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そのプロジェクトに"お金以外の価値"はあるか? - by Vruchtvlees <vol.17>

WORKS GOOD! MAGAZINE 第17弾は、小規模ながら、昨年「ヨーロピアン・エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」というヨーロッパで大変名誉のある賞を受賞した Vruchtvlees。アムステルダムから少し離れた街にスタジオを構えつつ、アムステルダム市内さながらにインターナショナルなチーム編成でデジタルドリブンをコンセプトとし幅広く活動をしています。彼らのユニークさの1つとして「ダッチデザイン」というキーワードがありますが、それを含め、彼らの独自性とは何か詳しく聞いてみました。

– まず初めにVruchtvleesについて教えてください。

Vruchtvlees はローマン、マイケル、私リンドールの3人でスタートしました。当時、私たち3人は近くの芸術アカデミーの学生で、デジタルの世界であまり注目されていなかった部分に対して共通の考えを持っていましたし、起業家精神もありました。そして、実世界に即した学びとして自身の事業を立ち上げたいと思い起業しました。それから10年が経ち、この5年間で会社の規模は25人にまで成長しました。さらに50人規模にまで成長させることが現在の目標です。

私たちは、アムステルダム近くの町のハーグ(オランダの海岸沿いの町)を拠点としています。オフィスのある場所はオランダ企業も多国籍企業もそれほど多くない住宅街で、本当に良いところです。企業に囲まれたアムステルダムとは違う環境にあるため、都市部にある会社とは異なる視点を持っていて、それが私たちの強みだと思っています。


– メンバーはすべて現地の方ですか?それとも国外の方もいますか?国外の方がいる場合、共通言語はやはり英語になるのでしょうか。

スタッフはヨーロッパ中から集まっています。ポルトガルやチェコ共和国、オランダ国内でもユトレヒト、ロッテルダム、アムステルダム、ハーグなど様々ですし、日本人もいますよ。

使用する言語はオランダ語と英語が半々ですね。英語は多く使うのですが、オランダ人が2人いて会話するとなるとやっぱりオランダ語になります。これまでのところ「100%英語」というほど完全な国際化はしていないのですが、将来的にはそうする必要があると考えています。誰かがオランダ語で話をする環境は、オランダ語を話さない人に疎外感を与えてしまいますからね。

– あなたの会社の強み、あるいは独自性は何だと思いますか?

会社の起こりはグラフィックデザインですが、デジタルやウェブデザインへの情熱も常に持っています。ブランディングとデザイン、そしてデジタルを自在に組み合わせられることが、私たちの会社の独自性を生み出しているのだと思います。また、ダッチデザインも私たちの重要なルーツです。ダッチデザインはオランダが誇るべき遺産であり、物事の捉え方や問題に対するアプローチです。私たちの仕事はそれをデジタルプラットフォームに落とし込んだものです。

Dutch Design Week


– デジタル分野でのダッチデザインを成し遂げたという点で、「ヨーロピアン・エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」を受賞されたわけですね。


はい、大変素晴らしい賞を受賞することができました。とても大きな誇りです。この団体は非営利団体で、商業的なバイアスはありません。その意味でも、本物を追求する我々にとっては名誉なことです。この賞がチームのエネルギーにもなっていると思います。

– チームの動機付けという点で、賞を獲得することは必要な要素ですね。受賞以外でチームのモチベーションを保つために実践されていることはありますか?もしくは、チームのモチベーションをどのように育てていきたいと思っていますか。


チームのモチベーションを高めるために大切なことはいくつもあります。まずは自分の仕事に誇りを持ち、常に最高を目指すこと。そうして得られる達成感を目標にして、私たちはプロジェクトを成功させるのです。また、自分たちの仕事が世界中の人の目に触れることも、大きなモチベーションになり得ます。


– 受注するプロジェクトもチームのモチベーションを考えて決めていたりするんでしょうか?


クライアントと仕事をする、あるいはプロジェクトに取り組む上で、付加価値は非常に重要な要素になると思います。プロジェクトに取り組むスタッフは、自分たちのスキルとエネルギー、そして時間を注ぎ込みます。ですから、単に儲かればいいというのではなく、そこに自分の時間を費やす価値がなければなりません。クライアントやプロジェクトを選ぶ基準も、言ってみればそういうものです。

具体的な基準のひとつとしてあるのは、そのクライアントが世界にある種の肯定的な発展をもたらすかどうか、そして、私たちが彼らの目標や展望に関わりたいと思えるかかどうかだと思います。私たちのクライアントの多くは、美術館や博物館、非営利団体など、文化文芸の分野にいる人たちで、確固たる展望を持ち、世界に発展をもたらそうとしています。

それと同時に、よりイノベーション志向な営利企業のクライアントもいます。彼らは、例えば短時間でより多くの技術革新を生み出すための、効率的な方法を探っています。

いずれにせよ私たちは、クライアントの可能性を実現するために仕事をしています。ですから、決して短期の事業性だけでなくその先の展望まで含めてコミットしますし、さらに言えば、一緒に働くメンバーのひとりひとりが自身の可能性を実現できるかどうか、もとても大切にしています。


– プロジェクトを進行している際になにか問題が起きたとき、それに対しての最終的な意思決定はどうしていますか?

延々と平行線をたどるのは危険なことです。ただ、私たちは時間が有限であることを分かっていて、自分たちのスキルを時間として売っていることを皆が意識しています。そのため、効率性は非常に大きな課題です。議論だけを続けていて解決に向かっていないと感じたときは、マネージングディレクターが意思決定の後押しをします。それによって、素早く行動・決断し、正しい目的地に向かうことができています。

– ひとりの人が一度に担当するプロジェクト数は平均してどれくらいですか?

シニア役職のスタッフが受け持つプロジェクト数は他のスタッフに比べて少なめです。彼らは大きな部分を総合的に担当し、ひとつのプロジェクトに数日掛けて取り組むのに対し、シニア以外が様々な細かい部分を担当します。手順はかなり細分化していて、細かな仕事が数多くあります。ひとつ終わったらその次に取り掛かる感じで、現在進行中のプロジェクトでいえば、一度に担当する数はざっと40〜50ですね。


– その数はかなり多く感じますが、勤務時間は何時から何時まででしょうか?

9時〜18時です。毎日、9時からグループミーティングを行います。そこで皆が進捗状況や、起こり得る課題を共有します。また、午前中の時間を1時間長くとって、13時まで仕事をします。朝は脳がよく働き、集中して仕事ができますからね。オフィス内は静かで、音楽もかけず、話し声もほとんどありません。

その後、だいたい13時頃からランチタイムになります。休憩時間は1時間ですが、早く帰りたい人は休憩時間を30分にして、その分早く仕事を再開します。仕事をすべて終えてしまって、他にやることがない場合も早く帰ることができます。

– 残業をすることもありますか?

残業は最低限にしようと努力しています。それでも、3ヶ月に1回くらいは残業をお願いしてしまうことがあります。
ですが、残業には2種類あると思います。納期を守るための残業と、より良いものを作ろうとして時間をかける残業です。私たちのメンバーは、可能な限り最高の仕事をしよう、1日でできる以上のことをやってみせようという情熱や意欲を持っているので、夕方まで、あるいは週末でも仕事をすることができます。しかしこれはすべて、彼ら自身の判断に委ねられます。

– 多くのプロジェクトを健全な勤務時間でうまくマネジメントをするコツはありますか?

タイムマネジメントは私たちの事業経営の中核を成しています。プロジェクト終了時点で、かかった作業時間のすべてを請求できるわけではないので、見積もりを作る時点で想定した時間内で相手のニーズを満たす努力をします。そのため、誰がより効率的に仕事ができ、前半で時間を稼ぐことができるかを考えます。そうすることで、次のステップで使える時間を捻出でき、最終的にうまく調整することができます。もし失敗してしまったとしても、そこから学びを得られれば問題はありません。


– 在宅勤務やリモートワークも可能ですか?

私たちのような会社に在宅勤務はあまり向いていないと思っています。異なるプロジェクトがたくさん進行する上で、チームの皆がここに集まればすぐに話し合えますし、仕草のひとつからでも互いの意図を感じることができます。リモートワークの場合、対応の迅速性は、一ヶ所で集まってやるのに比べて半減すると思います。

また、在宅勤務をするには、周囲から他の人よりも少し多くの信頼を獲得しなければなりません。なぜなら、皆が在宅勤務で良い成果を出せるとは限らないからです。別のことに簡単に気を取られることもあるでしょう。そういう状況は、危険を孕んでいると思います。


– あなたのチームにとって、最も重要なことは何ですか?最も重要なことを教えてください。

チームにとって最も重要なことは、皆が同じ目標に向かって仕事をすることです。私たちの会社は成長段階にあり、この先もっと大きな影響を与える仕事をしたいと思っています。だから、誰もが同じ気持ちを持っている必要があります。つまり、成長が必要な理由や成長したいと思う理由を皆が説明できるようにならなければいけない。目標に到達するために進むべき正しい道を、皆が認識できていないとダメなのです。そうするために、私たちはいつも月曜の朝にやっていることがあります。他の日よりも長くミーティング時間をとって、マネージングディレクターのローマンが、その週のタスクを説明すると同時に、それらが将来の展望とどう関わるかを説明します。また、4半期ごとにもミーティングを行います。すべてのチームが集まって、4半期ごとに評価し、次の4半期の展望も描きます。次の4半期の主な目標は何か確認するのです。

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