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スープは完成を待っている【裏NovelJam 2021 Online提出作品?】

NovelJamをオンラインでやると、飯の時間がほとんど無い。

んっ? 飯の時間が無い、というのはどう表現すれば良いのだろうか。材料を用意する時間がない、つくる時間が無い、食べる時間がない……そうか、全部だ。

新型コロナウイルスのデルタ株が猛威を奮っている昨今、お盆休みの3日間を用いて「NovelJam 2021 Online」は開催された。短期間でチームを組み、小説や表紙を作成し、電子書籍として出版する。数年前からそんなクレイジーなイベントに参加している僕は、いつの間にか運営として裏で大会を操る存在になってしまった。いや、操られているのかもしれない。

そんなショー・マスト・ゴー・オンなイベントであるが故に、予想外な出来事への対処もマスト・ゴー・オンでこなさないといけない。YouTube配信中はあれこれ喋り続け、Discord上で繰り広げられる参加者からの質問、要望、問題解決を対処すべく、ひたすらタイピングを繰り返す。
そういうことをしているうちに、何かしらの誤算が発生するのである。それが今回の僕の場合は、「休み時間」に得られる時間についてだろう。上手い具合に離席できるタイミングは、一向に掴めないままだった。幾度となく繰り返される2時間半の放送と30分のインターバル。ようするに、食事の時間は定期的に発生する30分の機材チェック兼休憩時間のみだった。
その時間で食べられたのは、大会初日(2021/08/13の午後1時以降)だとブタメンとお茶漬け、そして数枚のクッキーのみだった。お腹すいた。僕は多分、このセリフをYouTubeに数回流してしまったかもしれない。過度に私的な感情を世界中に流してはならぬ。そんなことを数日前にメンタリストから学んだはずなのだが、どうしたものか。

23時に初日の配信が終了し、ようやく自分の時間が取れた。
強い雨が降っている。外に出るのは止めておこう。冷蔵庫にあるもので、何かこさえようか。いや、コンロの火を付けて、何かを炒めることすら面倒だ。それよりも、シャワーと睡眠だ。明日の食事は、明日何とかすれば良いのだ……。

   ◆

寝坊した。
いや、7時半は世間からみたら早起きだ。でも、昨日し損ねた洗濯や皿洗いの時間を考えると、コンビニで兵糧を買う時間はほとんど無い。雨が強弱をつけながら降り続けているのも、ますます外出意欲を減退させた。

できることをやろう。一通り身なりを整えたあと、シンク下の棚を覗く。朝は食パンだ。そこにとろけるチーズを載せて、砂糖を少々ふりかけてトースターへ。シュガー&チーズトーストは、甘みと塩分をバランスよくとれるので、最近の僕のお気に入りになっている。で、その間に洗濯機を動かしたり、皿を拭いたり、コーヒーを注いだり……。これもマルチタスクと言うのだろうか。
ああ、これでパンとコーヒーを胃の中に流し込んで、洗濯物を部屋に干して、干し終えたら歯を磨いて……オンラインのイベントなのだから、歯を磨いていなくても口臭はバレないか。いや、磨くべきだ。

甲高い音と少し焦げた匂い。あれ、2分のはずが、3分でタイマーを回していたのかな? 聴覚と嗅覚を通して、戦いの朝へと再び僕は戻っていった。

   ◆

8月14日は23時35分になっていた。
ロフトから梯子階段をゆっくり降りて、ベッドにそっと腰掛けた。このまま横になってしまうと、3秒で眠れてしまいそうな気がしたので、色々なものを振り絞って、座る姿勢を保ち続けた。
この頃になると、お腹が空いたを通り越して、疲れてしまった。3分で辿り着けるコンビニにが遠く感じる。晩飯は諦めよう。ただ、湯船には浸かろう。シャワーではなく、湯船に浸かれば状況は変わる。そのまま5メートル先の浴場に向かい、シャワーでさっと汚れを流して、蛇口を回した。

食う気力は無いけれど、食うことを考える気力はある。今日は何食べた。今日は「30分以内に食器1つ分の食事を摂る」という作戦でいった。で、昼はふりかけご飯、3時はバナナヨーグルト、6時は冷奴、9時は冷凍の唐揚げをチン。うむ、朝のパンを加えると、1日合計で約2食分は摂取をしている。3分の2だとしても、これで良いのだ。
もうすぐお風呂が沸きます。そう自分を無理やり納得させていたら、電子音が再び僕を現実に戻してくれた。

   ◆

40度のお湯に浸かっていると、だんだん縮こまっていた心と頭の筋肉がほぐれてきた。1袋150円の少しお高い入浴剤のお陰かも知れない。こういうときこそ、贅沢をしよう。いい湯だな。あはは。

そして、一つ引っかかることを思い出した。今日は野菜を食べていない。「バナナは野菜に入りますか?」という問いにはすぐに答えられないのだけど、ひとまず、「野菜をあまり食べていません」は正答である。うーん、野菜はまだ腐る心配は無いと思うけれども、なんだか別のところで心配になるなあ……。

久々に体が温められている。湯船につかり、温められている。
そして、もくもくとアイデアが浮かんできた。
短い時間で作れるもの、野菜を簡単に調理できるもの、温かいもの……。
そして、ここ2日で全く使っていない食器があることにも、同じく気がついたのである。

   ◆

翌朝、6時半。
昨日よりも1時間ほど早く目を覚ました。よし、大丈夫だ!
キッチンに向かう。普段は1時間ほどベッドでダラダラするけれど、集中しているときは行動が違う。冷蔵庫から麦茶を取り出し、近くにあったコップに注ぐ。1杯クイッと飲み干して、さあクッキングを始めよう。

4分の1サイズのタマネギをみじん切り。同じく4分の1サイズのキャベツはざく切りに。小さな鍋にオリーブオイルを敷き、チューブに入ったショウガを少々絞り出す。お鍋に火が通ったら、まずはタマネギから。少し時間が経過したら、キャベツの芯に近い部分を先に鍋へ。葉っぱの部分はお湯を入れた後でも良いでしょう。
炒めている最中に気がついた、しめじもまだちょっと残っている。それもいくつかちぎり取り、小鍋に放り込む。キノコの旨味はアクセントになる。
数分待っているうちに、キャベツがしんなりしはじめてきた。一旦火を弱める。これ以降は煮込みの時間だ。キャベツの葉っぱ部分、お湯を入れる。調味料のコンソメは一旦スプーン2杯分。そのまま弱火でさらにコトコトと5分。ほったらかしにしたり、味見をしたりしながら、最後は塩とコショウで調整を……。

スープは偉大だ。
15分ほどで調理ができて、野菜の栄養が簡単に摂れて、美味しくて、心が暖まる。
完成した2人前のスープ。ひとつはマグカップに入れる。カップの縁に沿うようにラップを敷いた。これはお昼休みに食べるもの。12時頃になるのだろうか、もうNovelJam的には参加者全ての作品が提出されている。なので、そんな思いでこのスープを飲むことになるのだろう。よし!
もう一つはスープジャーに入れた。これは夜、NovelJamが終わったら食べるもの。食べるころには、相当味が染み込んでいることだろう。終わったら、明日のことを考えるのかな。サラリーマン業だけど、明日は午前中だけ在宅勤務だ。在宅だけど、働けるだけの体力は残っているのかな。だから、このお夜食で、明日の活力を手に入れるのだ。

さて、時刻は8時45分。スープ調理だけでなく、洗濯(そして今日も部屋干し)やら床掃除をしているうちにもうこんな時間に……。ロフトに構えたオンボロPCを起動させよう。2回あるお楽しみを冷蔵庫に入れて、僕は2メートル先にある梯子階段を目指すのであった。〈了〉

   ◇

僕の小説はどうでもいいので、ひとまず【NovelJam 2021 Online】の参加作品をいっぱい買って下さい!!!!!

というわけで、本大会の真面目な感想はまた後日……?

どうもです。このサポートの力を僕の馬券術でウン倍にしてやるぜ(してやるとは言っていない)