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愛されるコンテンツ、いやブランドとは、という話

月曜日のカナイです。

実は、以前自分が関わったとある広告案件で、いわゆる「炎上」が起きてしまい、広告を取り下げクライアントが謝罪するという事態が起きてしまいまいした。

詳細は控えるのですが、その企画もクライアントの要望に紆余曲折しながら
なんとか完成にこぎつけたのですが、最後の詰めの甘かった部分に批判が集まってしまいました。

他人事だと思っていたのですが…今後どうすれば「炎上」を防げるか。愛されるコンテンツとは何か、自分なりに考えてみたいと思います。

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「想い」に背くことは一切認めない


「消臭力」などのCMを手がけるエステーのクリエイティブディレクター、鹿毛康司さん。

著書でこんなエピソードを明かしています。

僕は「ネガティブな感情を引き起こすCMはつくらない」「愛情のないCMはつくらない」と自分に言い聞かせせて、そこだけは守ってきたつもりだった。

しかし、あるCMの撮影過程で、その演出に疑問を抱いていたようで…

実は、僕は、企画段階からどこかモヤモヤした違和感を覚えてきた。ただ、放映までのスケジュールが迫っていた。(中略)自分のなかにあった違和感に目をつぶってしまったのだ。

結果、編集でごまかしてOAしたのですが、一本のクレームの電話が入りました。当初は乗り切ろうとしたものの、

自分の都合ばかりを考え、「人の気持ち」を思いやる心のない最低な人間だ。

と気づかされ、そのCMは中止に。

それ以来、鹿毛さんはこう心がけています。

「想い」に背くことは一切認めない。最悪、CMづくりを中止する覚悟で望んでいる。
プランニングの段階でありとあらゆるクレームを想定する。(中略)「ここまではやってもよい」「これ以上はやってはならない」という一線を制作チームに示す。

(ちなみにこの本は、広告やビジネスにおいてとてもとても本質的なことが書かれているので、ぜひ読んでいただきたいです。)

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鹿毛さんはクライアントの人間であるからこそ、企業が消費者に伝えたい「想い」を一番よく知っている。でも私の経験上ですが、クライアントの中にはその「想い」がぼんやりしてたり、ブレていることもあるように感じます。いや、鹿毛さんのようにそれに「気付いている」場合もあります。

もちろん自分たちは最善を尽くして、なんとかその想いにこたえようと、カタチにしようと考えています。

中長期的に効果が出ないと意味がない

しかし、ここでそういった思考を邪魔してしまうのは、目先の利益を重視した「短期的効果」で考えてしまうビジネス習慣ではないでしょうか。

とにかくバズってほしいとか上司がやりたいから、と言うクライアントと、次の案件のために身や時間を削り、案件を落とさないことを考える受注側。

優先順位が
想い<目先の利益
となってしまい、想いを無視した結果が炎上につながる。


突然ですが、ここで海外に目を向けてみます。

先日、カンヌ広告祭を振り返るイベントに参加しました。

受賞した海外作品の多くは、単に商品を売るだけではなく、大きな社会問題があって、そこに企業がどう向き合うのか、そしてなぜ取り上げるのか。その具体的な想いを、抽象的かつ大胆なアイデアや表現した作品が多い傾向でした。

国際女性デーにちなみ、マクドナルドがMマークを反転させ、Women の「W」にしてしまった取り組み。全米で女性がオーナーの100店舗で実施され、リアル店舗だけでなくSNS などデジタル上でもこの上下反転ロゴが展開されると、同日アメリカで最も検索されたブランドになった。

企業として、中長期的な社会貢献が消費者の共感を生み、結果売り上げにつながる、という意識があるからこそ、このアイデアが実現し話題になったと考えます。こうしたキャンペーンは、日本だとまだまだ実施できていないと指摘されています。

さきほどのエステーも、2011年の東日本大震災後、通常の宣伝CMを取りやめ、「みんなの心に寄り添いたい」という想いだけで、このCMを作りました。

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「想い」を表す企業の「ビジョン」

鹿毛さんはCM作りで「やること」「やらないこと」をはっきりと決めていましたが、多くの企業には「ミッション」「ビジョン」「バリュー」といった、いわゆる行動指針が定められています。企業がビジネスを通じてどのような「想い」を相手に届けるか、クライアントやユーザーとの約束のようなものだと言えます。

例えば、クリエイティブやベンチャー系だと…

あなたの1日、人生、そして世界観を揺さぶるような体験を
(ONE MEDIA)

20世紀をぶち壊し、世の中をアップデートする
(NEWPEACE)

さらけだす
やりすぎる
まきこむ

(コルク)

Go Bold 大胆にやろう
All for One 全ては成功のために
Be Professional プロフェッショナルであれ

(メルカリ)

例えばONE MEDIAは、このビジョンがあるからこそ、すべてのコンテンツはこれに沿ったものが求められる。いやそうしないとユーザーを裏切ることになり、結果クオリティには妥協できなくなる。

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もっと深くならなければならない

「動画の未来」と聞かれ、SHOWROOMの前田裕二さんがこう答えていました。

この「深さ」ってなんだろう…と思いましたが、

SHOWROOMだと、
ファンとタレントとの「密度の濃い距離感」

クライアントワークだと、
商品の効果効能だけでなく、メーカーや業界全体の歴史や課題、ユーザーのリアルな評判や苦労など…もっといろんな想いに触れる必要があって、そこから導き出したアイデアやクリエイティブが「深さ」につながるのではないでしょうか。

カンヌのマクドナルドの作品も、単にロゴを反転させたわけではなく、女性スタッフが店舗運営の中心になりつつある環境があって、国際女性デーと結びついた。

消臭力のCMも、震災直後で国内で撮影できず、かつて津波から復興した街、リスボンを舞台に選んだということが伝わって、より感動や共感を生んだ。

深さもやはり「想い」なのではないか。


すぐには変えられないのかもしれないですけど、深さを与えられるために何ができるか、これから考えていきたいと思います。








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