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『菊次郎とさき』(北野武、2001年、新潮社)を読んであるいは聴いて【少しネタバレあり】

ビートたけしさんが家族について書いたものだ。菊次郎がたけしさんのお父さんで、さきはお母さん。ドラマも観てなかったし、本もたまたま出会わずにきた。

最近、本はもっぱらオーディブルなので画面に紹介されてたこの本を軽くポチった。らば、えら号泣😭してしもうた。寝る前だったから(外でなくて)良かった。


エンタメで感動、涙するときって、じんわりウルウル型とあれよあれよボロボロ型がある。これはあとの方だ。

設定や内容まったく違うが、映画『ニュー・シネマ・パラダイス』に似てた。心の琴線のどっか2本くらいをクイっと掴まれてギューギュー引っ張り回される感じ。(どんなんっ笑)


【ところでオーディブルは基本一人での朗読(たまに二人もある)だから、じつはリスクの高い商売かも知れない。数行で、あ、この声この読み方は苦手リー即ポイっと手放すことがあり、活字なら読んでいたハズなのでもったいないしなんや申し訳ない。かと言って読み手を何パターンも準備しておくのは採算合わないだろしむずかしいね。でも活字を長く追えない者にとっては本当にありがたい仕組みだ。で、本著は最後まで自然に(私は)聴けた、うえに泣かされたよって、読み手さん上手かったのかな】

たけしさんのお母さんは、チャキチャキっと厳しいがいつも大地のように息子を包む(想う)。たけしさんが、いつか大学卒業できるようにと授業料を払い続けてくれてたり、たけしさんが溜めてた家賃も、知らないとこでお母さんが大家さんへ支払いしていたり。

だけど、たけしさんが売れるようになってきたらこんどは毎月のように小遣いを振り込めと言ってきたそうだ。

高齢にて病気入院中の母サキさんを最後に見舞ったとき、たけしさんはお姉さんから……おっとここまで。

最後は映画みたいなシーンで完全にもっていかれた。

そういえば、たけしさんのお母さんは昔テレビで拝見したことがある。1986年フライデー襲撃事件のときだ。

【当時たけしさんの不倫相手とされた若い女性への度を越した取材(女性が怪我をしてしまった)に対して、たけしさんと軍団がフライデー編集部へ乗り込み、そこで揉めて警察沙汰となった事件】


また寄り道するが

たけしさんは関係のあった女性を(何人も噂あったが)誠心誠意守るタイプなのかなと思う。この事件でもキッカケはそうだし。

2年前のたけし軍団解散騒動や離婚からの再婚騒動のときも、徹底してすべてにケジメをつけてるように見えた。糟糠の妻を捨てたと攻撃する記事もあったが、最終的に別れた奥さんはたけしさんをとことん一生恨んでやるとはなってないだろうな。私はそんな気がする。

(かなり勝手な推測及び想像が続きますが笑)

女性に対してのスタンスが火野正平さんや田中角栄さん(どんな振り幅っ笑)にも通ずるというか

田中角栄さんは、数々の逸話やお妾さんが産んだ娘さんが書いた本を読んだときも同じように感じた。角栄さんて方は、女性からいや何びとからも何ごとからも、逃げ隠れしない人柄だったんだろうなと。

そして火野正平さん。彼のプレイボーイぶりモテモテぶりは何度もワイドショーを賑わしてたが、この人も、関係あった女性たちからとことん恨まれる人ではなさそう。

要するに何かってぇと嘘八百逃げるズルい面が前面に出る人と、女性とちゃんと真正面から対峙する人。女たちへの最後の態度で両者はかなりの差が出てくる。これは男女逆でもいえると思う。

いかん、笑、遠くへ行き過ぎた寄り道から戻ろう。


フライデー事件後、マスコミ記者たちは、たけしさん母のところへ一斉に押しかけた。そして集まったマスコミを前にお母さんは

「あんなヤツは死刑にでもしてください!」

と、ピシャリ。まさかのひと言(一撃)

だから

おたくの息子こんな悪さしましたよ!どう思いますか!などと問い詰め、どうやって泣いて謝らせようか、嘆き悲しむ姿をたけしに見せつけてやろうかと息跨いてた記者たちは

ぐうの音も出なかったのだ。

じつの母親が、死刑にしてくれというのだ、それ以上赤の他人が何を言えようか。

あの場においてこれ以上ないほど完璧な言葉選びだった。私は衝撃を受けたと同時にあとから沸々と感動。深い愛情と覚悟で完璧に息子を守ったさきさん男前過ぎる。

そして何十年か経って今度は本著でまた、お母さんの行動とその愛に感動させられた。素敵だ。母として見習いたい弟子にして欲しいくらいだ笑。そんな感想をもった本でした。

終わり






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