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スマホ脳【読書感想】

スティーブ・ジョブズはわが子にiPadを与えなかった。ビルゲイツも、14歳まで我が子にスマホを持たせなかった。

実はITに詳しい人ほど、子供からスマホ・タブレットを遠ざけようとする。なぜならその危険性を知っているからだ。スマホと、スマホから繋がるサービスにはドーパミンを出し気持ちよくさせ、見続けたくなる工夫が目白押しだ。


①マルチタスクは悪 集中力が現代社会の”富”である  

私たちはスマホを観ながら別のタスクをするといったマルチタスクをしがちだが、マルチタスクは集中力と、作業記憶(ワーキングメモリー)に悪影響を与える。

現実には並行処理が得意な「スーパーマルチタスカー」もいるが、1~2%だそうだ。

問題は「サイレントモードでもスマホは私たちの邪魔をする」ということだ。

サイレントモードのスマホをポケットにしまった被験者と、教室の外に置いた被験者とでテストや、PCを用いたタスクを解かせたところ、後者の方が有意な差で成績が良かったという。

スマホは他人への関心も奪う。

スマホをいじらせずに、机に置いただけの状態でも、目の前の人と会話すると、そうでない場合に比べて「相手を信用しづらく共感しにくい」と感じる傾向が出たという。加えてスマホの普及以降、世界的に睡眠時間も減少している。

「スマホには人間の注意を惹きつけるもの凄い力がある。その威力はポケットにしまった程度では抑えられない」


②運動と言うスマートな対抗策

筆者は仕事以外でスマホやタブレットなどの「スクリーンタイム」は2時間以内に抑えようと提言する。

一方で、次々と流れてくる情報を対処するには、衝動を我慢できなければならない。1分ごとにスマホを手に取りたくなる衝動、、今読んでいる記事から離れてしまうのにリンクをクリックしたくなる衝動もだ。

こうした衝動を抑えるにに効果的なのが運動だ。衝動を抑える能力を図るストループテスト(色のついた色名単語の色を、その意味に惑わされないように回答する認知機能テスト)を受ける前に20分運動した大人は、結果が良かった。それもかなりいい結果が出たという。集中力に関しても、小学生に対して毎日たった6分の運動を教室でしただけで、集中力や情報処理が向上した。

なぜ運動をしたら集中力が増すのか?

「おそらく、私たちの祖先が身体をよく動かしていたからだ。狩りをしたり自分が負われたときには、最大限の集中力が必要だ」と筆者は分析する。

運動はメンタルにも良い影響を与える。心拍数は可能な限り上げた方が良いが、歩くだけでも十分な効果があるため、散歩、ヨガ、ランニング、筋トレ、なんでもよい。週に2時間、つまり45分を3回動かすと、身体と心のコンディションは良くなる。ただし、これ以上は特に変わらないらしい。

③テクノロジーで退化しないために


インターネットやスマホのせいで頭が悪くなり、鬱になるーそんなメディアの見出しをここ数年頻繁に見かける。

実際には事情はより複雑で、「デジタル化は人類が経験した中で最も大きな社会変革で、私たちが体験しているのは始まりに過ぎない」と筆者は言う。

スマホおよびインターネットの過剰摂取で精神状態が悪くなるメカニズムは複数考えられる。ストレスを引き起こして精神状態を悪化させることもあれば、若者の自尊心を壊してしまうこともある。いいねやハートで常に他人と自分を比較し、1秒ごとに同世代の若者に評価される。そして自分がヒエラルキーの下層にいると勘違いしてしまう。さらにスマホを使っていると社会的接触の時間が失われ、こうした心の不調をガードする時間が無くなる。

産業革命で摂れるカロリーが増え、餓死者は減った。今や餓死より食べ過ぎで亡くなる人の方が多い。カロリーを得ることが健康のメリットにもデメリットにもなるように、デジタル化も私たちの脳にもろ刃の剣となりえる。

ボタン一つで世界中の情報にアクセスできることは途方もない贅沢だ。しかし、毎日何千回もスマホをスワイプして脳を攻撃していたら、注意をそがれてしまうし、その状態が慢性化したらその刺激に欲求を感じてしまう。

チャットやツイート、「いいね」など小さなかけらをを取り込むほど、大きな情報の塊をうまく取り込めなくなる。それこそが複雑化する社会で最も大事なことのはずなのに。

本書の所感

誰もが「スマホの見過ぎは良くない」と感じていると思う。一方で、「スマホはドラッグだ!」だの「スマホは知能を下げる!」だの強い口調で糾弾されでも、スマホを捨てるわけにもいかないし反発したくなるだろう。

本書はスマホの弊害を深掘りして分析しながらも、悪と断じるわけではなく、人間の脳に合ってないから現実的な付き合いを考えていこうねとバランスよく提案する。こうした姿勢がベストセラーになったのだなと感じる。

個人的には、運動の効能が結構詳しく書かれており、とにかく運動をしたくなった。どうやら筆者の次回作「最強脳」とやらでもひたすら運動をしなさいと言ってるそう。それを電子書籍で読むよりは運動した方がよさそうだ。





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