングの時間を割いた方が良い

このように、改善したいある特定のプレーや、より起きる可能性のあるプレーを、それ相応の頻度と密度で練習を作ることが、傾向の法則である

「ある特定のプレーの文脈をトレーニングするという意味であり、単一の行動をという意味ではない」

                          ービトール・フラーデー

複雑系の進行とバリエーションの法則

簡単に言うと、シーズン単位でも週単位でも日単位でも、より多くのバラエティーに富んだ刺激を選手に与えるべきであり、多様な練習でこそ選手はより多くのもの習得することができる

これはつまり、同じプレー原則を練習するのにも、異なるシチュエーションやスケールで行なったり、またフィジカル面でも筋肉の収縮の種類を毎日変えたものが良いと言うことである

全く同じオーガナイズの練習をいつも行うということは、無意味である

4局面の法則

サッカーは4局面に分かれている

攻撃、攻から守の切り替え、守備、守から攻の切り替えの4つだ

この4つの局面は試合のなかで何度も何度も回転する為、それぞれでプレー原則を定める必要がある

それと同時に、この4つの局面は相互作用的に関わっている為、練習メニューにはこれら4つの局面全てが組み込まれていることが必須である

例えば、とりかごで鬼はタッチしたら交代、というのはあまり勧められていない

このルールでは、攻撃と守備はあっても攻守の切り替えであるトランジションがないからだ

実はこの方法論的原則は全部で7つある

Vol.3では「カオス&フラクタルの法則」を1ページにわたり解説していく

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