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幸せの体系

まず先に体系から始めなくてはならない。
上と下、下は飢え、上は舌を肥やす。
王国を作る際、王がいて民がいる。本来、王が統治し民は生産する。脳と肉体の関係だ。
脳ばっかり大きくても、体ばかり大きくても、うまくいかない。ちょうどいいバランス、脳が大きくなるにつれて、肉体が成長し、その逆も然り。常に互いが成長し続ける関係が理想だ。
ただ、実際のところ、国家と民は一つの体ではない、お互いいつだって逃げ出すことができるし、民は反旗を翻すことだってできる。肉体と比喩した国民にも個々に脳を持ち考える別の存在だからだ。
思考統制は必須である。簡単に言えば、洗脳教育のようなことで、新たな道徳観を植え付けてしまえば、王の不利になるようなことはしない都合のいい国民を生み出せる。
今の時代それは可能ではない。どうしたって不可能だ。ありとあらゆる情報網があり、日常を慎ましく過ごしながらの個の飛翔が可能になっているのだから、狭い世界に閉じ込めるユートピア的統治はディストピアと称され批判の的だ。完全な思考統制は不可能でありつつも、遍く生き物には指示待ち願望、鎖につながれていたいという欲がある。完全な自由は頭で求めていても、実際はそうではない。生き物は永遠を求める性質上、絶対に現状に満足しないという業を持っている。金持ちになりたいと願っているやつも、いざ金を持つともっと持ちたいだの、やっぱり金は要らないだの、本当に欲しかったのは金じゃなくてOOだの、いい加減学べ!と言いたい気持ちはナンセンスで、これが地球の生き物に生まれた以上、変わらない、悲しいかな!『人間には生まれつき指が五本しかない!手や足が、二本しかない!脳が、心臓に至っては一個しかない!もっとあれば便利なのに!』それと同じように、生まれ持ってしまったものは仕方がない。
 だから、あなたが幸福になりたい。絶対的な幸福を求めるなら、それは不可能な話で、満足と不満は表裏一体。満たされてすぐに渇きを覚える。
 羊飼いになりなさい。
あなたが王である国を作り、満たされるには、あなただけが人間で、民は羊である必要がある。人間が人間をどうこうすることはできません。1+1が2になるなんて妄想はもう忘れしまいなさい。1が1を支配することはできません。2が1を支配するのです。……云々。


「いやいや、もちろん羊飼いというのは比喩です。実際は私の開発したアンドロイド、のようなものをあなたに付けます。見た目はあなたの好きなように決めていただいて構いません。
何体でもお付けしますよ、あなたは人間を支配している気になる。しかもその人間は決してあなたに反抗しない。いいと思いますけどね。
思っていたこととなんか違う?それはあなたが対象をアンドロイドだと知っているからです。ではこの会話でのあなたの記憶を消しておきます。ある日突然、従順な子がやってくる、あなたはその子が何でも言うことを聞くことをどこかで確信している、みたいな。
納得頂けてないように見えますが、私には絶対の自信があります。
数日後、あなたは絶対に幸せになる。そしてその晩にでも言うでしょう。「もうこれ以上はいらない、今俺を殺してくれ」とね。

その魂をいただきます。」

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