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スポーツ観戦との「再会」・その3【20.10.11 鶴見大学対神奈川工科大学@横浜スタジアム】

野球を観に行きたい。でも、なかなかそれができない。
プロ野球がやっているとは言え、観客数は制限されている。
プロ野球以外にも、高校、大学、社会人と様々なカテゴリーがある。しかし、それらも一部は「無観客試合」の措置が取られている。
致し方のないところはある。このようなアンダーカテゴリーの試合こそ、迂闊に近寄れないものだ。小さいからこそなかなか感染症対策のコストもかけられないものだ。

ただ、全て無観客開催の措置をとる団体もあれば、一部は有観客試合を開催する団体もある。この日訪れた、神奈川大学野球リーグ戦も、横浜スタジアムの試合は観戦することができる。
神奈川大学野球リーグ戦は年に1度ほど足を運んでいる。最寄り駅に神奈川大学があるのがキッカケで、「せっかくだから地元のチームを応援してみよう!」ということである。

ベイスターズもかなりの人気球団になってしまったので、ふらりとハマスタに足を運べる貴重な機会になっている。ハマスタも座席や内装が綺麗になったり、外野席が増築されたりと、進歩を続けている。
スタジアムに入って、「意外と人がいるな」と感じた。

みんなも中々ハマスタに行けないから、野球を見れないから、この試合に辿り着いたのだろうか? 穴場がどこにあるのか、気がついた人がこれだけいるということか。
そんな中でも、僕はいつも通り内野席後方に陣取り、グラウンドを眺めている。もうひとつ、いつもと違うところと言えば、「座席は2つ分空けて座って下さい」「お食事中以外はマスクをつけて下さい」というアナウンスが、定期的に耳に入ってきた。

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そんな神奈川大学を目当てで来たのだが、試合を制したのはなんと神奈川工科大学だった。
立役者は2人いる。一人目は先発の古堀。140km代の直球とコントロールの良い変化球を駆使したピッチングで、相手打線を翻弄し凡打の山を築き上げる。9回まで投げ切り、被安打6で無失点の完封ピッチングである。
二人目は5番バッターの熱田。この日は4打数4安打の大活躍。9回裏はこの日不調だった4番・本橋が送りバントで得点圏にランナーを進め、その思いに応えるかのようなタイムリー2ベースヒットを放った。
もちろん、2人だけで引っ張っている訳ではなく、チームワークやベンチのムードも良好で、「こういう明るいチームなら、またハマスタで見たいな」と想わせるには充分な野球を神奈川工科大はしていたのである。

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3週間後、僕は再びハマスタに足を運ぶことにした。
神奈川大学野球リーグ戦も終盤を迎え、上位・下位の関係もはっきりしつつある。神奈川工科大も星は五分で進めている。今日の対戦相手は鶴見大学。ここまで1勝で最下位と、苦戦気味である。

神奈川工科大はエース・古堀でスッキリ勝ちたい……ところなのだが、どうも僕が観に行くときは「弱い」チームが輝き出す。
1回表に佐藤(駿)の犠牲フライで鶴見大が先制。そして、先発のマウンドに上がった4年生の代田が凄かった。確かに、得点圏にランナーを進められるシーンも多々あったし、5回裏には1点を喫した。だが、それ以上にサイドスローから繰り出されるピッチングは輝き続けていた。ピンチになればなるほど、秘めたるものが燃え上がっているかのようだ。

こんな近くに、素晴らしい投手がいただなんて……。コロナ禍で遠くに気軽に行けなくなったがために、僕はハマスタで大学野球を観ている。でも、そういうキッカケがあったからこそ、僕は古堀や代田に出会えたのである。
幸せは、案外近くにあるものである。

8回裏、9回裏のピンチを鶴見大は何とか乗り切り、試合は延長戦に突入した。ここからはノーアウトの1・2塁からのタイブレークが始まる。
鶴見大はバントでランナーを進め、7番の平田がタイムリーヒットを放つ。1回表以降はずっと湿りっぱなしだった打線が、ようやく結果を残すことができた。

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3-1で迎えた10回裏。好投を続けていた代田に、痛恨のミスが出てしまう。フィルダースチョイスで無死満塁。何とか次の打者は三振を奪ったものの、さらに迎え撃つのは4番・熱田。ここが勝負の分かれ目になると、誰もが思った。
結果は、バッターの勝ちだった。2点タイムリーで神奈川工科大が同点に追いつく。この一打でようやく、神奈川工科大に「明るさ」が戻ったと言えよう。

そして、5番バッターの磯部も強烈な打球を放つ。セカンドは飛び込んでボールをキャッチするのが精一杯だった。4-3のサヨナラ勝ちで神奈川工科大の勝利。10回を投げ切った代田は、グラウンドで膝をつき、しばらく立ち上がることができなかった。

   ◆

結局、今秋のリーグ戦は神奈川工科大は同率4位、鶴見大は最下位の6位で終わった。ただ、代田は秋季リーグ戦の「ベストプレイヤー」として表彰された。
彼のベストプレーを目の前で見れたことは、暗い日々が続いた2020年の中で、間違いなく嬉しい思い出として残り続けるものである

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