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【ファジサポ日誌】101.重馬場を制するには~第8節 ファジアーノ岡山 vs 横浜FC~

今頃は桜の季節であると同時に筆者には降雨のイメージもあり、雨天の試合自体に驚きはないが、最近その降り方は少々異常と言える。
しかし、春先に限らず、これからも季節の移り変わりにはこのような悪天候とつきあっていかなかければならない。不良のピッチコンディションの下、正念場を戦わなければならない時もくるかもしれない。
この夜の敗戦は来るべき時の糧にしたい。
振り返ります。

1.試合結果&メンバー

筆者は仕事の都合で現地観戦は間に合わず、DAZN観戦となりましたが、試合開始直前、映像からも雨足の激しさ、徐々にピッチに水が溜まっていく様子を確認することが出来ました。
いわゆる「重馬場」です。
シーズン前の順位予想等で一般的に下馬評が高かったチームとの対戦は、今回の横浜FCが最初でしたが、前半だけで3失点するという苦しい内容で今シーズン初敗戦を喫してしまいました。

J2第8節 岡山-横浜FC メンバー

続いてメンバーをみましょう。
この試合もDF(43)鈴木喜丈は欠場しました。
木山監督も「整わなかった」という表現を使っていましたので、やはり大事には至っていないと推測していますが気になるところです。
代わりにLCBには(18)田上大地が入ります。これまでは中央のCBを務めていたこともあり、攻撃参加の機会は限られていましたが、精度が高くパワフルなキックに、ロングスローと飛び道具を持つ(18)田上のまだ見ぬ一面を観られるかもしれないと期待が高まります。中央のCBには(5)柳育崇、そして(88)柳貴博が出場停止のRWBには(16)河野諒祐が入ります。(16)河野のアーリークロスからCF(9)グレイソン、セットプレーから(5)柳(育)とのホットラインに期待がかかります。

それにしてもCH(24)藤田息吹や(17)末吉塁にはなかなか休息の時が訪れません。(24)藤田のスタッツを見てしまうと、なかなか代えられない現状も理解出来ますし、LWBに関してはおそらくバックアッパーの(2)高木友也や(42)高橋諒のコンディション不良が予想されますが、2人がパンクしない内に何とかどこかで休ませたいものです。

岡山は全体的に重いピッチを見越してパワーがある選手をスタメン&サブに置いてきたと言えるでしょう。

一方、横浜FCは前節の仙台戦からスタメンの変更は2人に止まりました。
J1浦和から移籍のCF(38)髙橋利樹が初スタメンを飾ります。

2.レビュー

J2第8節 岡山-横浜FC 時間帯別攻勢・守勢分布図

繰り返しになりますが、試合中に大雨警報も出るほどの雨量、選手の視界がある程度遮られていたのではないかと思えるほどの激しい雨、そして立つこともままならないピッチコンディションの下、両チームの選手がフェアにファイト、怪我人を出さずに90分プレーしたことに賛辞を送りたいです。
とてもサッカーをやるようなコンディションではなかったと思います。その点は割り引いてこの試合は観なくてはいけないと考えます。

また、いわゆる「滝行」に打ち震えることなく現地で声を枯らしたサポーターにも感謝です。筆者も大雨の試合の経験はありますが、こんな天候で気持ちを出していくにはマインドの転換(開き直りともいう)が必要です。いつも以上にこの日のサポーターは「戦っていた」ように筆者には見えました。

さて、今回は(時間の関係で)章立てせずに試合展開を振り返ります。
「時間帯別攻勢・守勢分布図」でもわかりますように、岡山にも横浜FC陣内に攻め込むチャンスは、前半から結構あったのです。
(5)柳(育)を入れてきたメンバー構成を踏まえても、岡山側にセットプレーでの得点の意識はあったと思います。20分(5)柳(育)がCKからフリーでシュートを放った場面は惜しくも味方のCF(9)グレイソンに当ててしまいゴールとなりませんでしたが、岡山にも先制点の匂いがしていたのです。
しかし、前半全体ではこうしたセットプレーのチャンスを増やすことが出来ませんでした。この点が非常にもったいなかったと思います。

その原因は岡山のボール運びにあったと思います。

このような天候、ピッチコンディションですから両チームともボールを繋ぐことは難しくなります。自然とボールを蹴り合いながら前進、セカンドボールの回収を狙うことになります。
序盤はお互い様子見の蹴り合いが続きましたが、落下したボールが十分バウンドしない、また不規則とみるや、横浜FCは各選手の距離を短くしてこの回収を確実に行うようになりました。その上で素早く前線奥へラフに送り、割り切ったセットプレー狙いに切り替えていたとように見えました。
このボール運びの方針の見定めが早かった要因はLCB(24)福森晃斗の存在で、彼がセットプレーを蹴るチャンスさえつくり出せれば得点する可能性は高まるとの計算はあった筈です。3得点は出来過ぎであったかもしれませんが…。
Jリーグでも屈指のキック力を誇る(24)福森が、J2へプレーカテゴリーを下げた要因のひとつに走力の衰えを指摘する記事を読んだことがあります。確かに今シーズンは(24)福森の裏を狙っていたチームもありましたが、この試合に関しては岡山が(24)福森の裏に配球してもボールが止まってしまうので有効なチャンスにはなりにくく、(24)福森が自身の持ち味であるプレースキックに集中出来る心理状態にあったという推測も成り立つと考えます。
そのキックに関してですが、映像をみる限りは最初の2失点はノーチャンスであったと思いました。DFラインとGKのちょうど中間、背走しながらではジャンプしても届かない高さから急激にボールにブレーキが掛かり味方の選手に落ちてくる。移籍後、合流間もないCF(38)髙橋利樹が難なく合わせられたのも(24)福森のキックの質の高さを現していると思います。
そして、横浜FCには中村俊輔コーチが控えています。
彼の指導が福森のキックの質を更に向上させているという面もあるのかもしれません。
岡山のセットプレーでの守りはおそらくゾーンであったと思います。マンマークで守るという選択肢はなかったかなとも考えましたが、跳ね返す力が強い岡山の最終ラインにおいてカウンターに繋げる意味でもゾーンディフェンスは理には適っており、これはあくまでも結果論に過ぎないと感じました。
岡山最終ラインの弱点ともいえる背後にボールを落とした(24)福森を称えるべきです。

序盤の蹴り合いの中から、一早くピッチコンディションに対応したのが横浜FCでしたが、岡山も全体的には戦えてないことはなく、そんな展開の中で同じようなセットプレーから連続して失点した点は少なからず選手に動揺を与えたと推測します。3失点目、CH(4)ユーリララのマークを外した点は、ゾーンディフェンスの弱点を突かれた感じはありますが、岡山のミスであると感じました。

さて、岡山のボール運びにおいてこの日のストロングはRWB(16)河野であったと思います。(16)河野のクロス、キックへの期待もありますし、前述の(24)福森の裏を突けるという点でもこの試合の岡山の大きなホットゾーンであったと思います。
岡山にとって不運であったのが、この(前半の)相手陣内右サイドのピッチ状況が極悪であったことです。この付近に水が溜まることは岡山の古参サポであれば皆知っていることなのですが、岡山のストロングを出すにあたってこのゾーンでの攻防を避けて通ることが出来ませんでした。

SPORTERIAさんから岡山のボールロスト位置です。
後半のデータも加味されていますので、一概には言えませんがやはり相手陣内右サイド寄りでのロストが多くなっており、このエリアでボールを繋げなかったことが、(24)福森のキック以上に岡山が優位に試合を展開出来なかった大きな要因になったと考えます。

このボールロスト位置からもう一点指摘したいのが(9)グレイソンの落としの回収が上手くいかなかったという点です。これはピッチ上の問題もありましたし、前述しましたように横浜FCの陣形がコンパクトなのに対して、岡山のそれは若干間延びしていたように見えました。岡山の選手は(9)グレイソンの落としに対して、長い距離を走って拾いに行っていたと思います。この点に関してはCH(24)藤田息吹がこぼれ球を拾った後にきっちりと横浜FCに制限を掛けられていたことが影響したと思うのですが、それよりもボール運び全体としてもっとセットプレーに直結するよう相手陣内奥へと蹴り出すボールを多用するといった状況に合わせた変化が欲しかったと筆者は思いました。

セットプレーに直結するボール運びを行えていたかどうかの差、この点も勝敗に影響を与えたと思います。

さて、後半岡山は一気に4人代えを実行します。
後半、無理する必要がない横浜FCに対して、試合内容的にはやり返せた点は岡山の大きな収穫であったと思います。(18)田上がロングスローを連発していましたが、前半からこれぐらいの大胆さはあって良かったかもしれませんね。ゴールはなりませんでしたが、FW(11)太田龍之介がボックス内でのプレータイムを増やせたことも今後に繋がると思います。もうワンアクション速いタイミングで撃たないと相手の寄せが来てしまう、そんな感覚を掴んでくれていればと思います。
木山監督はもっとパワー寄りの選手たちで前半を臨むべきであったと語ってくれました。確かにこの日の「重馬場」であればパワーは必要であると思います。一方でこの試合で輝いた選手、(24)福森や岡山途中出場のFW(8)ガブリエル・シャビエル、そしてLWBに入った(25)吉尾虹樹をみていると「重馬場」を制するには実は「高い技術」が必要と感じたのでした。

3.まとめ

以上、横浜FC戦を簡単ながらまとめてみました。
岡山としては不可抗力的な面はありながらも、ピッチを含めた状況に合わせた柔軟な試合運びが出来なかったことが主たる敗因であったと考えます。
一方、横浜FCは「相手の対策」をさせると強いチームであると改めて感じました。これは岡山戦に限らずですね。
あと、上手く試合を運ぼうとしないことですね。この試合の後半のような大胆さを前半からいかに出していけるかが今後の課題になったと思います。

秋、三ツ沢で雪辱しましょう!

今回もお読みいただきありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
地元のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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