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よちよち歩きの精神科医が障害者支援にチャレンジして躓いた話。

お久しぶりです。
色々と問題児なよちよち歩きのお医者さん4年生になってしまった大地くんです。

いやー、人生何があるかわからないもんで。
紆余曲折あって今は大好きな湘南を離れて地方で精神科医をしています。
美容皮膚科から精神科を主科として転科して
色々と見えてきたことがあったのでここに自戒も含めて記そうと思います。

カフェ開設をした理由の1つが精神障害者支援だった

何を隠そう、知っている人は知ってる
僕は初期研修の途中、研修医なんて辞めてカフェ立ち上げるぜ!
みたいなことを言い出して
本当にやってしまったかなりの変態&問題児なわけですが。

カフェ立ち上げの大きな目的に
「精神疾患への偏見緩和」「メンタルヘルスの普及」「精神障害者支援」
という真面目な理由もありました。

今回は、そこにスポットライトを当てて
障害者支援の難しさに言及したいと思います。

日本はメンタルヘルス後進国

まずはじめに。
日本ははっきり言って、メンタルヘルス後進国です。

最近は精神科や心療内科への受診がしやすくなってはいます。
が、まだまだ精神科・心療内科への偏見や風当たりが強く
国民の精神疾患に対しての知識も少ない。

精神科・精神疾患への偏見はまだまだでっかい

皆さんは精神科とか精神疾患というとどんなイメージを浮かべますか?
少し一歩引いてしまうところはないですかね?

「下手に関わったらいけない」「近づいてはいけない」
「おかしい人たち」「精神疾患は甘え」
等々…
ネガティブなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。

そういったイメージを持つのも無理はないです。
普段生活しているだけでは、精神疾患を知る機会はほぼ無いからです。
精神科以外のお医者さんたちの中でも、精神科に通う患者さんのことを「プシコプシコ」と揶揄して言う人もいるくらいですから。

僕自身もそうでした。
大学生の時過労で本当の「うつ」というものを知るまでは。
「精神疾患なんて心が弱くて甘えた奴がなるもの。全ては根性で解決!」
とかいうかなり厄介な思想を持っていたんです(笑)

※このエピソードの詳細は、本旨とズレるのでまたの機会に。

このままじゃいかんやろ

そんなこんなで
人より色々大変なこと経験したし〜と調子に乗っていた僕は
こんな偏見があっちゃいかんやろと思い、思い立ったが吉日!と
カフェのコンセプトに精神疾患を持つ人の支援を盛り込みます。

僕が一時期
鬼のように発信してたサステナビリティ=持続可能性と相性抜群!
と、脇目も振らず突き進んでいくことになります。

メンタルヘルスが向上して精神疾患への偏見が無くなれ
日本人はもっと心だけじゃなく身体も元気になるはずだし
心の悩みで精神科に通院してる人はたくさんいるんだよー
ってことをラフに伝えられる場所作りを目標にしていたわけです。

んじゃ、実際お前は何をしたんだ?

僕がじっさいにカフェでやろうとしたことは大きく分けて2つです。

・ドリンクを精神障害を持つ人
(後に精神障害者に限らず誰にでも渡せるようになるが)
に寄付できるチケットの開発=UI Ticket

・そのチケットを使う人が増えることで
身近に悩んでいる人がいっぱいいるんだと
健康な人にも知ってもらうことでメンタルヘルスへの関心を深める場所作り

実際に上2つは行動に移しました。
お客さん同士で繋がりができた部分もあり
これ自体は間違いではなかったとは思います。
お客さんが関心を持ってくれて
そして応援してくれる活動の1つでもありました。

だがしかしお前は甘かった 
精神障害を持つ人 ≠  精神科に通院している人

僕の甘すぎたところ。精神障害を持つ人と精神科に通院している人はいっしょくたにしてはいけないということをわかっていたはずなのに忘れていたこと。

精神医療に従事している人ならわかります。
なりたくてなったわけではないのに
自分のやりたいことや仕事も諦めなくてはならず
学校に行けなくなってしまったり仕事ができなくなってしまったり
その状態が何十年と続いて生活をしている人がいること。

メンタルヘルスを身近に感じてもらうことと
精神障害を持つ人の支援は全くの別物なんです。

一歩間違えれば
スタッフも患者さんも傷つけていたかもしれない

今まで精神障害に長く悩んでいる患者さんたちは、非常に繊細です。
僕らが起こす行動や発する言葉に非常に敏感に
僕らが思いがけないほどに反応をします。

それは、それは時に喜びであり、時に怒りであり、時に悲しみであり。
僕らの行動や言葉が彼らにどんな受け取られ方をするかは、本当に未知数です。

精神科医や精神科の看護師さん、公認心理師(臨床心理士)さん、精神保健福祉士等々、精神科に精通している職業の人々なら
彼らが心を乱してしまった時の対応をある程度心得ていますが
それでも苦渋することはたくさんあります。

でも、全く精神科の患者さんたちに触れたことのないスタッフが対応できるか
というと。。。
むしろ危険な状況に陥る可能性が高い。
そして、何より、患者さんたちを傷付けてしまっていたかもしれない。

これは
僕らの行動や言葉が彼らにとって怒りや悲しみとなった場合はもちろん
喜びであったとしても、
です。
(専門用語では陽性転移とか陰性転移とか呼ばれる事象なのです
が、これもまた別の機会に説明できたらと思います。)

精神医療を通じた社会的な支援は私的団体には不可能

この取り組みは精神疾患を患う方々への支援として中途半端すぎました。

彼らの中には社会的な財源を投入して
継続的な支援をしなくてはいけない人がいる。

そんな中障害者支援を名打って
適切な場所に繋げて支援する力が
NPOでもなんでもない個人企業・飲食店で十分にあるはずがないのです。

精神医療はもっと慎重に扱われるべき

総括すると

・精神医療はすごく繊細でもっと慎重に扱われるべき医療である

ということです。
これは自戒を込めています。
精神科は何かと身体科の先生方から下に見られがちです。

外から見れば話聞いて薬出してるだけに見えるのでしょうが
実際は身体もある程度診れなければ
精神科しかない病院では特に仕事になりません。

精神科医ほど社会支援に繋げる仕事をしている臨床医は他にないと思いますし
社会のインフラとしてもっと大事にされるべきだと思っています。

医療以外のビジネスと精神保健福祉は相容れない

この視点はメンタルヘルスに関わるビジネスをしたいと考えている方は
持っていて損はしない視点だと思います。

僕の活動を応援してくれた人たちへ還元できるように
自分がやってきたことをしっかりと昇華するつもりでいます。
しかし、今後何をやるにしても精神医療と他の業態を繋げる活動はしません。

病院以外の営利組織と精神保健福祉との相性は最高に悪いと分かったからです。

この躓いた経験は意外と今
若輩ながら精神医療に携わらせてもらっている者として
世界をしっかりと区別して見る良い経験になったと思います。

今はただ目の前の患者さんに集中する

これからずっと精神科の医師として勤務していくかはわかりません。
今はただ、この経験を胸の中にしまい
「ありがとう」「先生が主治医で良かった」
と言ってくれる
目の前の患者さんにしっかりと向き合いたいと思います。







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