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お茶の時間、かくあるべし

精密検査の結果を聞きに病院へ。

まだ追加の検査があったので検査室に入ったら、いきなりうら若き女性技師の前でほぼ裸になるという難関が待ち受けていた。
いわれるがまま服を脱いだが、動揺していたのか、ベッドに横になろうとして思いきり検査装置に頭をぶつけた。
二度も。

先々週来のすべての検査が終了し、診察室に入る。
結果は「特筆すべき異常は見あたらない」というもの。
やっぱりか、10年前もそうだった。

明らかにつらい症状は出るので、どこかに見えない不具合があるのは確かだが、今回の数多におよぶ検査では見つからなかった。
ただ、重要な部位に病変はなく、症状が出てもすぐ命に関わるような事態にはならなそうで、それだけはちょっと救いといえる。

自分の身体だ、丁寧につきあっていくしかない。

***

愛媛の小中学校で子供たちがお世話になった先生が、今年も新茶を贈ってくださった。
愛媛でお茶? と誰もがいうが、原生種は四国説もあるくらいだから、おいしさに間違いはない。

ご当地の最高峰、完全無農薬有機栽培の極上茶だ。
前職がこのお茶を使った村おこしだったので、パッケージだけで懐かしい。

宝瓶(ほうひん)にお茶の葉を入れる。
宝瓶とは把手のない急須のことで、玉露や高級煎茶のような低温で淹れるお茶に適している。

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極上茶だからといって茶葉をけちらないのがおいしく淹れる最大のコツ。

熱湯を人数分の湯呑みに入れる。
湯呑みの他にもう一つ、湯冷ましも用意して、湯呑みのお湯を矢印のように順繰りに移してお湯を冷ましていく。
今回の極上茶なら適温は40~50℃なので、6~7周ほどさせて湯温を下げる。

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ちなみに茶器一揃えは、学生時代の母が煎茶道の稽古で使ったもので、亡くなる1年ほど前に受け継いだ形見の品。

冷ましたお湯を静かに宝瓶に注ぎ入れる。
紅茶と違って静かに、そろりと注ぐ。

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蓋をして1分静かに待つ。
決して宝瓶を揺すってはならない。

均等の濃さになるよう、湯呑み①→②→③→②→①…と折り返しながら注ぐ。
おおよそ注げたら、あとはすべて絞りきる覚悟で雫を振り落としていく。
最後の一滴に旨みが凝縮されているからだ。
注ぎきったら、二煎目に備え、茶葉が蒸れないよう宝瓶の蓋をずらしておくのを忘れずに。

できあがり。

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えもいわれぬ旨み。
口の中がキュウッとなって舌の両脇に訴えかけてくる。
渋みや苦みは一切ない。
これぞ極上煎茶、たまらん!

二煎目以降は湯温を高くし、方瓶にお湯を入れたらすぐ湯呑みに注ぎきる。
味わいはどんどん渋みへ、苦みへと変化していく。
よいお茶は、正しく淹れれば五煎ほど楽しめる。

検査結果のモヤモヤはたちまちすーっと晴れた。
お茶の時間、かくあるべし。

今年も愛媛を思い、このお茶を楽しむ。
先生、ありがとうございます。

(2022/5/23記)

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