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好きなものから食べなさい


母宅へ行った帰りに必ず寄る元気なおじさんがいるお魚屋さん。まぐろの赤身が安くて当たりが多い。夫が好きなタコもあったので北海道産を購入。
おじさんいわく「この時期は正月用に冷凍しちゃうから、タコはいいのがあんまりでないんだよ」
ラッキー😆💕
退院後初のお刺身はマグロの赤身とタコ🐙💓

たまたまテレビでみたオリーブオイル特集。
安いお刺身も、オリーブオイルを付けて食べるとワンランクアップするとのこと。
なんてタイムリー!とさっそくやってみる。
オリーブオイルの海の中へ醤油漬けしたシソの実を投入した小皿を用意。
まずはいつものようにワサビを乗せたマグロのお刺身にお醤油を付けて、食べたい虫がウズウズしているお口の中へ。
うーん、これこれ。これよこれと、食べたい虫がお口の中で騒ぐ。追いかけるように白いご飯をパクリ。うーん、たまらない。食べたい虫もご満悦。
夫はご飯に乗せた赤身を海苔で巻いてパクリ。
うんうんと美味しい顔。その笑顔も調味料。

そしていよいよ。
ワサビを乗せたまぐろの赤身をオリーブオイルに浸しててパクリ。
あーれー❗なんということでしょう。お口の中は幸せの海。ワサビ醤油でご満悦の食べたい虫もビックリ仰天❗マグロの赤身が中トロに変身❗醤油漬けのシソの実がいい働きをしている。
でもこれはご飯のおかずというよりワインかな🍷と思ったところへ夫が「ワインだな」。ふふ💕
残りのタコはカルパッチョ風のサラダにして、今夜ワインと一緒にいただきましょう😋

食べ物にも飲み物にも制約がある身だけれど、100%の我慢はしないことにしている。
さんざん痛い思いも辛い思いもしてきて満身創痍。ほんの少し悪魔の囁きに耳を傾けてもバチは当たらないだろうと、好きな日本酒とワインを時々口にする。
病気とうまく付き合う術が、10年の間に自然と身に付いている。
ほどほどなら大丈夫。そう、ほどほどに自分を甘やかす。
我慢我慢はかえって体に悪い。

令和元年にさきがけ文学賞の推奨を受賞した「花冷え」という小説の中に、こんなシーンがある。
ギクシャクした空気の中で継母と娘がお寿司を食べている。好きなものを最後に食べようととっておく娘に継母が言う。
「ねえ、好きなものから食べなさい。マグロ食べてる間に心臓とまっちゃうかもしれないんだから」
そう。誰だって一秒先はわからない。意地悪に聞こえるこのセリフも、じつは愛なのだ。

好きなものを最初にたべる派と最後に食べる派。私は断然最初に食べる派だ。
と、書いていてふと思い出す。
夫が時々、お寿司をお土産に持って帰ってきてくれる。私の好きなゲソの握りが必ず2貫入っている。最初と最後に食べるようにとの計らいだ。
そんな優しい夫が酔って帰った日のこと。居眠りしている夫の横で私はお土産のお寿司に舌鼓を打っていた。そして最後にゲソの握りを食べようとしたその時、パチリと目を開けた夫がいきなりゲソの握りに手を伸ばして自分の口にほうり込んだのだ。
一瞬、何が起きたのかわからなかった。夫は寝ぼけ眼で口をモグモグ。トンビに油揚げを拐われた。そんな気分で夫をみていると、え?と言う顔。
「俺、なに食べた?」
「ゲソ」
「えぇ~!」
無意識だからしょうがない。
最初に一貫食べてるし。と、ひたすら自分に言い聞かせていた。
そう、心臓がとまらなくたって、誰かに奪われてしまうかもしれないのだ。
お寿司を見るたびに夫の「えぇ~!」を思い出す。
げに恐ろしきは食べ物の恨み。
ねえ皆さん。
好きなものはやっぱり最初に食べましょう😆


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