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花見飯としてのスーパーの惣菜

会社員時代、スーパーの惣菜で夕食を済ませることは珍しくはなかった。会社の近所にあるスーパーで、30%引きになっているようなものを買って食べるのだ。

肉よりも衣の方が厚いのではないかというカツ丼。一見すると大きいけれど、実はエビの部分は小指くらいの大きさしかない天丼。そこに化学添加物たっぷりのタレなどがかけられていて。

そんなものを食べるたびに、

「これは人間の食べるものではない。家畜の餌だ」

と思ってきた。

会社のことが大っ嫌いなのもあって、そんな味がしたのかもしれない。会社から家畜のように扱われているという感覚の中で食べるスーパーの惣菜は、家畜の餌という味がした。

しかし桜が咲き乱れる季節。友達や夫と「これから花見に行こう」ということになった時。

「食事はどうする?」

と話し合って、自然スーパーに足が向く。スーパーで適当な惣菜を買って、花を見ながら食べようということになる。

薄っぺらい肉に衣たっぷりのカツ丼や、一見大きく見せているけれど実は小さなエビの天丼。その他もろもろを友達や夫と買い込んで花見に行く。

会社員時代は「家畜の餌だ」と思っていたスーパーの惣菜が、親しい仲の人間と花の下で食べるととても美味しく感じられる。

むしろスーパーの惣菜は花の下で食べられるために作られたのではないかと疑うほど美味しい。

同じものであるはずなのに、食べる風景によってこうも味が異なるものなのか。

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