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#010-野菜が美味しいということ

東北では徐々に梅雨の気配がしてきました。
夏野菜は少しずつ実がなり始め、今月末から早いものは収穫ができるようになる予定です。

さて、今日は野菜の「味」について考えてみたいと思います。
野菜が美味しいというのは、どういうことなのでしょうか?

味に影響を与えそうな要素

私が今回考えたい要素は下記の3点です。
・栽培方法
・鮮度 栄養価
・消費者の主観

栽培方法について

通常の農法に加えて、有機農法無農薬農法というものがあります。
これらについては私も非常に重要なテーマだと思っておりまだまだ勉強中なのですが、現状言えることとして「有機(無農薬)農法だから美味しい」「栄養価が高い」という確たる合意は存在していません

農林水産省の「有機JAS規格」に関する資料を見ても、有機農法で謳われている主たる目的は環境負荷の低減であり、味には言及されていません。

栽培方法と味には後述するとおり相関関係はあり得ると考えますが、因果関係については懐疑的というのが私の暫定的な結論です。

鮮度 栄養価

こちらは直感的にも科学的にも納得できると思いますが、味に多大な影響があります。収穫直後から鮮度は落ち続け、栄養価は減り続けます。

通常スーパーで購入する野菜は、「収穫から数日経っている」「輸送中に熟することを考えて、完熟前に早めに収穫している」という2点から、完熟状態で収穫した直後の野菜と比べて味が落ちます。

一方農家が直接納品する「産直」形態のお店では、収穫日かその翌日には出荷していることがほとんどです。
前述したような有機農家さんは産直に積極出荷していたり直接注文を受けて販売していたりするため、鮮度が良く結果味が良いということは多いです。

つまり野菜の味に関しては、農法や栽培技術というより商品の流通構造に依存する部分が多いのではないか、と考えています。

インディ・ファームの野菜の出荷風景 基本的には収穫した日に産直に出荷しています

消費者の主観

少し話が逸れますが、ユヴァル・ノア・ハラリの著作の中で「現実の3分類」という考えがよく出てきます。

1. 主観的現実;味、痛み、感動など個人の主観的な経験
2. 客観的現実;物質の組成や光の速度など客観的に観測できるもの
3. 共同主観的現実;人々が共通認識を持つことで存在する抽象物
 (国民国家、宗教、株式会社、法律など)

この枠組みを借りるならば、2番;客観的な栄養価や旨味成分の組成はおなじでも、1番;個人の主観的な味の経験が違うということはあり得ます。

個人の経験を実際に高める(または高まったと錯覚する)要素として「期待」「相対化」「過大評価」などがあり、行動経済学の分野等で研究成果があります。

なので「この野菜は新鮮だから、有機野菜だから、〇〇が作ったから、美味しいはず!」と思って食べると実際に美味しくなる場合があります。


以上、3つの要素について考えてきました。
個人農業者としては「味」はとても重要な要素です。出来るだけ誠実な栽培を心掛けつつ、新鮮なものを届けられる体制と期待を持ってもらえるPRを通して、消費者の方々に美味しく食べてもらえるよう努力したいと思っています。


[本日の参考文献]

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