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ASDの決断への「染まりやすさ」

こんにちは。あすぺるがーるです。


今日はASDの被影響性についてお話していこうかなと思います。


被影響性とは?

ここでいう被影響性(染まりやすさ)は、ASD当事者さんが抱える「決断」に関する問題のことです。


具体的には

・ひとつの選択肢を絶対化してしまうこと
・やると決断した行動への「0か100か指向」
・一度した決断を撤回できないこと

です。


この「染まりやすさ」は、ASD当事者さんにとってどんな影響を与えるのでしょうか。

次の項から、詳しく見ていこうと思います。


「決断」に青春を呑まれて

これは、「染まりやすさ」によって大きな失敗をしてしまった、ASD当事者である25歳の大学院生の話です。

本人によると、小さいころは、好き勝手にふるまっていたという。知的に秀でた少年であり、小学校の頃は授業が楽しくて、休み時間が辛かったと回想している。(たぶん発達障害の精神病理ⅠP.145)

「頭良い系ASD」のテンプレのようだった彼。


しかしそんな彼の行動は、中学に入ってから一変します…

中学時代になって、自分は人とどこか違うと感じるようになり、それまでは関心を向けることのなかった同級生達の行動を観察し始めた。
その結果、「勉強することは悪であり、規則を守らず、地べたに座り込んで騒いだりするのが正しい生き方である」という結論に達した。そして勉強を放棄し、わざと遅刻をするなど、生活態度を百八十度転換した。
高校に進学してからも、その方法を踏襲し続けたが、卒業を目前にして、それが誤りであったことに気づき、愕然とした。
これから受験勉強を始めるにしても、何年も浪人することになるので、それでも格好がつく一流大学に入らなければならないと猛勉強を始め、三年後に目標とする大学に入学した。(同P.146)

彼は、周囲の社会に適応しようとして「規則に逆らう」という決断をした結果、その決断に「取り込まれて」しまったのです。


彼はこの失敗により、自分の進路に関して決断を下せなくなってしまっています。

「人生を間違えた。今の勉強をやっていてもどうなるものでもない」


彼の行動にあった落とし穴

このエピソードから分かる彼の行動には、3つの重大な落とし穴がありました。


「逆らわない」という選択の存在を無視

「自分は人とどこか違う」と認識し始めたころの彼には、「今まで通り規則に従い、勉強を続ける」という選択肢も残されていたはずでした。


しかし、当時の彼には「逆らわない」という選択肢が見えていませんでした。

周囲への適応を急ぐあまり、決断にあたって「逆らう」という行動に伴うリスク、「逆らわない」ことで得られるメリットを考慮できなかったのです。


そのため、本来彼に最適だったはずの行動から大きく遠ざかってしまいました。


逆らうことに「専念」してしまった

いったん採用したら、文字通りに受け入れ、文字通りに実行する。そして取り込まれてしまう。サボっているように見えて、いつでも挽回できる程度には勉強をしておくなどという器用なことはできない。(発達障害の精神病理ⅠP.146)

ひとつの選択肢に基づいた行動をしながら、他の選択肢で得られるメリットを失わないように行動することが、彼にはできなかったのです。


ひとつの決断をすることは、他の行動をとる決断によって得られるもののうち、いくつかを失うことを意味しています。

規則に逆らい勉強を怠れば、規則に従って勉強も続けることによって得られたはずの「将来の安定」や「自尊心の獲得」から遠ざかってしまうでしょう。


しかし、メインの行動とサブの行動を並列して行うことで、どちらかの選択に行動を偏らせることによるデメリットを少なくすることはできます。


他の学友たちはそれを知っていたため、周りにはサボっている「ように見える」行動をしながらも、陰では勉強し続けていました。


彼には、サボっている「ように見える」学友たちが陰で勉強していることが分からず、そして「サボっているように見せかけること」と「勉強し続けること」を両立できなかったのです。

その結果、自らの将来の可能性を狭め自尊心を失ってしまいました。


「逆らう」という選択を撤回できなかった

彼は高校卒業を間近にして「逆らう」という選択によって不利な状況に追い込まれているのに気づきながらも、それを撤回できませんでした。


もちろん、撤回したところで彼の状況が大きく改善する見込みは小さかったでしょう。

しかし、少しの間でも「逆らう」ことを撤回すれば、ほんのわずかだとしても状況を好転させることができた可能性はありました。


(おそらく)俗に言う「勉強」に対する能力は優秀な彼なら、なおさらのことです。


一度選択したことへの撤回のできなさは、大学を卒業し、院生になってもなお彼の言動や思考に影響を与え続けています。

専門外の哲学に親しみ、本業の方には身が入らない。(発達障害の精神病理ⅠP.144)


決断に「染まらない」ためには

これらの決断に関する課題は、ほとんどASDの特性によるものだと言って間違いないと思います。

実際、この文を書いているASD当事者の私にもかなりグサグサ来ました。


そのため、解決には適切な他者の助けを必要とします。


カウンセラーにつながる

自分の人生に関わるような大きな決断を下そうとしているときには、必ずカウンセラーに相談するようにしてください。


もちろんカウンセラーにも質の善し悪しや合う合わないはあるでしょう。


しかし仮に合わないカウンセラーにあたってしまっても、自分一人の頭の中で決断するのに比べれば、はるかにマシだと思います。

自分の考えが相談によって言語化されることで、考えを人に共有しやすくなるからです。


可能なら対面が望ましいですが、対面での相談がどうしても不可能な場合、オンラインカウンセリングという手もあります。

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とりあえず大事そうなことは、信頼できる人間に話してから決断しましょう。

誰にも話さず、一人で決断するのだけは止めておいた方がいいです。


自分の考えを「絶対」にしない

せっかく良いアドバイスをもらっても、他者の意見や提案を頭ごなしに否定するようでは意味がありません。

それは、カウンセリングにあたっても言えることです。


もちろん何をするにも、あなたの「感情」は尊重されるべきです。

カウンセリングもその他のアドバイスも、「行動」を変えるものであるべきで、「感情」を変えるようなものであってはなりません。

「感情」を尊重できない人とは、カウンセラーであっても手を切るべきでしょう。


しかし、あなたとは異なる考えを述べていても、あなたの「感情」を尊重してくれる人のアドバイスは、まず受け止めるようにしましょう。


ただ、アドバイスを受け止めてから、そのアドバイスに従うかどうかは、あなたの自由です。(命にかかわることは別かもしれないけど…)


他人の意見や新しい考えに柔軟になれるかどうかは、数値で表すことはできませんが、重要な賢さのうちのひとつです。

相談する相手にも「絶対の正解」は保証できませんが、それはあなたに対しても言えることなのです。

だからこそ、相手の意見を取り入れることが「より良い正解」に近づくのに必要なのです。


「自分であること」を認めよう

あなたの「考え」を絶対化するのは危険ですが、あなたの「感情」や「存在」は、いついかなるときも絶対です。



あなたが仮に、どれだけ「間違って」て、無力で、反社会的だったとしても、あなたがあなたであることは否定されてはならないのです。



もとより、彼が道を踏み外してしまったのも、「周囲の人に自分を合わせなくてはいけない」と考えてしまったことが原因でした。



もちろん、他の人の要請に合わせて、あなたの「行動」をある程度変える必要はあるでしょう。

しかし、物事に対する「行動」を変えたら、物事に対する「感じ方」も変えなくてはいけない、なんてことはないのです。


同じ物事に対する行動と感じ方は、必ずしも1対1で対応するものではありません。

「自分の感情は不動だ」と考えてるあなたにも、同じことに複数の感じ方を抱いたり、感情が変わったり、揺れ動いたりする可能性は十分にあるのです。

そしてそれは、決して異常ではありません。


仮に見えなかったとしても、世の中の物事のうちの大半は、常に揺れ動き、変化し続けているのです。


あなたも、揺れ動く世の中のうちの一つなのです。



もう一度言います。


あなたの「感情」や「存在」は、いついかなるときも絶対です。


あなたがどれだけ無力でも、反社会的でも、虐げられていても、イジメやハラスメントや中傷を受けていても、あなたがあなたであることは絶対なのです。



社会から要請される最低限のラインと、あなた自身の幸せに大きく反する行動を変えることは求められるかもしれませんが、それを変えたとしても、あなたはあなたなのです。



そしてあなたがASDであることも、あなたの「存在」のうちのひとつです。

つまりASDであることで、あなたの考えや行動が人と違うことも、誰にも否定する権利はないのです。


体感できなかったとしても、心の片隅に入れておけば、生きるのが楽になるでしょう。



どんな決断にも、多かれ少なかれリスクはあります。


変えなくてはいけないこと、変えた方がいいこと、変えない方がいいこと、そして絶対に変えてはいけないこと。


あなたにとってそれが何なのか、他人の力を借りて見極め、十分に検討し、そして行動に移すことが求められているのです。

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