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最近のKindle本オススメ3選

まだ読了していないものもありますが、おすすめしたいKindle本を3冊ほど紹介します。

本の読み方」平野啓一郎


本の読み方

私はいわゆる「ハウツー本」が嫌いでほとんど読みません。青色申告の方法とか簿記とか麻雀や将棋の定石とか手順書の類は実際に役立つので読みますが、よくある〇〇脳系や整理術、それこそ交渉術や魅力的な人間になる方法とか人に好かれる術とか、その手の本は一切読みません。人にもお勧めしません。その手の術は人生を通じて自分で体得するものだと思いますし、そもそも必ずしも人に好かれる必要もなければ、交渉が嫌いならしなければ良い、生き方は自由と思うからです。ですので、この本もジャンルで言えばハウツー本なので迷いましたが筆者が平野啓一郎さんだし、好きな小説を取り上げてくれているので買いました。大正解でした。

現代を代表する文豪、平野啓一郎さんのこの本はいわゆる「速読術」へのアンチテーゼとして出されたようですが、その手の本を読んでいない私でも長い小説はつい斜め読みしてしまうのでとても勉強になります。

「量」の読書から「質」の読書へ、網羅型の読書から、選択的な読書へ

速読家の知識は、単なる脂肪である。

基本的には、作品の一語一句のレヴェルから作品全体に至るまで、「こう読んでもらいたい」という「作者の意図」は必ずある。

一冊の本をじっくりと時間をかけて読めば、実は、一〇冊分、二〇冊分の本を読んだのと同じ手応えが得られる。
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平野 啓一郎. 本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP文芸文庫) (pp.60-61). 株式会社PHP研究所. Kindle 版.

前半は「本をゆっくり読む(スローリーディング)」ことの意義を語っています。平野啓一郎さんの本は芥川賞受賞時に「日蝕」を読みましたが当時は極めて硬派な文章でスラスラ読める類のものではなかったため、2作目の「一月物語」で挫折。到底「葬送」には手が届かなかったわけですが、膨大な読書量と知識で知られる作家でしたので、その彼が自分は本を読むのが遅い、ときには一行の意味を考えて一晩読むのを止めるなどと語るのですから説得力があります。

後半では、実際の名作を例にスローリーディングの極意について説明してくれています。「小説の読み方に「正解」はない。」と自ら語るようにあくまで平野啓一郎さんの読み方であり、彼の解釈ですが勉強になります。まだ「こころ」「高瀬舟」「橋」までしか読んでいないし、大好きな三島由紀夫(平野啓一郎は三島由紀夫論の権威)の「金閣寺」の項以降はこれから読むのでなんとも言えませんが、「こころ」ひとつとっても自分の読み方の浅さに気が付き、もう一度読まなければ!という気になります。
ちなみに私は「蛇にピアス」「葬送」、フーコーは未読です。

平野啓一郎は、「マチネ」「本心」「ある男」あたりをちらっと立ち読みしましたが映画化されるだけあって文章が読みやすくなっていますね。初期はロマン主義とか今は分人主義とか訳が分からない状況になっておりますが(笑)、個人的には「ある男」に興味があるので近く読みたいと思います。そしていつか「葬送」を読みたいと思っております。


生きてるってどういうこと


生きてるってどういうこと

先日発売された新刊です。谷川俊太郎の詩を散りばめた絵本。私はKindle版を買いましたが、単行本のほうが良かったかなあとちょっと後悔。詩はすでに詩集に収録済みのものばかりですが、美しい挿絵とペアなので谷川俊太郎さんの詩が好きな人、あるいは詩と絵画という組み合わせが好きな人にはぜひおすすめしたい本です。
私は中島みゆきフェチで、その中島みゆきが敬愛する詩人が谷川さんなので、それで彼の詩を読むようになりました。朔太郎やボードレールなどもこうやって挿絵を入れた豪華版があるといいのだけれど。。


鏡の中のアメリカ

近代日本社会思想家である先崎さんの比較的新しい著書です。まだまえがきしか読んでいません。
ずいぶん前にBSプライムニュースに出演されたときの冷静沈着な語り口と、右にも左にもぶれずに俯瞰的に今の日本社会と日本人を分析している論調から興味を抱き、「違和感の正体」という新書を読みました。同書の内容的としては2015,6年頃の政治情勢を踏まえて正義を振りかざして騒ぎ立てる人たちの価値観、物差しがどこにあるのかを考えるというものでしたが、この「鏡の中のアメリカ」では、


近代日本を知ることは、西洋の制度・思想との対決と葛藤の歴史を学ぶことだし、とりわけ、アメリカを常に意識することである。

先崎彰容. 鏡の中のアメリカ――分断社会に映る日本の自画像 (p.6). 株式会社亜紀書房. Kindle 版.

とし、アメリカを通して近代日本を考察する内容だと思われます。価値観の物差しを失っている今の日本を問う姿勢は本書も同じでないでしょうか。まだ読んでないからわかりませんが、とにかく面白そうです。

以上、Kindleお勧め本3冊でした。

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