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(連載小説)息子が”ムスメ”に、そしてパパが”ママ”になった日⑧

「やだ、運転手さんがチラチラとルームミラーであたしたちの事を見てるじゃない・・・・・。」

と写真館から自宅へ戻るタクシーの中で翔子は何気にふと自分たちを見る運転手の視線を感じた。

こうしてきれいに着物で着飾ってはいるが実は男だとバレないか気が気で無く、落ち着かないまま早く家に着いて欲しいと祈るような気持ちで車中で時間をやり過ごしていた。

自宅まではおよそ15分程度で着くのだが、今日の翔子にとってはその15分がとても長く感じる。

そして信号待ちをしていると運転手が後ろの座席の3人に向け、ミラー越しに視線をやりながらふと「皆さん全員お着物なんですね。お綺麗でいいですね。」と言う。

「あらそうですか?。ありがとうございます。みんなでお着物なんてそうそう無いもんで。うふふ。」とみどりが反応してそんな風に言ってくれているのを聞いてどうやら運転手とみどりの会話の口調などからして翔子とはるみが実は男である事がバレてはないように思え、少し安堵した。

ほどなくタクシーはマンションの前に着き、料金を払って車から降りると翔子は周りを気にしながらエントランスへと歩き始める。

「よかった・・・・・今のとこ誰も居ないわ。早くお部屋に戻らなくちゃ・・・・・。」

この着物女装姿のままでご近所さんに会ってしまうと何かとややこしそうな事になってしまうような気がしていた翔子は一目散に駆け出したいくらいだった。
でも着物を着ていてそれも慣れていない着物姿でもあるので動きは制限されてしまう為どうしても焦ってしまう。

しかし幸いに平日と云う事もあり、エントランスホールからエレベーターに乗り込むまでは他の住人や宅配業者等の他人に合う事はなく、着物を着た親子3人を乗せたエレベーターは上の階へと昇っていく。

「このままどうか途中の階で止まったりしないで・・・・・。お願い・・・・・。」

そう思っていた翔子だったが無情にもエレベーターは途中の階で止まった。

「やだ・・・・・止まっちゃった・・・・・。せめて誰か乗ってくるにしてもあたしの知らない人にして・・・・・。お願い・・・・・。」

そんな「お願い」をしてもどうしようもないとは分かっているがそうしているうちにチーンと云うチャイム音と共にドアが開く。

「うぃーす、あっすいませーん。乗っちゃいますね。8階いいすか?。」

乗ってきたのはデリバリーサービスのスタッフで着物姿の翔子たちをチラ見はしたが、彼は配達1件いくらで収入を得ているらしく、自分が運んできたものを配るのだけに専念していていくら着物姿と云ってもお客でもなんでもない翔子たちにさして関心を寄せてないようだった。

そしてエレベーターは小倉家の部屋のある階に止まり、ドアが開いた。
「お先ごめんなさーい!。」とまずみどりが言ってエレベーターを降り、ドアの「開/延長」ボタンを例のデリバリースタッフが押してくれている中を続いて翔子とはるみが半ば慌てるようにエレベーターを降りた。

幸いエレベーターホールには他に誰もおらず、いそいそと内股で草履を履いたままできるだけ急いで歩き、翔子はやっとの思いで自宅へと入った。

「はあよかった・・・・・なんとかマンションの他の住人さんのどなたにも会わずに済んだわ・・・・・。」

と部屋に入りドアを閉めて安堵した翔子は気持ちが緩んだのか玄関先にそのままヘナヘナとまるで花がしおれるようにへたりこんでしまった。

翔子にとって人生ではじめてのメイク、そして着物女装。
加えてその着物女装のままではじめての女装外出をするなど大半の女装子が段階を踏んでいくプロセスを僅か数時間で経験した。

それもあってさすがに精神的にもそして紐や帯で「拘束」された状態の着物姿と云う事で肉体的にもキツくなってきていたのでこうして翔子は玄関先にへたりこんでしまっていた。

「あら翔子ママ、どうしたの?。」
「うん、なんだかくたびれちゃったみたい・・・・・。はあ・・・・・。」
「そうなんだー。そりゃそうよねー。だけど今の翔子ママってなんだか色っぽいわね。うふふ。」

そう言われた翔子はへたりこんでしまっている事で着物の裾がはだけ、長襦袢ときものスリップが足と一緒にのぞいている。

また無意識のうちに翔子はまるで純女がするように横座りでへたりこんでいてそれを見たみどりがその姿をどうやら色っぽいと感じたようだった。

ただ言われた翔子は無意識のうちにとは言え、その女らしくて無防備な姿にハッとし、そして非常に恥ずかしさを感じた。

「やだあたし・・・・・疲れたからってこんなはしたない恰好しちゃって恥ずかしい・・・・・。せっかくの着物姿が台無しだわ・・・・・。」

そして恥ずかしそうに翔子はいそいそと立ちあがったのだが、その反面「着物姿が台無し」など着物での女装をはじめてのこの数時間で気持ちは元より頭の中の思考回路さえも全く女性化してしまっている事に気づいた。

玄関先からリビングに進むとソファで同じくおつかれモードのはるみがへたりこみように座っており、見るからに疲れているのとこのまま寝っ転がりでもされたら帯結びが潰れてしまいそうだったので着物を脱がせる事にした。

着ている着物や長襦袢に履いている足袋を脱がせながらみどりは「じゃあこれで女の子としてのはるみの時間は終わりねー。お着物脱いでいつもの陽翔に戻ろっか。」と言い、疲れているのか特に嫌がりもせずおとなしく着物一式を脱ぎ、ウィッグも外して洗面台でみどりにメイクを落としてもらってはるみは男の子の陽翔の姿に戻り、リビングに出てきた。

それを見て「じゃああたしもそろそろお着物脱いで着替えてくるわね。」と言う翔子だったが「え?お着物もう脱ぐの?。もったいないじゃないー。あたしはせっかくお着物着たからにはまだしばらくこのままで居るから翔子ママもそんなお着物脱ぐだなんて言わずに付き合ってー。」とみどりは若干不機嫌そうに言う。

「そ、そんな・・・・・。あたしも陽翔と一緒で慣れない着物姿で疲れてきちゃったしそれにもう充分お着物姿を堪能して楽しめたから・・・・・。」
「えー、そんな事ないんじゃない?ー。だって今日の翔子ママってメイクしてお着物着せてもらって随分女らしくなってるし、それに着物を着た事で女らしさがすっかり板についてきちゃってるわよ。これでお着物脱いで男に戻ろうだなんてねえー。だからぁーもう少し女でいたらぁ?ー。ねっ。」

確かに翔子はみどりの言う通り「女らしさが板についてきている」のは自分でも感じていた。
着物を着て着飾っている云う事もあるし、写真館で綺麗にメイクしてもらったお化粧もまだ落ちておらず今も女らしい顔のままだ。
それに着物の持つ「女性化養成ギブス」の成果も顕著に表れていて、今の翔子は身も心もすっかり女性化してしまっている。

「そ、そうね・・・・・。せっかくのお着物だもんね。あ、あたしやっぱりもう少しこのままで居るわ。」

元々押しに弱いところもあったし、このピンクの訪問着を着てきちんとメイクをした女の顔をしている自分はやはり嫌いではなく、それに自宅の中に居れば誰か訪ねて来ない限りは着物女装した自分を他人に見られる事も無いと思い、翔子は着物を脱いで男の姿に戻るのを先延ばしにする事にした。

そう云う事で着物姿のままリビングでスマホで自撮りした翔子になった自分の姿やお店のスタッフに撮ってもらった「女だらけ」の家族3人の写真を見たりしているとインターホンが鳴る。

「え、誰?・・・・・。」

自宅に居る限りは誰にもこの女装姿を見られる事はないと安堵していた翔子はそのインターホンが鳴る音に少し身構えたのだがそれを尻目に「あ、来た来た。はーい、今開けますねー。」と言いながらみどりがソファから腰をあげる。

するとやってきたのはお寿司の出前であり、どうやらみどりが宅配アプリで翔子の知らない間に頼んでいたのがデリバリーされてきたようだった。

時計を見るとそろそろ夕飯時が近づいていて、夕飯を作るのは今日は撮影で疲れていて面倒だし、それにせっかくなのでまだ着物をこのまましばらく着ていたいのだが、外食するにしても平日に着物で出かけるのも目立ちすぎるし、第一疲れていて外出自体が面倒になっていたみどりがお寿司の出前を取ったのだった。

また陽翔を「うに・いくら」で釣った手前、約束は守らないといけないし家族全員着物を着て綺麗な女の姿になった事でテンションの上がっているみどりとしては今日は奮発して「お寿司の気分」でもあった。

「あらおいしそー。じゃあ早速みんなで食べましょっ。そうそう翔子ママ、おつかれのところ悪いんだけど着物の上からこれ着てお茶淹れてきてくんない?。」

そう言ってみどりが差し出したのはなんと白の割烹着だった。
「翔子ママも折角着物を着て女になったんだから今日は”主婦”の気分も味わってもらいたいのー。うふふっ。」

翔子は共働きと云う事もあって普段から割に家事は手伝っていた方だ。ただやはり多くの家庭がそうであるように小倉家も女性(みどり)が家事の中心を担っていて、どうやらその一翼を今日はせっかく「ママ」になった翔子にやってもらおうと云う魂胆のようだ。

「う、うん・・・・・お茶淹れる位いいわよ。あたしやってあげる。」
そう翔子は言うと差し出された割烹着に手を通し、後ろの紐を緑に結んでもらった。

「あらー、翔子ママって着物だけじゃなくて割烹着も似合うんだー。いいわねー。」

とみどりに言われ、翔子は姿見の前に連れて行かれるとそこにはさっきまでの若奥様と云った風情から今度は「旅館の若女将」と云った風情の「女性」が着物姿で映っている。

そしてお湯を沸かし、リビングに戻った翔子は急須でお茶を淹れて湯呑に注いでいたのだが確かにその姿は旅館の若女将か仲居のようで、今にも「粗茶でございます。」と言ってしまいそうにも見える。

そんな和やかな雰囲気の中、3人は出前のお寿司をいただいていた。
陽翔は「ごほうび」で大好きなうに・いくらを食べる事ができて満面の笑みで美味しそうにお寿司を頬張り、みどりはそれを嬉しそうに見ながらお寿司を食べている。

そして翔子はレンタルのこの着物を汚してはいけないと割烹着を着たままで醬油が跳ねたりしないかヒヤヒヤ・ドキドキしながら箸を進め、今までにない緊張の中でお寿司を食べていた。

お寿司を食べ終えてしばらくまったりしていた3人だったが、そのうち陽翔はいつの間にかリビングのソファで寝息を立てて「沈没」していた。

「あらあら陽翔ったら・・・・・。」とそっと毛布を掛けたみどりだったが、掛け終わると翔子の方に振り向いてニヤリとした。

このみどりがニヤリとするのは大抵何か企んでいる時なのだが、今日のこの女装をさせられる迄の間でも同様で、また何かみどりは企んでいるなと翔子は感じ、そして案の定ニヤリとしたままみどりは近づいてくる。

「翔子ママぁー、今日はおつかれさまぁー。」
「お、おつかれさま・・・・・。」

と猫撫で声で寄り添ってくるみどりだったが、この猫撫で声で何か言う時のみどりは先程からのニヤリとした表情と同様にセットで大抵何か企んでいる事が多いから今度は何を言い出すのか翔子は半ば沈黙気味で聞いていると思いがけない事をみどりが言い出した。

「ねえ、翔子ママ・・・・・。今日これからしよっか・・・・・。」
「えっ?!・・・・・。し、”しよっか”って?・・・・・。」
「だからあたしと翔子ママで”アレ”しよっかってこ・と・よ。」

もちろん「アレ」とは「大人の夜の営み」だなんて事は翔子も分かっている。
だけど今の自分はメイクして着物を着た「翔子」と云う女性の姿になっている訳だし、まさかこの恰好のままで「アレ」をする事をみどりは望んでいるのだろうか・・・・・?。

などと思いながら翔子が戸惑っているとみどりがこう言う。

「だって今日の翔子ママって着物に着替えてからとぉーってもかわいいだけじゃなくて色っぽくなってるんだもーん。あたしなんだかそれ見て感じちゃってるかもー。うふふっ。」

女装した自分に妻が感じている・・・・・。その事が翔子はにわかに信じられなかった。

確かに女装した自分は言われてみれば着物のおかげもあるのだろうが清楚な感じがする美しさや奥ゆかしさに加え、多少の「色香」を感じさせてくれるところもあるように思う。

それに翔子自身もみどりには出会ってから今日まで和装したみどりを見る度にいつもとは違うバージョンアップされた「女らしさ」と着物姿ならではの独特の色香を感じていたのもまた事実だった。

と云う事は自分がみどりを見て感じていたあの独特の色香の伴った想いを逆にみどりも女になった自分にもそれを感じているのだろうか?・・・・・。

そんな感じで自分の心の中で答えが出ず、うつむき加減で押し黙っていた翔子にみどりは身体を密着させ、その長い指を頬とうなじに這わせてくる。

「ねえ、あたし着物着た翔子ママを抱きたくなってきてるの・・・・・。だから”アレ”するのいいでしょ?・・・・・。あん・・・・・。」

ぴったりと翔子に身体を密着してきているみどりだったが、今度は口から喘ぎ声に近い吐息が漏れてきた。

「あたし・・・・・着物の似合うきれいな翔子ママと今日は”アレ”をますますしたい気分だわ・・・・・。」

そう後ろに回ったみどりから翔子の背中越しに欲情を伴った声がし、そしてねっとりとした感触がうなじと耳たぶを甘い吐息と共に這うように包み込んでいく。

「はうん・・・・・あん、いやん・・・・・。」
「翔子ママ、そんな”いやん”だなんて言わないで・・・・・。あん、はあん・・・・・。ほら、感じてるんじゃないの?、うふふふ・・・・・。」

みどりは自分の舌を翔子のうなじと耳たぶに這わせてさっそく「前戯」を始めていた。

もちろん夫婦だし陽翔を授かっているぐらいだからこれまでも折を見て二人は夜の部に関して「事に及んで」きた。

ただ今日の様にみどりの方から舌を這わせたりする前戯から入るような事はなく、また翔子としても見た目も心も女性になっているとは言え、いつもとは違うここまでみどりにリードされると云う受け身のスタイルもまた初めての事だった。

「み、みどり・・・・・あ、あたし・・・・。」
「どうしたの?、翔子ママ。」
「なんだか・・・・・あたし・・・・・か、感じちゃってるの・・・・・あん、はうん、ハアハア・・・・・。」

と翔子は思わず「感じている」と口走っていた。
その表情は徐々にではあるものの恍惚を感じさせ、みどり同様興奮してきたせいもあり、息遣いも荒くなっていた。

また翔子はみどりに女性扱いされて愛撫されているうちに今までの男女のセックスでは感じた事のない部位が新たに性感帯として開発され、女になってしまうとこんなところでさえ感じてしまうのかと今までに無かった感じ方にますます身も心も女性化する翔子であった。

そしてみどりもまるで女性の様な喘ぎ声で悶える翔子を見て自分もより性的な興奮度が高まってきていた。

「そうなんだ、翔子ママは感じちゃってるのね。あん・・・・・。」
「うん・・・・・あたし・・・・・みどりに舐めてもらったり弄ってもらったりしているうちに感じちゃったの・・・・・。ハアハア・・・・・。」

そのうち二人はどちらからともなく求めるように唇を重ね合わし、お互い口に舌を入れてまさぐりあうようなねっとりとしたディープキスを始めた。

「うぐうぐ・・・・・チュパチュパ・・・・あん、はうん・・・・。」
「しょうこらまあ(翔子ママ)・・・・・あん、ああん・・・・・。」
「みろりいー(みどりー)・・・・・。ハアん・・・・・。」

ディープキスをしている事もあって口の中でねっとりと熱い唾液が絡み合う中でみどりの「下の口」、そして翔子の「ぺ二クリ」からも徐々にそれぞれ唾液と同じようにこちらもねっとりとした愛液が感じる事で滲みだしてきていた。

そして一旦キスを終えた二人はしばらく見つめ合っていたがみどりが翔子の帯に手を掛けた。

「翔子ママ・・・・・あたしもっと・・・・・欲しいの・・・・・。」

そう言いながらみどりは帯の上に結んであった翔子の帯締めと帯留めを外して帯揚げを解き、続けて帯枕を結んでいた紐をほどくとストンと帯が外れ、今度は巻き付けてある帯を外すようにほどいて行く。

帯が外れると伊達締め、そして腰紐を外したりほどいているうちにピンクの訪問着の前がはだけ始め、長襦袢が見え隠れしている。

「あん・・・・・あたしも・・・・・欲しいわ・・・・・はうん・・・・・。」

そう言う翔子は抵抗もせず、写真館でこのピンクの訪問着を着せてもらった時と逆の意味で「まな板の上の鯉」状態となり、じっとしたままでみどりに着物を脱がされ、そして感じていた。

「やだ、恥ずかしい・・・・・。でも今のあたしは”欲しい”の・・・・・。恥ずかしさよりエッチな気分が勝って”欲しい”の・・・・・。」

こうして陽翔が寝息を立てている横で起きないように声をできるだけ押し殺すようにして息も潜めるようにしたまま翔子とみどりは着物姿のまま股間を濡らしながら前戯と愛撫を重ねるのだった。

(つづく)









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