見出し画像

【読書感想】ロングセラー商品の舞台裏―ヒットを続けるのには理由がある

イントロダクション

50年、100年と愛されている商品もある日突然生まれたわけではなく、必ず企画、開発、営業・宣伝に秘められた物語がある。特に記憶に残った「ホッピー」「キューピーマヨネーズ」「龍角散」について紹介。

商品①ホッピー:ホッピービバレッジ株式会社


現在は「焼酎割り飲料 ホッピー」として呑む機会が多いだろう。

1948年に長野県産のホップから製造。当時はビールが高価で、ノンアルビールも大半は粗悪だっため、ホッピーは発売当初から「粗悪なアルコールもホッピーで割ると美味しい」と評判で大ヒット。1980年には日産20万本を迎え、一旦の最盛期を迎える。

しかし、サワーの台頭などで低迷期に。経営面では、他社のOEM生産を受注して乗り切った。この間、生産管理技術を磨き、黒ホッピーも開発したが、なかなか回復しない。

ここからの巻き返しは「ホッピーミーナ」こと3代目社長の石渡美奈氏が手動。美奈氏は小さい会社でもできる営業スタイルを貫く方針を徹底した。

例えば”トイレ掃除サービス”を飲食店に提供するなど、泥臭い方法で信用を得ていく。他にも、「キラドロ作戦」と銘打ち、講演会(キラキラ)時に付近のホッピー扱い店のリストを参加者に配ったり店に連絡した(ドロドロ)。

信用は社内外に広がり、ある日運送会社が、トラックのボディを広告媒体にしたら、と提案してくれ、大人気の”ホピドラ”がうまれた。こうした甲斐があり、2010年時点で日産30万本にまで成長している。

商品②:キューピーマヨネーズ:キューピー

個人的には、なろう系の異世界物語で主人公が金を稼ぐのに使うイメージのあるマヨネーズ。実際は人間の味は保守的であり、和食中心の日本でキューピー創始者の中島董一郎氏は1925年の参入時、非常に苦労した。

マヨネーズは卵、植物脂、醸造酢で作るが、卵黄を海外産の2倍使うことでコクを生むなど、日本人向けの味にして徐々に受け入れられたという。

発売当初のキユーピー マヨネーズ

その後、サラダの普及で市場は拡大しながら競争も激化。差をつけた方法が、製造工程の合理化、大量生産による価格下落だった。戦後から合計二十三回の値下げでシェア70%を獲得する。

他にも、酸化を防ぐために酸素を取り除く技術、健康志向が高まると卵からコレステロールを取り除く技術など、さまざまな技術を開発している。

だが、これらの製品開発費以上に、「キューピー3分クッキング」などの広告費を費やした年もある。製品に自信があるから、広告費にも力を入れられる。ある意味では理想・王道の商品展開だ。

商品③龍角散:株式会社龍角散

風邪薬の漢方薬「龍角散」の原型を開発したのは、江戸時代中期の秋田藩の典医を務めた藤井家だった。その後、各代の当主がブラッシュアップを重ねる。1963年に西洋医学の視点から外部機関3つに効果改善の検証を依頼したところ、いずれも「今が最上」という回答を得たそうだ。

昭和10年ごろの龍角散

漢方薬であり、原材料は植物の葉、茎、根などの生薬となる。他社の参入も容易だろうと思いきや、複数の生薬を龍度を均一に整えて製剤するのには高い技術力が必要だそうだ。

その後は海外展開やテレビの宣伝で売り上げを伸ばした龍角散だが、愛用者の高齢化で販売量が年々低下し、1995年で一度底を打った。

それまで龍角散は「風邪薬」として認知されていたが、風邪薬の競合が増えたのだ。そこで、「なぜ売れなくなったか」ではなく、「なぜヘビーユーザーは使い続けてくれるのか」を調べたところ、「のどケア」として使われていた。

そこからは「のどを綺麗にする」製品として広告戦略を大幅に変更。「龍角散のせきどめ液」などを市場に送り込む。別ブランドの顆粒薬「クララ」も「角散ダイレクトスティック」として生まれ変わらせる。これが大ヒットし、若い世代にも使ってもらえるようになった。


クララから龍角散ダイレクトへ


本書の所感

今回、紹介した製品たちはあまり市場初期の苦労が語られてないが、本書の中では「カッターナイフ」やスポンジたわしの「キクロンA」など、市場初期に苦労した製品も結構あった。食品系はあまり初期に苦労してない様子だった(本書の説明の範囲では)

最初の苦境を、どう乗り越えたか。大体は販売先や広告を適切な場所で出すことで突破してきたようだ。例えばカッターナイフは印刷所やデザイナー向け、キクロンAはとにかく主婦を狙って体験会を何度も開催した。「仁丹」のように、新聞広告を出すことを書面で約束して薬局に置いてもらうなど、豪胆な戦略もあった。いずれにせよ、市場初期に広告を打てる、一定期間売れなくても続けられる体力が必要なのだと思う。

全体的に、取材不足なのか説明が不足していて、企業の商品紹介ページのコピペのようになっているところもあった。だが、気になった商品は自分で検索すれば済むので、1つ1つはコンパクトな方が良いのだろう。よくまとまった良書。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?