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ワンオペママの戦場(夕飯後)

「どぉだー!」
19:20。娘が、夕飯の最後の1口を頬張り、空になったお茶碗を高らかに突き出す。残さず食べたよ!というアピールだ。「すごーい!」夫と私が、声を高くしてパチパチと褒める。「ほめて伸ばす」を教育方針にしているが、時々、まるで接待だなと第三者的視点で見る。

ゆっくり食べる夫も、皿の中がつくねハンバーグのカケラ1つになった。「なんか甘いもの食べたいな~。なんかある?」キッチンに立っている私にオーダーが入る。「えーと…ヨーグルトと柿、どっちがいい?」「ヨーグルトの気分かな」「OK」私は、冷蔵庫から明治ブルガリアヨーグルト(400g)を出す。

ブルガリは、1年前までは、108円で購入できた。物価高により、今は178円でスンと陳列されている。心情的に手が出せない。先日、珍しくイオンで、広告の品として128円で売られていたので、買いだめしておいた。

民間が物価高対応で景気よく賃金を上げる中、夫の給料は月3,000円しか上がらなかった。雀ならぬアリの涙。度重なる商品値上げの波に打ちのめされ、我が家はスタグフレーションの渦中に溺れる。ヨーグルトのブルガリまで気軽に買えないとは…。みじめだ。

器にヨーグルトを盛り、はちみつをかける。娘にも「食べる?」と聞く。「食べるー!」「OK」娘の分も用意する。私の足元には、息子が(おーい、乳くれぃ)としがみつく。

19:20。NHKニュースを見ながら、ヨーグルトを食卓に並べ、各々スプーンでつつく。私は息子に授乳しながら、片手でヨーグルトを頬張る。すると、娘が口を開く。「やっぱりいらない。」

なぬ!?「ブルガリよ?!お高いのよ?!」つい声を荒げてしまう。娘には、プレーンヨーグルトは酸っぱくて口に合わなかったようだ。それにまだ彼女の辞書に「物価高」はない。

仕方がないので、娘の分も食べる。五臓六腑のみならず、骨の髄まで沁みらせる。栄養になりますように…。南無南無。

プレーンヨーグルトは、様々なメーカーのものが売られているが、以前までは、ブルガリか雪印の「恵」を買っていた。時々グリコのビフィックスも買ったが、加糖だし、内容量が375gであることに気づき「ケチやな」と思ってしまった。

ただ、最近、近所のライフでビフィックスの無糖が売られるようになった。珍しかったのと、安かったのとで試しに買ってみたところ、よかった。

プレーンヨーグルトは、ゼラチンや寒天が配合された固形のものが多いが、ビフィックス無糖は絶妙なとろみがあった。ビフィックス加糖は固形なのに、無糖はとろみをつけるという、統一感ないグリコだが、はちみつが混ざりやすく、口どけのよい、このとろみに私はドはまりした。

行きつけのイオンでも売ってほしくて、ある日、ヨーグルトコーナーで品出ししている店員に聞こえるように、夫に話した。「ここビフィックスの無糖がないんよね~。ライフでは売ってるのに~。」少し大きな声で。

イオンは日本が誇る、一流スーパーだ。心なしか1人1人の店員もいきいきと働いているようにも見える。私の要望(つぶやき)に応えるように、数週間後には、ビフィックス無糖が陳列されていた。「お客様の声から品ぞろえました!」という丁寧な張り紙までつけて。ここまでイオンが客のニーズに忠実とは。さすが俺たちのイオン。応援するぜ。

私の「思い通り」がトップギアで駆け抜け、口角を爆上げでニヤニヤする私は、早速手を伸ばした。しかし次の瞬間、フリーズした。値札を見ると「178円」。膝から崩れ落ちた。買えねえ。

イオンのビフィックス無糖は、高くて誰も買い手がいないのか、商品のスペースは縮小された。「20%引き」のシールが張られているのもよく見る。私は「半額」のシールになるまで手を伸ばすことはない。満を持してイオンの一角に構えた期待の星は、今は肩身が狭そうに座り、哀愁をまとっている。私は直視できない。

ライフは良心的で、138円で売られている。月2で自転車をこいで買いに行く。イオンへの罪悪感の中、ライフのセルフレジで大量のビフィックスを通す。手つきはもう慣れている。

ハッ。また脱線した。回想しているうちに、息子は乳をくわえたまま寝落ちしていた。閉じた瞼の前に、まつ毛たちが扇を描くように寝転んでおり、可愛い。とりあえずベビーベッドに移す。

19:30。シンクに溜まった食器を食洗機に入れていく。夫はスマホでXを見ている。好きだな~。1日仕事を頑張ったんだし、つかの間の自分時間を堪能してもらう。

娘は、食洗機に並ぶ皿を興味深く触ろうとする。「お皿キレイじゃないから、見るだけね。」「お手伝いしたかったの!」「ありがとう。でも見るだけでいいからね。」台所仕事に興味を持ってくれるのは、嬉しい。

19:40。夫は、浴槽を軽く洗い、お湯張りボタンを押す。テーブルも拭く。私は、食器が片付くと明日の分の米3合を研ぐ。娘は踏み台を持ってきてまで米研ぎにも興味津々。もうちょっと大きくなったら、ぜひ手伝ってほしいな。

19:50。息子が目を覚ます。気が付くとベビーベッドに監禁されていることに泣く。哀れな囚人のように柵にしがみつく。「はいはい」と抱っこする。さあ、お風呂入ろうか。

そろそろ、「今日」のエンドロールが流れてきた。

また余計なことを書いていると、2000字超えてしまいました…。次回こそ「ワンオペママの戦場」最終回にしたいと思います。すでに夫が帰宅している以上、もうワンオペでもなく、戦場っぽくもなく、タイトルと内容がバナナとパナマくらい乖離していますが、よろしければ最後までお付き合いください。(笑)

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