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【3月のAudible読書メモ②】


『ドラママチ』角田光代

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私が欲しいものは、子ども、周りからの称賛、愛する男、自分にふさわしい華やかな仕事、やる気、人生を変えるドラマチックな何か。でも現実に私の目の前にあるのは、単調な生活に、どうしようもない男、中途半端な仕事、むずかしい性格の義母……。高円寺、荻窪、吉祥寺と、東京・中央線沿線の生活感あふれる「街」を舞台に、毎日ほんの少しの変化を「待ち」のぞむ女たちは、あなたにも、きっとどこか似ている。ほのかに射す明るさが心揺さぶる、8つの短篇。

Audible HPより

日常を忘れたいとか、新しいことにチャレンジする勇気を出すために背中を押してもらいたい、読後の爽やかさがほしい、そんな気持ちの時には読まないほうがいいかもしれない。

とてもリアルな女性の焦燥感や孤独感、悩み、不安が描かれていて、うっとなるかもしれない。
救いなのは、後半小さな幸せというか、今ある幸せを見つけることができる話があったことかなと思う。

『夜明けのはざま』町田そのこ

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地方都市の寂れた町にある、家族葬専門の葬儀社「芥子実庵」。仕事のやりがいと結婚の間で揺れ動く中、親友の自死の知らせを受けた葬祭ディレクター、元夫の恋人の葬儀を手伝うことになった花屋、世界で一番会いたくなかった男に再会した葬儀社の新人社員、夫との関係に悩む中、元恋人の訃報を受け取った主婦……。

Audible HPより

二章「わたしが愛したかった男」の中で語られた言葉が、とても心に沁みる内容だった。ここでは、離婚した理由として語られているのだが、結婚生活で大切なことを言っていて、はっとさせられる。一緒に生きていくために大切なことを今一度心に刻まなければ!と思わされた。

仕事のやりがいと結婚で悩む主人公が下した決断に最後はエールを送りたくなる物語だ。

「繋げる」というキーワードが私の中で静かにそしてゆっくりと「死」に対して抱いていた怖さを和らげていくのがわかった。

『ついでにジェントルメン』柚木麻子

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分かるし、刺さるし、救われる――自由になれる7つの物語。 編集者にダメ出しをされ続ける新人作家、女性専用車両に乗り込んでしまったびっくりするほど老けた四十五歳男性、男たちの意地悪にさらされないために美容整形をしようとする十九歳女性……などなど、なぜか微妙に社会と歯車の噛み合わない人々のもどかしさを、しなやかな筆致とユーモアで軽やかに飛び越えていく短編集。

Audible HPより

聴き終わって「あ~、面白かった!!」って思わず声を出して言いたくなるくらい面白かった。聴いている間も、きっとニタニタしていて不気味だったに違いない。タイトルに『ついでに』が付いているわけがなるほど~となる。

どの短編も面白いのだが、「渚ホテルで会いましょう」と「エルゴと不倫鮨」は、古い考えをアップデートできていないおじさまたちをバッサバッサと切っていくような痛快さがたまらない。

設定や年代が色々で突拍子もなかったりするのだが、ゲームや児童文学などの使い方がうまくて唸ってしまう。そして、1話の短編に出てくる菊池寛に始まり最後の7話の短編にも出てくる菊池寛。菊池寛が気になって仕方がない!

『身投げ救助業』菊池寛

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大正から昭和初期に小説家・劇作家として、また「文藝春秋」を創刊し雑誌発行人としても活躍した菊池寛の作品。京都にはなかなか自殺、特に身投げする川がないが、岡崎公園の先で身投げする者を見つけると竿を差しだして助ける老婆がいた。老婆は皆、竿を差しだすと助かろうとしがみつくため、人助けをしていると思っていたが、やがて自らの身の上に不幸が起きる。

Kindle版 HPより

Audibleにいくつか菊池寛の作品があることがわかり、まずは短めのこちらを聴いてみることに。

菊池寛初期の短編小説。京都大学時代の経験も交えて書かれた面白い小説です。と同時に、
エゴイズムに対する辛辣な皮肉も込められた作品でもあります。
京都の疎水の描写も興味深い作品です。

Audible HPより

読後、因果応報、本末転倒、四字熟語が頭に浮かぶ作品。お金が絡むとこうなるよねって話。
初めての菊池寛、面白かった!

『勝負事』菊池寛

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菊池寛の賭博好きが見事に凝縮された隠れた名品です。
友人の一人が語る、という形式をとっていますが、友人の口から語られる話は実に含むところが多いです。
友人の話が終わったあと、あなたならどういう言葉で友人に突っ込みを入れるか、ぜひ聴いてみたいです。

Audible HPより

気になるタイトルに引き寄せられ・・・こちらも聴いた。

豪家の主人だと言うので、どこの賭場でも「旦那、旦那」と上席に座らされたそうですから、つい面白くって、家も田畑も壺皿の中へ叩き捨ててしまったのでしょう。

『勝負事』菊池寛より引用

こんな場面が出てきて、昨今話題になっているアレを思い、少々苦しくなった。が、最後はなんとも和む終わり方だった。勝負事から離れられない方々がこんなふうに終われたならどんなにいいことかとちょっと泣けてきた。

『蜜柑』芥川龍之介

横須賀から電車に乗り合わせた少女が窓から弟らに蜜柑を投げる話。

Kindle版 HPより

菊池寛のとなりに出てきたこちらも気になり聴いてしまった。

主人公の心情の移り変わり、蒸気機関車の音、蒸気機関車の黒煙とススのにおい、蜜柑の色、蜜柑が投げられるときに描いたであろう放物線などが、鮮やかに映像として頭に浮かんできた。
感動の朝ドラを観たような、そんな読後感だった。


最後までお読みいただきありがとうございます。
また次のnoteでお会いしましょう。


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