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真の強さと向き合って ~2013年11月の日本対オールブラックス~

奮戦するも、崩すに至らず。そんな印象がひたすら続いた80分間だった。

前半20分まではセットプレーで優位に立ち、五郎丸のペナルティゴールで6-7という試合展開に持ち込む。オールブラックスもミスを連発していたのは意外だった。
しかし、ハイパントの処理やブレイクダウンで後手になってしまい、その後はオールブラックスペース。攻撃では球出しのスピード、守備は大外の数的不利という課題を残した。

オールブラックスの怖さをより実感したのは、後半の40分間だった。
試合前に僕は、「両者に横たわる個人の力量差を把握したい」と記した。それが結局何だったのかというと、「修正能力」だと思った。
前半の戦いをヒントに、次第に対応力を上げ、攻略法を見出すオールブラックス。セットプレーでの変貌ぶりは思わず他のチームを見ているのでは? と錯覚したくらいだ。
攻撃で執拗に狙われたのは大外の裏……個人名を挙げれば、藤田の裏だった。バリット、ピウタウのトライはその最たるもの。とは言え、藤田個人の責任というよりも、バックス全体のポジショニングも考慮しなければならない。組織的守備の未整備は春からの課題だったが、残念ながら改善の兆しは見えない。

不利な状況の中、日本は流れを変えられなかった。廣瀬のキャプテンシーを感じるシーンも乏しく、控えのメンバーにも「スーパーサブ」と思しきメンバーはいない。トンプソンのプレーからは気迫が伝わったが、焼け石に水だった。
気持ちの問題と言うよりかは、ゲームメイキングできる「賢さ」という部分で差がついてしまったことを踏まえ、今後の戦い方を煮詰めていかなければならないだろう。

会場の雰囲気についても一言。
応援の盛り上がりとしてはウェールズ戦の方が上だった。オールブラックスを尊敬するあまり、「お客さん」というかたちで受け止めてしまったのではないだろうか。かく言う僕自身も、その雰囲気に飲まれてしまったのだが……。
例えオールブラックスだったとしても、お客さんじゃなくて、敵として迎えられるかどうか? というのがスタンド側の課題である。
故宿沢広朗氏は「試合前後は戦争で、試合後のみ平和が訪れる」とテストマッチを定義していた。
もちろん、試合前後の暴力行為や過度の煽りは推奨しない。しかし、何らかの特別な高ぶりがある試合だということを、頭の中に入れて相手チームを捉えるべきだろう。

もちろん、その逆の「サポートの文化」も大切に育てていかなければならない。代表ユニフォームで応援しよう! という「RED OUT」プロジェクト始め、試みは幾つか成功したと思う。
ただし、ピッチのプレーと同じで、代表戦だけで一気にできるものでは無いと思う。普段から「サポート」という視野で、贔屓のラグビーチームを応援できるかということも、併せて自分の中の課題としたい。

【SCORE】
<開催日> 2013年11月2日 14時キックオフ
<競技場> 秩父宮ラグビー場
<試合結果> 日本代表 6(2PG)-54(8T7G) ニュージーランド代表

※本稿は2016年1月に発売した「ラグビー選手になりたかった」に収録されている試合雑感です。Amazonなどでもお買求め頂けますので、この機会にぜひ。

さて、思い出話ばかりでは寂しいので、未来の話も。明日の対オールブラックス戦は5年ぶりとなります。この5年間で何が進化してきたのか? を確認する舞台です。
スコア的な希望を申せば、「2トライを奪う」「6トライ以内に失点を抑える」の2点が達成できればバンザイです。オールブラックスはどんなラグビーチームとも異なる強さとオーラがあります。ですが、この5年間で積み重ねた経験値、そして相見えたティア1諸国やSRチームの強さをモノサシにすれば、「距離がわからず恐怖に怯える」こともないと思うのです。

堂々と戦いましょう! 私も堂々と応援してきます!


どうもです。このサポートの力を僕の馬券術でウン倍にしてやるぜ(してやるとは言っていない)