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察しの悪いフリをする大人はティッシュを取ってくれない

「ティッシュ!」
「なんだって?」
「ティッシュ!!」
「ティッシュが何?」
「テ  ィ  ッ  シ  ュ  !!」
「私、ティッシュって名前じゃないよ」

そう言いながら黙々とカレーを食べ続ける私に
さらにイライラとして立ち上がる子ども

「だから! なんでわかんないの?」
「何が?」

イライラしたように手を差し出していたが
ハッと気づいたようだ
「ティッシュとって!」

ようやく気づいたか

「あー。ティッシュが欲しかったんだね」

シュッと音を立てながら取り出し手渡す
ようやく手に入れたテッシュで口周りをふく
7歳の女の子

察しの悪い大人は私。

私たちは親子ではない
先生と生徒という関係でもない
姪っ子とちょっとめんどくさい叔母さんだ

察しのいい大人に囲まれている子ども

お茶が欲しくて
「ん」
とコップを差し出す姪っ子に

昭和のオヤジのようだな〜と思った

こちらも
「ん」
と空になったコップを見れば
お茶が欲しいことはすぐにわかるので
おかわりを入れる
それは普通だった

でも、ある日
彼女がうちに遊びにきた時に
「お腹すいた〜」
と言ったが私は何か違う作業をしていたので
すぐに対応をしなかった
するとキッチンの棚を開け始めたので
「え? 何? 勝手に開けないでよ」
と言ったら
「お腹すいたって言ったじゃん。
 何にも言わないから自分で探してたの。
 なんでわかんないの?」

はぁ?
私はその時すごくイラッとした
私のこのイライラはどこからきたものなのか
分析してみた

まず彼女は自分が要求したと思っている
でも「お腹がすいた」と状態を言っただけだ

確かに
「お腹がすいた」と言われたら
「何か食べる? 何食べたい?」と聞く
それが対話なのかもしれない

大人がすぐに対応しなかったから自分で探した
大人に頼らず自分で解決しようとした
それを褒めるべきという意見もあるかもしれない

でもお茶の時と同じく
言わずとも相手が察してくれる
行動してくれるものだと思っていることに
イラッとしたのかもしれない

そして何より勝手に人のうちの棚を開けておいて
相手が悪いという態度が許せなかったのかもしれない



「あのさ、言いたいことがいろいろある」
「まず、いくら仲良しとか親戚の家とはいえ
 自分のうち以外で勝手に棚を開けたり
 冷蔵庫を開けるのは失礼だからやらないで」
「だって、お腹すいたんだもん」
「お腹すいたらやっていいことなの?」
「…よくない」
「じゃあ、今度からどうしたらいい?」
「開けない」

でた! 
ゲームでかんしゃくを起こす子と同じ
怒られたことや
注意されたことは
「やらない」
になるのだ

「普通に”お腹すいた”っていえばいいよ」
「言ったじゃん」
「お腹すいたから何をして欲しいの?」
「そんなの言わなくてもわかるじゃん」
「確かに言わなくてもわかるけど
 相手に何もお願いしてないでしょ?
 自分がお腹すいたことを言っただけで
 やって欲しいことがあるならちゃんと言いな」
「めんどくさ!」

食べ物を用意するってめんどくさいことを
相手にしてもらうのに
一言お願いするのはめんどくさいというのだ!

「あのね、私はあなたの親じゃない。だから
 やってもらって当たり前
 わかってくれて当たり前の人じゃないの。
 何かを相手にしてもらう時はちゃんと言葉で
 言わないとわからないよ」

すると、何か心当たりがあるのか
さっきまでの勢いがスッと落ち着いて
「…それ、学童の先生にも言われた。
 ”ちゃんと言葉で言わないとわからないよ”って」
「どんな時に言われたの?」
「消しゴム忘れたから”消しゴムない”って言ったら
 ”じゃあどうするの?
 ちゃんと言わないとわからないよ”
 ってイジワルだと思ってた」

彼女は学童の先生がイジワルで言ったと思っていたようだ
でも、そうではないことに今の会話で気づいたのだ

「消しゴムないから?」
「貸してください」
「お腹がすいたから?」
「何かお菓子ちょうだい」
「荷物が重いときは?」
「重いから持って」
「困ったときは?」
「今、困ってるから助けて!」
「なんで困ってるのか追加してみて」
「友達とケンカして困ってるから助けて!」
「できたじゃん!!
 それならすぐに何がして欲しいかわかるよ」

千本ノックのように言葉にする練習をした

その様子を見ていたこの子の親も参加して

「トイレ」
「トイレ行きたい」
「お茶」
「お茶ちょうだい」
「宿題わかんない」
「宿題わかんないから一緒にやって」
「明日、プール」
「明日プールだから水着の用意して」

すると子どもも反撃とばかりに
「ごーはーんー」
「ごはんの準備できたから食べよう」

と、大笑いしていた

彼女は言葉の出ない赤ちゃんではない

もうペラペラと話のできる7歳の女の子だから
あんまり先回りしすぎなくても大丈夫だ

そして、彼女たちは帰っていった

別の日に彼女のうちでカレーをご馳走になっている時に
それは起こった

「ティッシュ!!」
「ティッシュが何?」
「テ  ィ  ッ  シ  ュ  !!」
「私、ティッシュって名前じゃないよ」

そう言いながら黙々とカレーを食べ続ける私に
さらにイライラとして立ち上がる子ども

「だから! なんでわかんないの?」
「何が?」

イライラしたように手を差し出していたが
ハッと気づいたようだ
「ティッシュとって!」

「あーティッシュが欲しかったのね。
 忘れてたでしょ?」

と聞くと
恥ずかしそうにいつまでも口を拭いていた
それを私に渡して言ったのだ

「ゴミ箱に捨ててください」

「ヤダよ。自分で捨てて」

「なんでー!!」


お願いすればなんでもやってくれると思ったら

大間違いなのだ

ティッシュも自分で取れ!


yakko




 今年の夏はワークショップちょっと頑張ってます

8月にchisatoがフィンランドから帰国するので
初めて2人で対面のワークショップもしたいなと計画中
詳細はInstagram  @workshop.omenaで


よかったら遊びに来てくださいね〜

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