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もしやこの下には膨大な…?

大学近くの飲食店は、えらく安いか、えらく量の多い店がひしめく。
まるで原価計算を間違えてしまったかのようだ。

もちろん学生相手の商売だから、店の数は大学の規模や下宿率に比例する。
僕が通った大学は巨大な総合大学であり、大学周辺は全国から集まった学生の下宿街となっていたから、幸いにして格安飲食店もまた多かった。

京・百万遍のほど近く、東一条にそんな中華料理店があった。
一般的な外食の昼定食が800円程度だった当時で、食い切れない量のカレーが300円だったり、途中で気分悪くなる量の焼肉丼が400円だった。
えらく安く、かつ、えらく量が多かったのだ。

食い切れない量のカレーを、その店ではカレー丼と呼んだ。
直径30センチほどもある大きな丼鉢に、なみなみとルーが注がれている。
ふつう店ではまず見かけない、形ある野菜がゴロゴロ入っていて、下宿生は親元を思い出してはむせび泣いた。

でもライスが少ない。
森から出てきたばかりの控えめなコビトのように、ルーの上に数センチだけそのとんがり帽子を覗かせている…いや、そう見えるだけだ。
氷山の一角という言葉はこのカレーのためにあるのか、いや、ライスの一角という言葉を新たに用意したほうがよいのか。
神秘的な不透明のルーの下に膨大な量のライスが隠されているのである。
カレー“丼”と呼ぶのはこのためか。

初見で楽勝やんと思ったのに、開始早々5分で早くも行きづまる。
氷山を侮って沈没した、かの有名な客船になったかのようだ。

その店に対抗したのか、大学の本部キャンパスを挟んで正反対の位置にも恐ろしい量のカレーを出す店があった。
安くて多い、が必須の学生街にあって、カレー専門店を謳っていた。

この店は平皿なので、ルーの下に氷山を隠すという芸当はできない。
その代わりといってはなんだが、ライスがエベレスト。
氷壁のようにそそり立ったライスの裾野にルーの海が広がる。
さすがに専門店だけあって、価格は800円もした。
それでもライスが世界最高峰なら十分安いけど。

いざ食べはじめると、うまい…うまいけど、どこかで食べたことある味。
スパイスの調合の具合でたまたま知っている味に似たのかな…
キッチンに面するカウンターに座っていた僕はふと視線を落とした。

へんいちは見た!
ハウス・ジャワカレーの空き箱が大量に畳まれているのを!

せ、せんもんてーん!

昨日の夜は素麺になった。
朝の記事にもらったRoro 235さんのコメントに素麺の2文字を見た瞬間から決まっていたようなものだった。

ふふふ、初めて作るぶっかけに揖保乃糸を使う贅沢

おや? 中華鉢? もしやこの下には膨大な…?

(2023/9/15記)

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