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【ファジサポ日誌】94.成長の糧に!~第2節 いわきFCvsファジアーノ岡山 マッチレビュー

ATのラストプレーで追いつかれるという展開、特に昨シーズンのファジアーノ岡山は何度もこのような心身にダメージが残る失点を経験してきましたので、勝点1を獲得していながらも、どうしても後味の悪さが残ってしまいます。
「昨シーズンから何も変わっていないじゃないか!」という声も聴かれましたが、その感情も理解はできます。
このラストプレーのような、試合を決定づける局面で相手に「やらさない」ことが、今年のチームのテーマのひとつです。その目的を果たせなかったことは事実なのですが、試合全体を通じては「やらさない」ことに強くフォーカス出来ている面も見い出せましたので、この点はチームの進化を認める必要があると感じています。

今シーズン、チームにとってもサポーターにとっても大事なってくるのが、勝利出来なかった際の原因究明です。
次の試合までに、抽出された原因を基にチームは改善を図り、サポーターはそれを理解して次の試合の応援に繋げることが重要です。

このサイクルの繰り返しにより、最終的にJ1昇格のミッションは果たせると筆者は信じています。
このサイクルの定着こそが勝利文化の構築と呼べるのではないでしょうか。

拙レビューがサポーターレベルでの勝利文化の構築に少しでも貢献できるのでしたら本望です。
このいわき戦で出来たこと、出来なかったことは何であったのか?

考えていきます。

1.試合結果&スタートメンバー

DAZNで視聴していましても風の強さは一目瞭然でした。
いわき市の気象データを確認しますと、試合が開催されていた12~15時の時間帯の風向・風速は「南からの風・毎秒8m」となっていました。
ハワイアンスタジアムの位置を踏まえましても、おそらくこのデータどおり、また、このスタジアムが山上に位置することから、それ以上の不規則な強風が吹いていたものと推測されます。

山上のスタジアム、強風下という環境、アウェイ、前半1点リードという状況で思い出されるのが昨シーズンの第8節藤枝MYFC戦です。

このゲームも含めまして昨シーズンの春先を振り返りますと、岡山は強風下のゲームで苦戦することが多く、この序盤で多くの勝点を落としてきました。
単純比較はできませんが、時には自然も相手となるサッカーにおいて、いかにその時の状況に応じた柔軟なサッカーを展開していくのか、早速新生ファジアーノの真価が問われた一戦となったのです。

J2第2節 岡山vsいわき スタートメンバー

続いてシステムです。
お互い3-4-2-1ということで「ミラーゲーム」が予想されました。
その中でいわきの大幅な選手変更が目を引きます。
GK(21)立川小太郎、CH(13)鏑木瑞生、RSH(7)西川潤、CF(9)近藤慶一とセンターラインを中心に水戸戦から代えてきました。
前節水戸戦がほぼサイド(特に右サイド)からの攻撃に終始したという点、そしてビルドアップのミスから決勝点を献上したという点が田村雄三監督にとっては不満であったのかもしれません。

この水戸戦からみえましたプレビュー記事を改めて貼りますので、よろしければ参考になさってください。

一方岡山は、前節栃木戦と同じスタメンです。サブにルーキーMF(25)吉尾虹樹が入ってきました。キャンプ、TMと結果を残してきましたので、順当なベンチ入りと感じます。
水戸戦でもみられましたいわきのタイトな守備を破るには、(25)吉尾のようにワンタッチ、ダイレクトでパスを出せる、狭いスペースに入っていける(25)吉尾の技術は有効と思われ、試合前の期待感は高まっていました。
しかし、この唯一のサブメンバーの変更が結果的に響いたと、筆者は試合後に感じたのでした。この点は後ほど触れます。

2.レビュー

J2第2節 いわきvs岡山 時間帯別攻勢・守勢分布図

(1)風上を制したとは言い難い前半

「時間帯別攻勢・守勢分布図」をご覧いただきましても分かりますとおり、岡山は風上の前半に迎えた決定機の多くを決め切ることが出来ず、得点が前半終了間際のCKからの1点のみに止まった点が非常に痛かったと思います。
もちろん、岡山は前半自分たちが風上であることは分かっていますので、早い時間帯での先制を目指し、序盤から攻勢を仕掛けます。
2分55秒、いわきのクリアボールを奪ったCH(24)藤田息吹からCF(9)グレイソン→FW(19)岩渕弘人のシュート→RWB(88)柳貴博のシュートに至った場面は、高い位置での奪還とWBもフィニッシュに加わるという、今シーズン岡山が目指している攻撃を体現出来ていた場面といえます。

しかし、前節水戸戦同様にいわきは守備時、ゴール前にしっかりと人数を割く「リトリート型」の守りで抵抗。GK(21)立川のファインセーブもあり、なかなかゴールをこじ開けることが出来ませんでした。

古巣対戦となった(19)岩渕は前半、昨シーズン中盤以降このスタジアムでゴールを決めていた時のイメージのまま、左サイド(時に右サイド)をドリブル、プレスと奮闘するのですが、若干の気負いがあるのかフィニッシュの精度のみを欠いてしまいます。

木山監督就任以降の岡山において、前半のうちに勝負を決めてしまったという試合は昨シーズンの開幕戦(磐田戦)ぐらいであったかもしれません。
もっと以前からそうであったと思いますが、岡山は90分全体を、フルに選手交代も使いながら、じっくり勝機を探っていく試合運びが染み着いてしまっているのかもしれません。
この前半は出色のデキであった(9)グレイソンのポストプレーを活かしながら、いわきゴールに迫るものの攻撃時は、風上の有利さに逆に焦っているような、どこか「落ち着かない」戦いになっていた印象が残りました。

どちらかと言えば、前半やりたいことが出来ていたのはいわきの方であったと思います。繰り返しになりますが、水戸戦でほぼ使えなかった中央を、先発に抜擢された(13)鏑木を経由してボールを運べた点、RCBでの起用が2試合目となった(19)大西悠介が岡山(19)岩渕のプレスに手を妬きながらも、前へ持ち運ぶことが出来るようになっていた点、そしてRCH(7)西川潤が中盤、サイドにしっかり落ちることでミラーゲームにズレ(違い)をつくろうとしていた点から、いわきは風下ながら岡山陣内へと前進していました。
「攻勢・守勢分布図」の5~25分の時間帯です。

ここでは12分27秒からのいわきのビルドアップを振り返りたいと思います。

J2第2節 いわきvs岡山 12分27秒~いわきのビルドアップ

岡山がいわきのビルドアップに制限をかけてサイドに誘導、LWB(17)末吉塁のところではめようとした場面です。
通常であれば、RWB(15)加瀬直輝とのマッチアップになるのですが、ここで走り込んできたのが(7)西川でした。攻撃の選手らしい鋭いターンで(17)末吉を一瞬で剥がし、中へドリブル、右で張っている(15)加瀬へパスを出します。

水戸戦でもそのドリブル突破を魅せつけていた(15)加瀬でしたが、自陣深い位置から相手を背負ってボールを受ける場面が多かったという反省がいわき側にあったと思われます。
この(15)加瀬を高い位置に据え、前向きにボールを受けさせ、彼の強みを最大限に発揮させるねらいが(7)西川の動きからは感じとれたのです。

こうして、いわきがデザインした地上戦により、風下の前半、自分たちの時間帯をつくることに成功していた点は、逆に岡山側にとっては前半を五分に終わる(攻勢・守勢分布図より)内容をもたらされてしまったといえます。

この試合でのいわきは、この西川のプレーや、後半から(19)大西をCHに上げる、最終盤は4-2-4にするなど終始、岡山とのギャップをつくることに積極的であったのです。
自分たちの形で、(9)グレイソンや(19)岩渕の個でミラーゲームを真正面から勝負する岡山とは対照的でした。

この場面に戻りますと、実は岡山の守備にも進境がみられました。
内へとドリブルを進めた(7)西川にはRSH(17)谷村海那にパスを出す選択もありましたが、ここは(24)藤田がきっちりパスコースを消します。そして、良い形でボールを持った(15)加瀬の突破に対しては、RCB(43)鈴木喜丈が積極的に対応します。
自陣サイドのボールホルダーを自由にさせないという点は今シーズンの岡山の守備の特長のひとつかと思われます。この場面も(43)鈴木が(15)加瀬に勝つのですが、各選手1対1が強化されている点も見逃せません。

岡山の守備のもう一つの新たな特長はシュートブロックです。
相手のシュートに対して、コースを切るのではなく、まずは体を投げ出し確実にブロックすることがこの2戦、徹底出来ています。
この2戦GK(49)スペンド・ブローダーセンにセービング機会がほとんどないことからも、未然にピンチを防ぐ守備が徹底できいるといえます。
「やらさない」守備の構築という点にはチームとして十分フォーカス出来ている証といえるのではないでしょうか?

こうして岡山、いわきとも攻守の攻防に見ごたえがあった前半でしたが、最後にセットプレーで1点獲れたにも関わらず、岡山サイドとしては少々物足りなさを感じたのは、やはり風上での戦いであり、もっといわきを圧倒出来る可能性があったからだと考えます。

(2)退場後の試合運びに一考の余地はあったのか?

後半開始、最初の15分、勝負を決めたい岡山とホームで勝利したいいわきの激しい攻防が繰り広げられます。岡山はRWB(88)柳貴博のドリブルなどからチャンスを創出。55分、こぼれ球に反応したRCB(4)阿部海大のシュートは枠内に飛ばしてほしかったところでした。

63分CB(18)田上大地のDOGSOによる一発退場は彼だけの責任ではありません。いわきが一旦ビルドアップの構えをみせて、CB(3)照山颯人が前線にロングボールを蹴るのですが、(3)照山に対する(9)グレイソンのプレスが甘くなってしまった。そして、このロングボールが風に乗り、(15)加瀬をみていた(4)阿部の目測を誤らせてしまったことも原因の一つです。
後半も(15)加瀬が高い位置をキープしていた。実はこれは前述しました前半のポジション取りも影響していたのかもしれません。
(18)田上としては、この場面こそ最後の砦(49)ブローダーセンに任せても良かったのかもしれませんが、風下に立っている後半という点、あと自分で責任を取ろうという意識も働いたのかもしれません。

ちょうどこの時間帯から、いわきのボールの伸びや弾幕のはためき方から風が更に強くなったことがわかりました。更なる風下の中、岡山はいわきの攻勢に晒されることになります。

後半はより風が強くなって、我々が風下で自陣から出る時間が少なくなり、相手コートに入った時にはいいプレーができていたが、それ以外のところで押し込まれる時間が増えてしまった。

押し込んだ後の長いボールの処理で少しミスをして退場者を出し、風がある中では下がってしまうとゴールにボールが向かってくるので、できるだけ下がりたくはなかったが仕方なかった。

あとは粘りきることを選択したが、粘りきれなかった。

次は、しっかり気持ちを切り替えてやっていきたいと思っている。

J2第2節 いわきvs岡山 試合後の木山隆之監督のコメント ファジアーノ岡山HPより

CBの中央を失った岡山はFW(27)木村太哉に代えてCB(5)柳育崇を投入します。ここに今シーズンの岡山の選手層の厚さが垣間見えるのですが、この(5)柳を入れたこともあり、木山監督は逃げ切る選択をしたかのようにみえました。(18)田上の退場シーンのボールの伸びをみれば、不用意にラインは上げられませんし、ましてや1人少ない状態。責められない選択肢であったと思います。

しかし、優勝を目指すのであれば、もう一歩こういう苦しい場面での戦い方を進化させられないかとも思うのです。それは自陣マイボールの運び方です。

この退場から約30分、いわきは数多くのセットプレーを獲得します。
キッカーCH(24)山下優人の狙いは、ニアにいる(9)グレイソンと(17)末吉の間のスペースで、執拗にこのコースを狙ってきます。
いわきの選手がその狙いはしっかり感じてはいるのですが、風の影響もあってか上手くすらせず、幸運にも岡山側のゴールキックとなっていました。

しかし、ゴールキックは(49)ブローダーセンのパワーをもってしてもハーフウェイラインに届かないほどボールが押し戻されるシーンも散見されました。

自陣から長いボールを前に蹴るだけでは、なかなか相手陣内にボールを運べなくなっていた岡山、1点を死守するためにも相手陣内で時間をつくる必要がありました。後半、(18)田上が退場するまで、空中戦では分が悪いと踏んだ岡山は(49)ブローダーセンからビルドアップを選択する場面もありました。
1人少ない状況では難しいと承知のうえで、ビルドアップで相手陣内に持ち運ぶことにもチャレンジしてほしかったです。
岡山は73分にMF(15)本山遥と(10)田中雄大を投入していましたので、この2人にボールを持たせた前進は可能であったのではないかとも思うのです。

更に(9)グレイソンからFW(99)ルカオへのスイッチにより、前で(9)グレイソンほどはボールが収まらなくなってしまったという点も岡山にとってはマイナスでした。やはり(99)ルカオにはいわき3バック脇のスペースに走らせたかったところです。

そして、これは結果論でしかないのですがFW(29)齋藤恵太の不在が響いたと感じます。自陣から相手陣内スペースへ走れる選手が結果的にこの試合は必要であったということです。しかし、これは結果論ですので巡り合わせが悪かったとしか言いようがありません。

3.いわきの執念

この試合のいわきは全体を通じますと、岡山とのギャップ(ズレ・違い)をつくることに労を惜しまなかったといえます。
その中で唯一形を変えなかったのがセットプレーでのコースでした。
前述したように(9)グレイソンと(17)末吉の間のスペースを狙っていました。それが一番最後のセットプレーでGK(21)立川の上がりによりギャップをつくってきました。大外から走り込むことで(21)立川が強くボールを当てることが出来た分、いわきに同点ゴールが生まれました。
岡山の各選手はこれがラストプレーと、ボールに集中していた、し過ぎていたように見えました。(21)立川への警戒がもし緩んでいたのでしたら非常に悔やまれます。

4.まとめ

以上、非常に悔しいアウェイいわき戦のドローを振り返りましたが、いわきはホーム開幕戦ということもあり、収容5,048人のハワイアンスタジアムに4,241人ものサポーターを集め、密集度が高い応援を終始展開しているようにみえました。そんな地元の期待を背に、ベンチワークも含めて常に「工夫と動き」をみせていたいわきが、風も含めたホームアドバンテージにより勝点1を獲得したのだと思います。
岡山も個の力という部分ではいわきに十分やれていた面も認められ、この点は今後の戦いにおいても自信になりそうです。
一方で、退場者を出す、不利な気象条件などの不規則な要素を目の前にした際に、「個の責任」のみでは補えない部分があり、これをチームワークによりいかに乗り越えていくかが今後のテーマになりそうです。

今回もお読みいただきありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
地元のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。


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