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電車に乗り遅れそうになった夢《Dream Diary 16》


xxxx年05月08日(x)


 電車に乗り遅れそうになった。ホームに発車メロディが流れ、扉は既に閉まっている。電車はまさに動き出す直前だ。私と三・四名の女性が、乗り遅れまいと息せき切って電車に駆け寄った。すると扉が開き、私と何人かはギリギリセーフで乗車することが出来た。空席はないかと車内を見回していると、乗り遅れた女性が大の字になって窓の外に張り付いているのが見えた。両目をカッと見開いて、両手両脚と、やや横向きで歪んだ顔の頬っぺたと唇の約半分が、ペチャ~っと窓ガラスに吸い付いている。電車が動き出し、私はホッとしながら空いている席に座った。電車の運転手はそんな私達の様子を見てニヤニヤ笑っていた。私は窓ガラスの女性が落ちてしまわないかと気になったが、再び窓を見ると女性の姿は無く、代わりに巨大なタコの足が、幾つもの吸盤でベチャ~っと窓ガラスに張り付いていた。その上下で他の足の先っぽが粘液を垂らしながらズルリズルリ動いている。車掌がそれを見て「イカタコ類だ!」と叫ぶと、乗客の誰かが「頭足類が正しいのでは?」と言った。他の乗客からは「テンタクルだ!」「いやシーサーペントだ!」といった声も上がった。しかし運転手は、「あれはスルメみたいなもんですよ」と言ってニヤニヤ笑っている。すると「スルメのわけないじゃない」と言いながら、タコの足だった女性が車両の後部からヒトの二足歩行で入って来た。私は彼女が電車から落ちなくて良かったと思ったが、うなじや両掌に小さな吸盤がびっしり並んでいるのを見て、この人はイカゲソみたいなものかも知れないと思った。すると女性は私の方に向き直り、「イカゲソ? ちょっと惜しいかな?」と悪戯っぽい目で笑うと、「私はクラーケンなの」と言った。窓の外では深海魚が七色に発光しながら泳ぎ回っている。電車は深い海の底を走って行く。


Artwork by William Home Lizars
映画『タイタンの戦い』のクラーケン



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