マガジンのカバー画像

tales

9
there's the story to tell...
運営しているクリエイター

記事一覧

翼を生やそうとする少年の話

少年は空を飛びたがった。ただ、それだけだ。それも飛行機や気球に乗るのではなく、自分の翼で空を羽ばたきたかった。
それでいつも、暇さえあれば、背中に念力を送って待っていた。

けれど、なかなかその時は来なかった。どんなに強く念じても、背中から翼が生えてくることはなかった。

それでも背中に異様なエネルギーを感じることは多々あった。彼はそれを兆候だと信じていた。

少年は成長し、サンタクロースの存在を

もっとみる

ねこのまおう に

子猫の姿をした魔王は、畏れひれふさぬ人間たちに、たいへん腹をたてていました。

そこで、とびっきり強大で、恐ろしげな様子をした魔物たちを呼び集めました。

小さな魔王の呼び声に応えて、魔界の城の広間に、大勢の魔物たちが集まりました。

猛る炎を吐くドラゴン、一つ目の巨人、三つの頭を持つ大きな狼、鉄をもひきさく獅子の爪を持つグリフォン……。

続々とつめかける魔物を見て、魔王は満足げに笑いました。

もっとみる

ねこぶとん そのさん

 男の子は、ねそべっている猫のおなかをなでてみました。
 いつまでもなでていたくなるほど、てざわりが良くて、ふかふかでした。

「遠慮しないですにょ。世界一の眠りを提供にょ。さ、早くのるですにょ」
 またうながされて、男の子は、猫の体をよじのぼるようにして、その腹の上に、ごろんと寝ころがりました。

 ほわっと体が沈むような気のしたあと、ふわあんと浮かびあがって、まるで空に浮いているようでした。

もっとみる

ねこぶとん そのに

夜、パジャマに着替えを終えた男の子は、お父さんとお母さんにおやすみを言ったあと、自分の部屋のドアを開けました。

手さぐりで電気をつけると、

「こんばんにょ。もうおやすみかにょ?」

みおぼえのある、大きな白猫が、うれしそうな様子で、部屋の真ん中にたたずんでいました。

そのとなりには、これまた大きな白い鳥がいました。

男の子は、「本当に来たんだ」とおどろきました。もしかしたら、あれは夢だった

もっとみる

カデット・コデット

カデット・コデット、スラリとしたお嬢さん。

白い肌にお似合いの、夕日色の帽子をもらってごきげん。

あんまり似合うので、嬉し涙がポトポト落ちた。

泣き続けるカデット・コデット、どんどん背が縮む。

足元には、波のような涙のあと。

カデット・コデット泣きすぎて、ついには消えちゃった。

今やそこには、黒い墓標がたつばかり。

かわいそうなカデット・コデットのおはなし、これでおしまい。

ねこぶとん

『ねこぶとん あります 時価』

そう書かれた看板の横で、大きくて、まっ白な猫が、言いました。

「ワタシがふとんになるのですにょ。とても気持ちよく、おやすみになれますにょ」

 男の子は、よくわからないまま、こたえました。

「まだお昼だよ。寝ないよ」

「それじゃ、夜に、おたくに出張するですにょ。料金は、前払いでお願いしますにょ。300万円にょ」

「高すぎるよー」

 男の子は、冗談だと思っ

もっとみる

ねこのまおう

うまれたばかりの魔王は、子猫そっくりの姿をしていました。

「せかいせいふく、するにゃ」

やみ色のマントを長く引きずりながら、人間たちに宣誓布告。

「あら、かわいい、ちっちゃい子猫」

「ばかにするにゃ。おろかなにんげんども、ちにひれふすにゃ」

だれも気にも留めません。

むしろ、かわいいかわいいと、なでくりまわされました。

小さな魔王は怒りました。

「ワシはまおうにゃ。おまえらみなごろ

もっとみる

ウロコインコ

同じ部屋にいるたくさんの中型インコ。

みんなにおやつをくばってまわる。

最初にもらった鳥は、とくいげに胸をそらして、

「わたくしが一番かわいがられている者です」

みたいな顔をする。