見出し画像

“クリエイティブチームのためのリモートワーク”《後編》 — WORKS GOOD! NIGHT vol.1

《前編》に引き続き、世界各国で働いたことのある、Nuevo.StudioのAlvaro Arregui Falconさん、「フリー出社制度」に取り組み話題となった株式会社CINRAから井手聡太さん、濱田智さんをお招きし開催した WORKS GOOD! NIGHT vol.1 のレポートをお送りします。《後編》では、質疑応答の様子をまとめております。是非ご覧ください!

— ここから先は会場の皆さんからの質問を受け付けたいと思います。いかがでしょうか。

Q1:
CINRAさんにおうかがいしたいのですけれども、「フリー出社制度」を始めてから、何割ぐらいの方がオフィスに行って仕事をされていますか?

井手:
私の体感ですけど5~6割ですね。

— 思ったより、結構多めですね。

井手:
そうですね。ディレクター職とかそういった系の人が社内にいる率が結構高い感じですね。逆にデザイナー、デベロッパーは、結構リモートワークしているケースが多いです。

Q2:
トラブルになったときに、その場にいる人に相談がいってしまうことが問題になっているというお話がありましたが、その相談を受ける人たちから、フリー出社に対して不満が出たりとかはないんでしょうか?

濱田:
めちゃめちゃ小まめに見ていかないと、すごく不満が溜まると思いますよ。今まで我々は会社のオフィシャルな面談というと、年1回、給与査定の機会しかなかったんですけど、この制度を導入するにあたって、毎月1回の評価面談を設定しました。12倍の頻度です。そのぐらい、オフィシャルな形でもサポートをしていかないと、この制度は維持できないと思っていて、マネージメントコストは、結構増大しています。

井手:
(前出の)評価面談が年12回あるわけですが、毎週チームごとのミーティングがあったり、当然案件ごとにもにあるので、可視化されたミーティングは増えたかなという感じです。


Q3:
場所や時間を選ばないフレキシブルな働き方を実践する上で、オフィスという物理的な「箱」の必要性をどう考えていますか?

濱田:
ごくつまらないことを言ってしまうと、働く設備を整えるという会社としての義務は、オフィスにどうしても集約されてしまうので、その改善は続くというか。リモートワークは「どこでやってもいいよ」ってことですが、一番働きたいところにいいPCがないからといって、それを買う義務は会社にはないので、そういうことはサポートはできないのです。我々がずっとやっているのは、要するに「働き方最適化」なので、働く場所として最適なところがオフィスであれば、それはそれで全く問題ないと思います。そういう意味で、オフィスの重要性は逆に上がっていると思っています。

あと、さっき言った企業の雰囲気とか文化を作る上で、オフィスというのはすごく重要な立ち位置にあるんです。

井手:
弊社はメディアの制作をやっていて、「人数が増えたから(メディアチームの)オフィスを分けるか」みたいな議論もあったんですけど、それはポリシーとしてやらないということで。全員が入る広い物件を探すのが大変だったんですけど、フリー出社が始まったとしても、会社に行ったらそこで撮影をしていたり、インタビューをしていたり、そういった空気をチラッと感じられるだけで、やはりまだまだオフィスのスペースというものが、アイデンティティーを共有するためには必要だとは思います。

— Alvaroさんはどう思われますか?

Alvaro:
日本に来たときに、一番安いスタジオを借りました。会社という形をとるために、場所は必要だったからです。ただ、家のほうが働きやすいので、しばらくは家で働いていたんです。ただ、人数がだんだん増えてきて、新しい場所を確保しました。家にみんながやってくることがちょっと問題になったことと、家で仕事もして、そこに住んでもいたら、家から出ないことが多くなり、だんだん牢屋に入ったみたいな嫌な気持ちになってきたので。

1日1回、仕事する時は家を出るというだけで、仕事モードにも入れるし、仕事が終わってから家に帰ると「ああ、家に帰ったな」という安堵感みたいなものも得られます。

それが必ずしも事務所じゃなければいけないと言っているわけではないですが、自分の家と仕事をするスペースを分けることが私は大事だと思っています。それがどこかのカフェであってもいいと思います。


Q4:
コミュニケーションのいろいろな取り方をチャレンジしてきて、その中で、CINRAさんという会社に帰属意識を持って、「ここじゃないと働けない」と思っている人がいると思うんですけれども、その方々をつないでいるものというのは何だと思いますか?

井手:
分かりやすいところを言うと、「カルチャー」というところで集まっている集団だというのが一番強いところで……。

— カルチャー系のメディアだったり活動が多いということですね。

濱田:
狭い意味で、ですね。

井手:
そういったものが好きで集まっている人に対して、入社時に、会社が「カルチャー」というものに対してどう取り組んでいくかとか、その上でメディアだったりクリエイティブにどう向き合うか、といったようなアイデンティティーの共有は、かなりちゃんとやっています。

濱田:
僕ら(濱田・井手)は、会社に8人しかいないときから仕事をしているので、そういうものは共有していますが、新しい人には当然通じないこともあるだろうし、今は阿吽の呼吸でできるところもそうではなくなるし、距離の離れた部下がどんどんできてくるというのはもちろん承知の上で。そこに対して、会社の昔話とか歴史とかを説明するというのも一つの手段としてはあるんですけれども、そういうところに全く響かない人に対して、今後のビジョンをいかに共有するかというのは結構でかいだろうなと感じています。

あとは、具体的にどういう人が、どういうノリでやっているのかっていう…また話が戻ってしまうのですけれども、企業文化を我々の魅力としてきちんと提示できる状況をきちんと維持し続けるということを、マネージャー層が常に考えていかないとダメだと思います。さっきのオフィスの話とかもすごくその通りで、僕らが突然雑居ビルに引っ越したら、極端な話半分ぐらいの人が抜けても不思議はないんですよね。それぐらいインパクトがある。場所をどうするかとか、どういう機材を使って何を作っていくのかっていうことが一つでもブレ始めると、どんどん人というのは離れていくだろうなという危機感は、マネージャー層は常に持っていると思っています。


— 人によって、帰属意識のあり方というのは異なるかもしれないですけれども、会社に対する魅力を感じ続けられるように、会社だったりマネージャー側が意識をし続けるということですね。

濱田:
そうですね。金で解決できることは一番簡単ですから、それをやった上で、じゃあどこまで帰属してもらえるか、どこまで愛着を持ってもらえるのか。とにかくもう、ダサイことやったらダメだという。

— というわけで、ここらでいい時間になってきてしまったので、そろそろ終わりにさせていただきます。リモートワークの良い面も大変な面も、たくさん話があったかと思います。今日の話を聞いて、もしかしたら今度自分の会社で試してみようという方もいらっしゃるかもしれないですけれども、いろいろな人がいろいろなやり方で働き方というものに対して取り組みをして、トライアル&エラーの結果をみんなでシェアしていけると、すごく議論が深まるきっかけになるだろうなと思っています。

僕らは、リモートワークもそうですし、働き方みたいなことに関して、今後も考えることをやめずに、それを共有し、議論できるような場所、メディアでありたいと思っています。今後とも[WORKS GOOD!]をよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。

濱田:
CINRAが「フリー出社制度」をやめることがあったらまた呼んでください。

— そうですね(笑)それはみんな聞きたいと思います。めちゃめちゃキャッチーなトピックです、それは。

※本稿は、発言の意図を改変しない範囲で、加筆、修正、整文を施してあります。


WORKS GOOD! MAGAZINE twitterもぜひフォローお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?