見出し画像

人材で困らない中小企業は何が違うのか調べてみたら、経営者の姿勢に明確な違いがあった話

中小企業診断士のフクダです。
私の専門分野は食や農関連ビジネスの経営戦略やマーケティング、ブランディングですが、最近は人材関係のお悩みもよく伺います。特に飲食業やサービス業の人材不足は深刻です。

そんな中でも「特に人材には困っていません。募集すると結構な数の応募が来ます」という企業も一部にはあります。
この半年ぐらい「この違いはなんだろう」と思って詳しくお話を聞いて回りました。その結果、経営者の考え方が、同業で求人に困っている企業とは明らかに違う点がいくつかありました。
今日は、人材採用がうまくいっている企業(Good企業)と、困っている企業(Bad企業)の違いについてお話しします。

「今いるスタッフに続けてもらう」努力をしている

 求人にお金をかけても応募が少ない。ようやく採用してもレベルが低く戦力にならない。社内外でトラブルを起こす。尻拭いをさせられる中堅層が疲れて辞めていく。本来なら管理業務をすべきベテラン社員が、現場で走り回っている…
いま中小企業の現場でよく聞く話です。

そもそも何故、人が足りなくなるか。原因の半分は、今いる人が辞めるからです。Good企業の経営者は、まず、やる気のあるスタッフが辞めないですむような仕組みをつくっています。具体的には…

仕事を辞めないで済むよう、仕組みを作っている

やる気があるスタッフが辞める理由は、自分や家族の個人的な事情(病気・結婚・妊娠・出産・育児・介護・転勤・引っ越しなど)によって、フルタイム出勤や夜勤務・休日勤務・出張などが難しくなったから、というものが多いです。
Good企業の経営者は、スタッフの状況に応じて、リモートワークや時短勤務、出勤日数を減らしての勤務、職務内容の変更などを柔軟に提案して、仕事を続けられるよう配慮しています。
もちろん業種や職種によってできること、できないことはありますが、今いるスタッフを大切にしているという姿勢は、スタッフの会社に対する信頼感を高めてくれます。

働き方に関する価値観をアップデートしている

20年前と今では、若い人の働き方に関する考え方が随分変わっています。法制度も変わりました。Good企業の経営者は、「今は時代が変わったので…」と、休日等の待遇改善や多様な働き方に対して、柔軟に対応しています。

一方、Bad企業の経営者の口癖は「私の若かった頃は…だったのに」です。
特に飲食業など、ひと昔前は厳しい修行が当たり前だった業界の経営者は、無意識のうちに、パワハラでストレスを与えていることも。

責任に見合った権限を与えている

Good企業の幹部会議に参加すると、経営者が「◯◯さんはどう思う? どうすればいいかな?」など、幹部スタッフに意見や判断を求めているシーンをよく見かけます。幹部スタッフも忌憚のない意見を言っています。社長の顔色を伺うことなく、自分が判断を任されているという、心理的安全性が保たれているのです。

Bad企業は、売上などの責任は与えられるものの、経営上の権限や裁量は与えられていないことが多いです。中間層(店長など)の目を見れば分かります。会議などで目が虚ろになっていたら、相当まずいなと判断しています。

社風づくりや人間関係に気を配っている

ホーソン実験という有名な実験結果があります。
工場の生産性に影響を与えるものはなにか、工場の明るさを変えたり待遇を変えたり組立ての工程を変えたりして検証した結果、一番生産性に大きな影響を与えていたのは、職場内でのインフォーマル(自然発生的)な人間関係だったのです。

製菓関連のGood企業経営者は「社風づくりを大切にしている」と話されていました。この企業は、バックヤードに入るとスタッフの方々が笑顔で挨拶してくれて、お客さんから見えない部分の整理整頓もきっちり。「いいかげんな仕事をする人は、雰囲気的に居づらくなって辞めてしまう」とのこと。

サービス系Good企業経営者は、アルバイトの方々と定期的に食事会を開いていました。もちろん参加は自由、食事代は経営者のおごりです。こういう会をやっている企業は多いですが、経営者は聞き役に徹することが大事です。

Good企業の飲食店経営者は、スタッフがシフト休みの日に、家族や友達を連れてお店に食事に来ると大歓迎していました。家族や友人にとって「良い職場」のイメージを持ってもらうことは、次にお話する「リファラル採用」に繋がります。

リファラル採用に力を入れている

「リファラル採用」とは、自社のスタッフや関係者から人材を紹介して貰う方法です。以前修行していた会社、出身校などさまざまなツテを辿ります。縁故(コネ)採用との違いは力関係。あくまで採用する企業側に採用の権限があります。

中小企業は人材採用にコストをかけられないので、社風を分かっている知り合い経由で、なおかつ素性の分かっている方を紹介していただけるリファラル採用は、メリットが大きいのです。

リファラル採用の人材を紹介してもらえる絶対条件は、この会社なら紹介しても大丈夫!と信頼感を持ってもらうこと。そのためには、ここまで書いてきた内容が守られているかどうかが関わってきます。

同じ専門学校に、同じような勤務地、勤務条件で採用紹介をお願いしている2社を知っています。片方は毎年のように卒業生を採用できていて、もう片方はゼロ。ゼロの方の企業は、以前に何度か卒業生を採用したものの、みんな辞めてしまったそうです。先生も、自分の生徒を任せられる会社かどうか、よく見ています。

採用人材を「選べる環境」を作っている

採用応募者のなかには「トラブルを起こしがちな人材」も一定数混じってきます。

特に女性比率の高い企業は、インフォーマル組織でトラブルが起こりがちです。Good企業の経営者にアルバイト採用のコツを聞いたところ「職場以外の人間関係が広い人を選ぶ」と話しておられました。確かに、人間関係のトラブルを起こしがちな方は、閉じた人間関係で煮詰まることが多いです。

前職でトラブルを起こしていないか、といった確認も必要ですが、何より大事なのは「人を選べる環境=常時募集の門戸を開けておいて、良い人がいれば採用するという状態を作ること」です。

辞めたスタッフとも良い関係を保っている

辞めるスタッフに対して、Bad企業の経営者は「去るものは追わず」という姿勢の方が多いです。独立して辞めようものなら絶縁、などという経営者も多くいらっしゃいます。

Good企業の経営者は、働いてくれたスタッフとの縁を大切にします。
ある飲食関係のGood企業は、スタッフが独立開業する際、社員総出で開店の応援に行くと話されていました。
独立を目指しているような志の高いスタッフは仕事の覚えも早いそうです。

また、特に女性の場合、妊娠・出産・子育て・介護などで一旦退職した後、状況が変わったらまた働きたい、ということもよくあります。
最近は大企業でも「出戻り採用」を認めているところが増えています。

良いスタッフとは退職後もSNSなどで繋がっていて、戻ってきてもらえる、身内を紹介してもらえるという関係を保っています。

良い人材のループ作りが大事

企業の中で、スタッフは常に流動していきます。
Good企業は「今いる人を大事に育てて、続けられるよう工夫して、もし辞めても次の良い人が応募してくる」という良い人材のループ作りができている。

これから更に人材不足は深刻になっていきます。スタッフ不足で閉店・倒産する企業も目立ってきました。Bad企業の傾向に心当たりのある経営者は、今からでも意識を変えていくことをおすすめします。




私の開業の経緯はこちら

マイナビ農業で、私の開業についてご紹介いただきました!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?