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考えつつ、感じる 〜「感性でよむ西洋美術」を読んでみた(1)

先日地元の本屋さんで、NHK出版の「学びのきほん」シリーズの1冊を購入しました。

『感性でよむ西洋美術』
著者は、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授、伊藤亜紗先生。
ときどき雑誌や、たしかテレビでもお見かけしたかな、
理系専門の国立大学の、美学と現代アートが専門の先生です。

リベラルアーツについて少し書こうかと思ったのですが、
欧米諸国が意味するリベラルアーツと、日本でいわれるリベラルアーツは解釈が違っている、という記事にぶち当たってしまい、これはこれで一つの話題になりそう。
思わぬところで「リベラルアーツ」というものについて詳しく調べてみたくなりました。
とりあえず日本では、教養科目的な意味で使われているようです。

それはさておき。

このシリーズ、本の歴史について書かれたものを以前買いました。
テキストのような冊子なのに(番組テキストではない)、内容がぎゅっとまとまっていて良かったので、この美術史の本についても気になっていました。

『感性でよむ西洋美術』は1年前の発行ですが、
美術は好きなのに、美術「史」になるとなぜか学ぶのが面倒になってしまい、伊藤先生のことは存じ上げていたのに(面識はありません)、書店で手にとっては棚に戻していました。
でも先日、新聞で先生が書かれたある本についての書評を読み、すごく興味を惹かれる文章だったので、急きょ買ってみることに。

内容は帯のとおり入門書的なもので、すでに美術史に詳しい人には物足りないと思いますが、大学の授業のような形式で途中ワークショップなども載っています。

「大学の授業」というと難しそうに聞こえるけれど、専門的に書いてある本よりもずっと易しくシンプルに書かれているので、
やっと美術の流れを大づかみで把握したかも・・・中学の頃から絵画を見ているのに(遅すぎる・・・)。
これで興味を持てたら、もっと詳しく調べていけばよい感じです。

私の場合、美術史を最初から詳しく説明されると、飽きてくるんですね。
絵を見るのと、文章で解説を読むのとでは脳の使うところが違うので、
以前にも書きましたが、絵を見ながら解説を読むのが苦手です。

でもこの本のなかでは、口絵を見て比較しながら解説を読むので、面白く読むことができました。
ルネサンスとルネサンス以前とか
ルネサンス vs. バロックとか
ルネサンス vs. モダニズム などなど

「感性で絵を見る」ということについて、
たとえばシンボルなどの知識があって絵を見て読み解くほうが深く理解することができる、「日本では美術を好き嫌いで見ていいという誤解がある」といったようなことを、どこかで読みました。
(追記:どこで読んだのか思い出したので、また書きます)

それはもちろんそうで、私などは好き嫌いや何を感じるかで絵を見ている部分が多いけど、いろいろな象徴や時代的なことを知っていたほうが、より深く絵を理解できると思います。
でもこの本を読んでみたら「感性で絵を見る」ということについて、少し勘違いしていた部分もあるかもしれない、と思いました。

「感性でよむ」というと「センスをみがく」ことだと思うかもしれませんが、感性でよむとは必ずしも直感を鍛えることではありません。むしろ言葉をしっかり使うということです。一般に、言葉と感性は相性が悪いものだと思われています。しかし、だからこそ一緒に使うと、感じ方も深まるし、言葉も磨かれるのです。
 ブルース・リーの映画で有名になった「考えるな、感じろ」という言葉があります。今回は、「考えつつ、感じる」を大事にしてほしいと思います。

『感性でよむ西洋美術』(NHK出版)

これって、感覚的なことを言語化するということですよね。
だったら、美術に関してだけでなく、物事に対する目に見えない自分の感情や感覚を言語化してみると、自分についての理解が深まるということと同じかもしれない。

「考えつつ、感じる」ということも、実は絵を見ているときに、私も無意識にやっているかもしれません。

そしてこの本を読んで、美術の流れを見渡してみたら
やっぱり私はルネッサンスが好きなんだな、と感じたのですが
長くなるのでそれはまた次の投稿にしようと思います。
だから今日は(1)ってことで。


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