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記号過程、システム、意味

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人間と自然、人間と機械、人間とAI 対立するふたつのもの それらはなぜ対立するふたつのものになったのか? その答えを「記号過程」という用語を手がかりに考える
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2019年3月の記事一覧

家族関係を示す必要から言語=シンボルが始まった。 ーテレンス・ディーコン著『ヒトはいかにして人となったか』より

テレンス・ディーコン著『ヒトはいかにして人となったか』を引き続き読んでいる。 この本は、われわれホモ・サピエンスの「言語」の元になったであろう「シンボル」を扱う「脳」の仕組みがどのように進化したのかを問う。 ホモ・サピエンスもまたある日突然今日のような姿で現れたわけではなく、少しづつ進化して、今のような姿になっている。 その長い時間を通じて、人間を現在の人間のあり方へと形成する圧力になった環境、進化の「選択圧」は何であったのか? それを考察した一冊である。 突然変異

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「人間が考える」ことと「コンピュータが計算をする」ことは、なにが違うのか?

(このnoteは有料に設定していますが、最後まで無料でお読み頂けます) ◇ AI(人工知能)が大流行である。 最近あるところで、どのかの経営者の方がこんなことをいう場面に出くわした。「教育にも管理にも手間とコストがかかる人間を使うのはリスクである。文句も言わず働くAIを速く実用化してほしい」と。 リスク、とまで言われてしまった「ヒト」は、果たして仕事を取り上げられた後どうなるのだろうか。経営者氏は、そんなことは自分が関知することではいという様子。 黙って聞いていると

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読むことと生きることー読書メモ:市村弘正『読むという生き方』

 noteには、いずれかの記事を「プロフィール」に設定できる機能がある。そこでプロフィールの代わりになるような記事を書いてみる。  このnoteアカウントで何をやっているのかといえば、 主に「読書」である。 趣味は読書?  よく本を読んでいる、というと「趣味は読書ですか?」と聞かれることがある。聞いている方は何気なく聞いてくれているようだが、こちらとしては考え込んでしまう。  趣味、というと、愉しみ、嗜み、要するに自分で選び取ってやっている、といったニュアンスがあるように

人を動かすということ‐読書メモ:『弥生時代の歴史』(2)

 前回に引き続き『弥生時代の歴史』読書メモである。(1)は長々と文献のまとめになってしまったが、これは「なるほどそうだったのか」と教えられる話題が多かった為である。  特に、朝鮮半島南部からわざわざ日本列島に移住した人々の「動機」についての仮説、これが示唆に富む。著者の藤尾氏は移住の原因について、農耕社会に生じた格差ではないか、と仮説を立てる。階級格差から生じる矛盾から逃れようと、移住を選ぶ人たちが出てくる、と。 客観的事実から垣間見られる過去の人々の主観性 この『弥生時

縄文から伝わるもの‐読書メモ:『縄文時代の歴史』

 去年の夏、当時2歳の長男と行った縄文展。  会場に入るなり「おウチかえる」という宣言する長男に、「絶対おもしろいから!」などと説得を試みるも理解を得ることはできず。ろくに見ることが出来なかった。その顛末はこちらのnoteに書いた次第である。 図録 さてその長男、今は3歳になったが、どういう訳だか縄文展会場で買った図録がすっかりお気に入りである。慣れた手付きで大型本のページをめくっては、推し土偶を探し出し、「見て!見て!」と大喜びである。  まずは表紙をめくってすぐのこ

類(たぐい)稀(まれ)なる‐読書メモ:『たぐい  vol.1』

 いつの頃からか、もう覚えていないが「類まれなる」というコトバを気に入っている。中学生だったか、小学生だったか、ずいぶん小さいころから、この手の子供らしからぬコトバを使っては奇人扱いされたものである。そうして奇人扱いされることの開放感もまた、その頃にもう知っていたような気がする。  類、たぐい、といえば、「云々の類」という具合にいろいろなものを、細かく見ればそれぞれ異なった事柄を、ひとまとめにした何かである。例えば「人類」、ヒトのたぐい。あなたも私も、彼も彼女も、あのお方も

「として」の自由と「喩の能力」ー読書メモ:中沢新一『虎山に入る』

 前のnoteでAIを含むコンピュータと、人間の「違い」について考えてみた。  コンピュータは純粋にその内部にある符号と符号の関係を何らかのルール(自動的に変化するルールを含む)に基づいて作り出す。コンピュータはルール内に定義されていないモノ=ルール外のなにごとかには全く関わらない。  もちろんコンピュータは様々なセンサーや入力デバイスを通じて外界の情報を内部に取り込んでいる。しかし、コンピュータが取り込む外界の情報は、あくまでも外界の環境の変化に応じて変化するセンサーデバ