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王子とプリンセスだからではなく、この二人の恋路だからこそ応援したい/『リトル・マーメイド』

 みんなご存知『リトル・マーメイド』。
 人魚姫は絵本を読んだぐらいでアニメ版を見たことがなく(記憶にないだけかもしれないが)、足の代わりに声を奪われるけど最終的に王子と結ばれるんだっけ泡になるんだっけ?とほぼ覚えていなかったのもあり、はよキスせい!!って物理で盛り上げていく話だとは思わなくてずっと笑ってた。楽しい映画でした。

 でも、何より良かったのが、エリックとアリエルの関係性が丁寧に描かれていたこと。

 運命の相手と出会い、一目惚れし、結ばれる。
 でもそれ以上に、王子とプリンセスだからではなく、「アリエル」と「エリック」だからこそ生まれる推進力、前へ前へと大きく弾みをつけてまだ見ぬ世界へと飛び出していくこの物語の再構築の仕方が好きだなと思う。

 惹かれ合うアリエルとエリックを純粋に応援したいと思わせてくれる映画だったので、そんな私の心の声を代弁するかのごときセバスチャンやフランダーたちの奔走っぷりも楽しく見ることができた。


 二人揃えば

 そもそもエリックが魅力的。
 馬車の暴走はふつうに怖いぞ…ってなったけど、基本アリエルのやりたいようにやらせてくれる&スマートに支払いやフォローも済ませてくれる王子、たいへん良かった。したり顔で教えてくることもないし、アリエルの学びの機会を尊重してくれる。

 察しがいいし気遣いもできるし、相手の気持ちを汲み取ろうとしてくれるから話せないアリエルでも居心地がいいだろうし、王子という立場で好奇心や探究心が押さえつけられている構図がアリエルと一緒だし、そんな二人が出会ったらそりゃもう最高だよ。

 アリエルを探すあまり多少暴走気味になっていたところもあるけど、意固地にならずに素直に我が身を省みることができるのも良い。

 エリックの歌唱シーン、「必ず見つける、(アリエルが自分を)見つけてくれた」なのも良かったな。
 王子がお姫様を見つけ出す、あるいは見出すのではなく、お互いが探し求め合ったからこそ結ばれた、みたいな感じ。

 二人、一緒にいるとほんとに楽しいんだろうなっていうのが伝わってきてにこにこしてしまった。
 アリエルの知的探究心に面倒がるどころか嬉々として応じ、自らも積極的に学ばんとするエリックだからこそ、相乗効果がすごいんだよね。
 一人でも楽しいけど、二人だともっと楽しいを地でいくタイプ。

 アリエルの名前を当てるシーン、後でアニメ版を見たらセバスチャンが答えを吹き込んでいたので、ここは実写版の方が好きだな!
 じゃれあいのようだけど、自分の持っている知識で答えを導き出そうとするのがいかにもこの二人っぽくて甘酸っぱい。
 あと知的好奇心の塊である二人だからこそ、答えに至るまでの過程、トライアンドエラーがあって欲しいとも思う。

 Under the Sea

 全体的にちょっとCG感が強かった気がする。アラジンの「プリンス・アリ」のような国入りパレードの臨場感とかには負けるかもしれない。
 アニメ版は生き物の骨格とかを完全に無視したコミカルな動きだからこそ映えていたと思うので、実写だとちょっと難しかったかも。
 歌の入り方とかはアニメの方が好きだな。出だしのリズムとキャラの動きがマッチしてたのかな?

 実写版、いっそ七つの海を案内してくれても良かった気がする。せっかく七つの海を管轄するお姉様方が出てきたのに出番がなかったので、七つの世界を見てみたかった感はある。

 でも、アリエルがUnder the Seaでハモるところ、めっちゃ綺麗だったな。
 アリエルがすごい楽しそうにしてて、海の底の世界が美しいことは分かってるし大好きだけど、それでも湧き上がるこの衝動は抑えられないんだよというのが伝わってきて良かった。

 あとはとにかくアリエルっていうかハリー・ベイリーさんの歌声が美しすぎる。あまりにも透き通っていて、でも海のような豊かさも感じられてほんとによかったし、すごいパワフルさもあって良良良!

 セバスチャンやフランダーたち

 セバスチャンやフランダーたちがめっちゃムード作りしてるシーン、ノリと勢いがバーフバリのカッタッパを思い出して余計ダメだった。面白すぎる。二人が惹かれあっているからこそ許される行為ではあるけれど。

 あと、スカットルの登場シーンでおやつに食われていった魚のことがずっと気になってた。フランダーが平然としていたので、余計に気になってしまうというか……。喋る鳥や魚とそうじゃないものの違いってどこにあるんだろうな。

 ラストについて

 地図にない海へと旅立つラスト、良い!
 ラストのアリエルは望めば再び海に戻れる(人間ではなく人魚に戻れる?)のか疑問なんだけど、真実の愛とはいえアリエルがもし一生人間のままなら、ちょっとアリエル側の代償が大きいのでは? エリックは失うものなんて何もないしな…と思っていたのだけど、あえて陸の世界ではなく「海」へと旅立つことでバランスを取ったのかもしれない。

 実写版を見た後、アニメ版のリトル・マーメイドも見たんだけど、エリックがいい感じにキャラ付けされていて良かったなと思った。

 アニメよりも実写エリックの方が好奇心旺盛でまだ見ぬ何かを知りたいという思いが強く、アリエルのそれといい方向に作用しあうんだよな。

 あと、声を取り戻すのも、アニメだと周りの協力あってのことだけど、実写だとアリエル自身が取り戻すのもいいな。

 そして違う種族同士が手を取り壁を乗り越え結ばれる愛というストーリーになったのも良い。まさしくアリエルとエリックは新しい時代の幕開けだよ。

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