見出し画像

私は 山本太郎 がわからない

タイトルはミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』の中の一曲、マグダラのマリアが歌う〈私はイエスがわからない〉のオマージュとさせてもらった。

..........

私が山本太郎氏の演説を真剣に聴き始めたのは、西日本豪雨災害以降のこと。地元が被災したときに、小型重機の配備を総理と刺し違える覚悟で国会で交渉する姿に胸打たれた。ジャーナリスト山岡俊介氏が記事にした、世に言う〈ケチって火炎瓶〉を出してきた。ツイキャス中継も参院選までは頻繁に聴いていた。御本人の生の演説も3回目の前で聴いている。

だが、都知事選立候補には閉口した。もちろん私は都民ではないので、外野がとやかく言うことではないが。

ロスジェネ議論は一旦横に置いて、私も役者 山本太郎と同じ時代を生きてきた。彼の出演する学園ドラマは『17才』憧れの世界だった。映画『バトル・ロワイアル』も映画館で観た。旅番組『ウルルン滞在記』で秘境の部族(裸族等)とのコミュニケーション能力はずば抜けていた。秘境といえば、山本太郎。彼の出演回は特別編として、再会編も作られたほど。

真っ直ぐな、人だった。
直球ストレートしか投げない不器用な人だと思っていた。

..........

比較してほしい。

▪️都知事選前

ポスター

ビラ/2019年4月版
〈表面〉

みんなに忖度!

〈裏面〉

反原発・脱原発・原発即ゼロ
被曝させない

彼が順風満帆だった役者生命を投げうち政治家を志すきっかけ信念とする軸だったはず。それすなわち人々の〈命〉を守ることだったはず。

▪️都知事選公選ハガキ

原発関連への言及が消えた。

...なぜ?

100歩譲って都知事選立候補するとしても、彼なら東京電力とケンカしてくれそうなものを、一貫して財源論...カネカネカネの演説だった...気がする。私の「なぜ?」に対して親切な彼の支持者からは、〈HPに政策として書いてあるから反原発の旗を降ろしたわけではないですよ〉というリプライをもらった。だが、みんなそんなにヒマじゃない。かなりヒマな部類の私でもそれに辿りつくには苦心するほどに扱いが小さくなったのだ。同時に〈国政マターと一緒にするな!〉というご意見をお持ちの方からもリプライ頂いた。

だが、待ってくれ。他にもひっかかることが。

東京都民にだけ再度10万円をばらまくのか?参議院議員として国政に身をおいて、再度衆議院選挙で国政に戻ろうとしようとする人が、首都東京にだけ利する政策にうしろめたさはないのだろうか。あれだけ全国をまわって街頭演説して、みんなの声を聞いたであろうに。苦しいのはむしろ地方だ。

選挙公示版ポスター1万4000枚貼り替え大作戦(離島含む) にしてもイメージ戦略とあった。躍動感のあるポスターにと...???


金のかかる選挙を嫌っていたはずの山本太郎氏らしくない。国政政党となったいま、政党助成金も得ているはずなのに。しがらみが嫌いなら政党助成金は辞退すれば宜しい。御世辞にも生活が楽勝とはいえない通りすがりの人々が1食削って山本太郎氏にカンパしてきたのを忘れたのか。少なくとも彼はそう演説していたはずだが。今回の都知事選でも億単位の額の個人献金が集まったが開票落選確定後の会見で 記者の質問に感情むきだしにこう言った。

「足りるわけないじゃないですか!使いきりましたよ!」

地方債15兆 の議論にも、学生時分に行政学を学んだ身としては、夕張市の財政破綻はどう説明するつもりかと瞬時に思った。そんな魔法の打ち出の小づちがあれば、地方交付税交付金に縛られることなく各自治体運営はできているはず。全国知事会の足並みとどう折り合いをつけるのか。さらに、その根拠たる災害指定についても一部の支持者は太郎氏の持論と勘違いして「さすが、太郎さん!」と絶賛していた。しかし、野党各党がすでに国会で安倍総理に対して詰め寄った結果、内閣法制局長官の答弁をもってして、災害にあたらずという非情な答えが返ってきている。

東京都知事として国にケンカしにいきますよ!!

戦うべきは、やはり国政の舞台ではないのか?

そもそも、MMT理論あたりから、彼に良いか悪いか知恵をつけるブレーンの存在がちらつくことが気になっていた。彼の役者としてのキャリア、頭の回転、演説の巧さをもってしても、どこか借りてきた言葉なせいか、私はどうにも腑に落ちなかった。もちろん、アメリカのアレキサンドリア・オカシオ・コルテス議員も同様に提唱していることは知っている。彼の勉強量も大変なものだとも理解できる。だが、変化球は彼の信念には不釣り合いだと私は勝手に思っている。「左翼は経済を勉強しろ」というお叱りは甘受する。彼の演説ではこの変遷の経緯をこう説明されていたと記憶している。

自分の信念を実現するためには、ゆる~く、まとまって多数派を形成しないといけない。無党派、選挙に行かない人々の票を掘り起こし、みんなが1番まとまりやすいテーマは消費税

そこから、財源論に傾倒していくことになった~らしい。

もはやシビレをきらして、ゆる~くまとまることも突っぱねるようになった。具体的に支持者に向けて他党の尻を叩けと言うようにもなった。

「山本太郎のことも疑ってください!」
「たかが山本太郎です、私が答えを持ち合わせていないときは、あなたが山本太郎に知恵を付けてやってください。」

彼は街頭演説のこの二つの決まり文句すらも言わなくなった。私は山本太郎氏がブレ始めたと1人の有権者として疑っている。

..........

やがて一部の熱狂的支持層は山本太郎氏のだす答えを唯一の解として、他の議論を受け付けなくなった。かつては、ツイキャスを荒らしにくるアンチでさえも「いらっしゃい」「こんにちは」と迎え入れるフレンドリーな空気があった。今のツイキャスに一言でも反論しようものなら蜂の巣をつついたような状態になる。「アンチ・アンチ・アンチは消えろ!」非常に排他的であることも懸念の1つ。Twitterにも非常に暴力的・威圧的な〈御返事〉が返ってくる。

..........

あまり言及するのは避けたいが、元日弁連会長・宇都宮けんじ弁護士に対して一部の支持者たちが口撃していた不遜な態度は他の場面にも見られるようだ。

一部の熱狂的な支持者の傾向を危惧している。〈贔屓の引き倒し〉という言葉があるように。

炎上した大西つねき氏の〈命の選別〉に言及したYouTubeも党代表・山本太郎氏が許すなら大丈夫と一部は問題をスルっと流してしまうのも、看過できない。逆にそれを庇うことが致命傷になるとも知らず。

〈命の選別〉の件は奥田牧師の仰有ることが、答えだと私は思っている。

..........

熱狂的支持層は紙の雑誌や本をあまり手にしないのかもしれない。YouTube等感覚に訴えかけるものに傾倒するがあまり、言葉がフワフワしすぎていて危うさを感じる。

めんどくさくとも、活字を追って考え、立ち止まり、咀嚼する作業をもって、己の考えは〈血となり肉となる〉のではなかろうかと、昭和のアナログ人間は思う。

選挙はフェスやパフォーマンス、人気投票ではない。無論、宗教でもない。

..........

明日何が起こるかわからない、先の見えない不安な時代に生きている。皆不安だ。人一倍心配性な私も疲労困憊するほどに不安だ。だが、声の大きそうな誰かに自分を重ね合わせて強くなった気になるようでは、この国の議論は一切深まらない。それこそ、思考停止だ。

山本太郎に忖度してどうする!一度冷静になろう、お互いに。一部の過激な支持層や取り巻きが政治家・山本太郎氏を腐らせるにはあまりに惜しい。

太郎を十字架にかけるにはあまりに悔しい。

〈街宣写真:Veronique〉

..........

私の心境を代弁してくれる一曲をお聴きください。

ミュージカル 『ジーザス・クライスト=スーパースター』より

〈スーパースター〉 歌・ダンス:劇団四季
※懐かし映像

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?