強いチームの“カルチャー・ビルディング” — WORKS GOOD! NIGHT vol.2

WORKS GOOD! MAGAZINEが、2回目となるイベント「WORKS GOOD! NIGHT vol.2」を2019年3月に開催しました。今回は“チームスクラッピング”をテーマに掲げ(チームビルディングをもじった造語。詳しくはこちら)、Loftwork Inc. との共催で行われました。強力なスピーカー陣によるセッションとパネルディカッションの2部構成のうち、パネルディスカッションの模様をレポートします。

▼スピーカー
NETFLIX 武内 秀美 氏
北海道出身。高校卒業後、渡米し広告学を学ぶ。帰国後は、外資系金融でマーケティングに携わる。リーマンショックを機にキャリアチェンジし、数社を経たのち、外資系クリエイティブ・エージェンシーのワイデン・アンド・ケネディでストラテジック・プランナーとして、クライアントのブランド構築に携わる。直近は、NETFLIXでパートナーマーケティング領域でクリエイティブチームの立ち上げに従事。

AKQA 澤井 愛佳 氏
ニューヨーク生まれニューヨーク・タイ・横浜育ち。NYU Gallatin School of Individualized Arts卒。通信事業やSNSの仕事を経て、2013年にAKQA東京オフィスに参画。クライアントサービス/プロジェクトマネージャとしてNike Japan、AMEX、Google、Amazon等のプロジェクトを担当する。現在は、スタジオ全体のオペレーション・プロダクションマネージメントを手がける。多種多様な社員がクオリティの高いアウトプットを出せる環境やカルチャーを日々探求中。

Loftwork Inc. 高井 勇輝 氏
クリエイティブDiv. シニアディレクター。早稲田大学卒業後、Web広告のアカウントプランナーとして様々な業種に向けて提案・ディレクション・運用・納品までを4年担当。2012年、「プロジェクトデザイン講座」への参加をきっかけにロフトワークに入社。Webディレクションをはじめ、企業の新規事業創出支援や空間ディレクション、アートプロジェクトなど、オールラウンドに幅広いプロジェクトを手がける。答えのない新しいものを作る際に、曖昧な部分も含めて大枠を捉え、ファシリテーションしながら推進するのが得意。

▼モデレーター
SHIFTBRAIN Inc. 山本 真也
1986年生まれ。千葉出身、2児の父。17歳からフィーチャーフォン向けのサイト/コンテンツ制作のディレクターとしてキャリアをスタート。途中、血迷って飲食店店長を経験した後、2011年よりシフトブレインに参画。瞬間風速的なキャンペーンから継続的なブランディングまで、様々なプロジェクトにコミュニケーションプランナー/クリエイティブディレクターとして携わる。WORKS GOOD! MAGAZINEにはエディター兼スピーカーを担当。




山本:
(スピーカー3人のセッションを経て)今日、チームビルディングをテーマにここまで話をしてきましたけど、その中でも「カルチャー」という言葉がひとつのキーワードだと感じました。それについてもう少し掘り下げていきたいと思います。

これまでカルチャーを特段共有してこなかったチーム、つまり1つのカルチャーに基づいて集まったわけじゃない人がたくさんいるチームで、これからそれを後付け的に作る、というケースってたくさんあると思うんですけど、そういう場合にどんなことを心掛けたらいいのか、アドバイスいただきたいです。

武内:
カルチャーがないという悩みって多分、明言化されていなかったり、まだきちんと掘り出すことができてない状態のことなのかなと思っています。ブランド戦略の仕事では、会社の色々なメンバーにインタビューして、会社のブランドとは何なのかを調べるわけです。そうすると、みんな意識はバラバラでも、この会社のエッセンスってこういうことかなっていうのが絶対あるんですよね。

それは、物づくりの会社であれば物づくりに対する姿勢だったり、クリエイティブの会社であればクリエイティブをどういうものと捉えているか、みたいなことから定義できると思うんですが、そもそもみんなの意見を改めて聞くということを疎かにしている部分もあるのではないかと思ってまして。
今あるものを一度洗い直して、見直して、そこからカルチャーにつながるものを定義していくといいんじゃないかな、と私は思います。

NETFLIX 武内氏


山本:
澤井さんいかがですか?

澤井:
すごい難しい質問ですね。なんとなく形成されたカルチャーを意図的にデザインするってなかなかうまくいかないなと私も感じてはいるんですけど。ただ、いろんな人がいても、言うてもみんな人間で、いいと思っているものとか大事にしてることとか、モラルとかって、実はそんなに変わらないんじゃないかなって気もしていて。チーム内や個人同士に何らかの共通項があるって信じて接する人がどれだけいるか、っていうのは結構重要だなとは思っています。

AKQA 澤井氏

山本:
いろんな人の意見を聞いてその中に共通点を探していくと、どうしても一般的すぎる言葉になってしまうっていう難しさもありますよね。みんなが共感できることと、そのチームならではのユニークさをどう両立させるか、という。

高井:
僕の所属しているロフトワークには、カルチャーや行動規範が――ないとは言わないですが、明文化されたものはないんです。ただ、じゃあ本当にカルチャーがないのかと言うとそうではないんですよね。言語化されていないだけで、なんとなく「ロフトワーカーってこうだよね」みたいなのはあるんですが、それをどれぐらいメンバー間ですり合わせるべきなのか、形にするべきなのかはすごく難しいなと思っていて。

代表の林は「ロフトワークっていう会社はないんだよ」とか「真ん中なんてないんだよ」というようなことをよく言うんですが、それは、ロフトワークというひとつの会社の下に社員がいる、のではなく、いろんな想いやスキルを持った人たちがたまたま今集まって形作っているのがロフトワークという会社であり、ひとりひとりのメンバーが主体だよ、ということかなと理解しています。分かりやすく共有できるひとつのカルチャーがあったら便利だなとは思うんですけれど、個人的には、そこをあえて定義したり明文化しない在り方を求めていくのが、ロフトワークのカルチャーであり、チャレンジなのかなと思っています。

Loftwork Inc.  高井氏

山本:
いい意味でのカオス――あるいは多様性がうまく機能するかどうかって、マネジメントも重要ですけど、個々人の意識や心がけ、つまり協調性も必要ですよね。
ただ、日本だと協調性という言葉が、ちょっと本来の意味と違う解釈をされていることが多いように僕は感じていて。つまり協調性と同調性と混同しがち、ってことです。

先ほど武内さんのお話(登壇時)の中で、NETFLIXのカルチャーとして「Freedom & Responsibility」とか「Selfless」とかって言葉がありましたが、その両者って一見矛盾しているようにも感じるんです。このあたりのバランス感覚が日本の企業にいるといまいちピンとこない人も多いんじゃないかと思うんですよね。

澤井:
社会学者の山岸俊男さんが書いた『安心社会から信頼社会へ』っていう本があるんですけど、それを読んでああなるほどなと思いまして。安心社会っていうのは、要は同調することを協調と考える社会なんですけど、確かに前提がかなりたくさんそろってる集団であれば、その中でのやり取りっていうのは同調のレベルでやったほうが、お互い何を得るかが割と見えやすかったりすると思うんですね。

一方、すごく多様性が重視されてる集団で、なおかつ想像を超えた破壊的イノベーションが日々起きているような、速度も速くて、ボラティリティも高い世界になってきた時に、「正直、この人が本当に自分にとって役に立つかは分からないけどトラストしなきゃ」みたいなことを日々実践して、感覚を鍛えていくっていうのが信頼社会だと。

そこに対する許容値、スタートラインは、例えば海外経験みたいな多様性の中に身を置く体験を1回でもしてる人としてない人とでは、結構違うのかなと思います。
もちろん、そういう経験がなくても、入ったあとから信頼社会のコミュニケーションに移ろうっていう意思がある人はうちでもやっぱり残ってますし、活躍されています。


山本:
信頼で成り立つコミュニティにおいて、信頼を勝ち得る方法は成果を上げることになるんでしょうか?

澤井:
成果というよりも、お互いの目指す先が合致しているかどうかかもしれませんね。

武内:
すごく共感します。信頼というのは何かをしないと得られないという前提になりがちですが、良いチームを作る上では、まずその意識を変えることが必要ですし、もし新しいメンバーがたくさんいるチームでまだ信頼関係がそれほど築かれていないとしたら、リーダーがイニシアチブをとって信頼を深めていく行動が大切だと思います。

高井:
ロフトワークの場合だと、基本的にプロジェクトベースの仕事なので、割と答えは簡単かなと。それは、いかにプロジェクトマネジャーが、クライアントも含めてチームメンバー全員の目指すべき北極星になるようなプロジェクトのゴール・目的をいかに提示できるかってことだと思っています。

プロセスやアプローチは裁量の中でそれぞれの個性で好きにやればいいけど、そのベクトルがちゃんとプロジェクトの成功というゴールに対して向かっていれば、結果的にそれが協調になるのではないかなと思っています。


山本:
ありがとうございます。実は、あと10分くらいで終われという指令が来てますので、会場の皆さんに書いていただいた質問にも触れていきましょう。では・・・評価。これもチームビルディングの思想が非常によく表れますよね。皆さんのチームではどんな感じでやられていますか?

武内:
多分、NETFLIXは評価のシステムもすごい独特だと思うんですけども、いわゆる年間のレビューみたいなものがないんですね。代わりに、先ほどお話ししたようなフィードバックカルチャーっていうのがあるので、日々、常にフィードバックをしましょう、お互いに、っていうことがある意味で評価になってます。

一応、年1回、360度評価っていう仕組みもあるんですが、給料とかの評価にはつながらなくて、ただのピアレビューみたいな感じで、毎日のフィードバックの延長線としてやる。それを書いてもらう相手も自分で決めるし、お互い書くってわけでもないんですよ。それが評価システムとして機能してるのかどうかっていうと、なんか機能してる(笑)。ちょっと正解は分からないですけど。

澤井:
うちでは、360度評価が年に2回あって、ラインマネジャーとのレビューも年に2回。合計4回って感じでした。フィードバックは多いほうがいい、っていうのはうちの文化としてあるんですけど、にしてもちょっと多過ぎないかって話もあって、今は3回に減ってます。360度評価は、本人が選んだ人と、ラインマネジャーが選んだ人と、みんなからもらうようになってます。

アメリカの会社とかだと、360度評価のレビューが、まんま本人に届く仕組みのところも多いと思うんですけど、うちでは、一旦ラインマネジャーが吸収して、それを本人にまとめてお伝えする、っていうスタイルになってます。

あと、評価をする上で、ジョブディスクリプションはやっぱりすごく大事です。持ってるスキルとか達成して欲しいと思われているゴールがそれぞれ違うので、ラインマネジャーと本人とで常にジョブディスクリプションに立ち返りながら成長を見ましょう、っていうスタイルでやってますね。


山本:
ジョブディスクリプションは会社から提示されるもの?自分がこうしたいっていう意図は反映されるんですか。

澤井:
そこはキャンバスなので、同じ職種の人がみんな同じジョブディスクリプションというわけではなくて、自分はもう少しここの部分に注力したいとかは反映されます。もちろん、会社が気にしてるファクターっていうのはあって、このロールの人にとって、この価値基準はどういった行為です、みたいなことも書かれたりします。なので、わりと時間を掛けてお互いキュレーションしてる感じですね。

高井:
評価はすごく難しいなと毎回思っていて。常に試行錯誤しながら、毎回のように仕組みは変えたりもしてるんですが、今期は初めてOKRを取り入れて目標を立てて。それが、ちょっと言っていいか分かんないですけど、うちには合わなかったなと思っていて。

山本:
というのは?

高井:
OKRって会社全体の基準となる目標があって、それが部署だったりとか個々人に落ちていく形じゃないですか。でも、うちはプロジェクトドリブンな会社なので、会社全体の大目標から細分化された目標が、必ずしも個人の成長や目標とマッチするかっていうと、あんまりマッチしなかったっていう体感があったんです。なので、うちに合ってるのはボトムアップというか、個々人が成長のためにどうしたいとか、どうなりたいとか、そういう目標に対してちゃんとアクションできたのか、達成できたのか、みたいなことを積み上げていった先が会社の目指すべき方向になる、みたいなことなのかなっていう。

山本:
さて、次が最後の話題になると思いますが、もう僕が選ぶというより、せっかく会場の皆さんが書いてくださってるので、どなたか、これはぜひ聞きたいっていう方、いたら挙手していただけますか?

質問者:
最初のディスカッションと被るかもしれないんですけど、ルールベースのチームがカルチャーベースのチームにシフトしていくために必要なこととか、やるべきことを伺いたいなと思います。

武内:
みんなの本質的にやりたくないことはカルチャーに絶対ならない
と思うんですよね。朝9時に必ずあいさつをしましょうとか。カルチャードリブンの会社になるためには、なんで朝のあいさつが大切なのかっていうところに立ち返るのが大切だと思います。例えば、親切に接しようとか、人間的な価値定義っていうんですかね、そういうものに言い換えるだけでもだいぶ違うんじゃないかなって思いました。

ひとつひとつの言い方が、その人の個性を否定するものなのか、あるいはその人の個性がより引き立たせるものなのかとか、それは何かの行為を強制しているのか、あるいは行為を自然に促すものなのかとか、そういうふうに考えていけるといいんじゃないかなと思います。


山本:
では、そのようにして定義したカルチャーを単なる標語みたいにせず、きちんとチームに浸透させるためは、何をしたらいんでしょう。

澤井:
2つあるかなと思っていて。1つ目は、ある程度人材が流動的な空間じゃないと、ルールベースからカルチャーベースに変化するのは、やっぱり難しいんじゃないかなって思います。終身雇用が当たり前で、そこのカルチャーに親和性を感じない人がずっと何十年もいる、っていう前提だと、ルールベースのほうが絶対いいんだろうなと。そこは多分、日本にとってはチャレンジな
のかなって思いました。

2つ目は、最近あったエピソードなんですけど、上司が帰るまで帰れないとか、遅くまで残ってる人がいて申し訳ないから自分も帰れないとか。この人が帰るまで僕も帰れないのはつらいし、本当は僕じゃないあの人が残るべきだと思う、みたいな話があったんです。そういうのって結構、価値観の違いだったり、持ってる前提の違いだったりするから、一旦みんなで話したほうがいいかなと思ったので、話し合ったんですね。そういうことを繰り返していくと、心理的安全性が担保された気持ちになる人が増えるんじゃないかなと思ってて。

自分の前提を言うだけでも、勇気が必要なことだと思うんですよね。でも、チームみんなで1回達成しちゃえば、同じようなことを今度はもっと気軽に話せるので、なんかそういう積み重ねって大事だなって思います。


高井:
今の澤井さんの言葉はすごく納得感があります。明文化されてない、形に明確に現れ出ていないカルチャーっていうものをどう浮き上がらせるのかっていうのも、どう浸透させるかっていうのも、多分、明確な答えとか分かりやすい工夫ってないんだろうなと聞いてて思って。いかに地道なコミュニケーションをするかとか、何かについてみんなで意見を出し合ったり、話し合ったりしていくしかないのかなって思いましたね。

山本:
ほんと、そういうことですよね。
みんな、自分自身とか自分のチームでそれぞれ考えていくほかないっていうのが結論だと元も子もないですけど、でもこのイベントはそれでいいと思っていて。壇上から一方的に正解らしきものを投げつけて、ふむふむみたいな感じじゃなくて、もっとインタラクティブに対話できる場にしたいなと思っていたんです。

とは言え、思ったより一方的になったなっていう感覚もあったんですけど(笑)次回以降はもうちょっとインタラクティブにやりたいなと思っていますので、ぜひ今後もフォローしていただければありがたいです。今日は遅くまでありがとうございました。


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vol.16:「人口300人以下の村で体現する、グローカルな“生き方”」 — by Studio Sonda

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