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夕遊の厨房

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おいしそうな本、写真、旅で出会った素敵なお店など、食いしん坊が喜ぶあれこれをまとめています
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大好きな人たちと見たい映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』2015年、インド。

数年前にものすごく評判がよかったので名前は知っていたけれど、劇場に行く時間がなくて未見だったインド映画。今週末から1ヶ月くらいの間、日本各地で再上映されることになったようなのですが、フォローしている映画詳しいアカウントから一斉に、「絶対見て!」メッセージであふれてきたので、久しぶりに夫と映画館デートしてきました。 ストーリーの基本は単純。迷子の女の子を、お人好しのおじさんが送り届ける話。予告編だけは見たことあったので、イランの有名なキアロスタミ監督の『友達のうちはどこ?』み

とうもろこしも神様。特別展『古代メキシコ マヤ、アステカ、テオティワカン』

子どもの頃に見た、アニメ『アンデス少年ペペロの冒険』。「黄金のコンドルよ~♪」のオープニングソングと、ラストの黄金のとうもろこしエピソードは、なぜか強烈に印象に残っています。特別展『古代メキシコ』。ようやく行くことができました。 とはいえ、今のメキシコっぽいイメージは、大好きな岩本ナオさんの『マロニエ王国の七人の騎士』の動物の国。ここでジャガー王と対面できる期待に、わくわくして出かけました。 アメリカ大陸で、独自に発展した「もう一つの文明」メキシコ。ヨーロッパとはまったく

金沢の「和」を堪能する女子旅

今、旅行をするなら、やはり金沢。阪神淡路大震災体験者としては、些少なりとも復興支援に協力したいし、サンダーバードは金沢まで行けるもの最後になるし、和菓子大好きだし。ということで、2月下旬、友だち&娘の3人で「古都」を堪能してきました。 さて、私のおめあては菓子木型美術館。行ってみると、和菓子の加賀藩御用菓子司森八さんの2階にあって、かなりプライベート空間なことにびっくり。でも、ものすごく見応えありました。 年度末の怒涛の仕事を無理やりやり繰りしての金沢女子旅。楽しすぎまし

かわいくて、楽しい。グルメの基本。映画『祝宴!シェフ』2013年、台湾

ひさしぶりに楽しい映画を見たくて、選んでみました。主人公はいかにも台湾っぽい、ゆるい現代っ子。料理人だった父親が嫌いで、家を出て、芸能人をめざしている。でも、オーディションに落ち、彼氏にふられ、借金を抱えて母親のところに逃げるけど、母親も借金取りに追われている。借金を返すため、母親や成り行きの協力者たちと、料理コンテストにチャレンジ! 台湾的なギャグをこれでもかと詰め込んだストーリーに、登場人物も多いのですが、これがとっても笑えました。なんだかわからないうちに協力する羽目に

だしを極めたドキュメンタリー映画。『千年の一滴』日本・フランス、2014年

2013年12月に放送したNHKスペシャル『和食』をベースに、柴田昌平監督がパリに行き、フランスやイギリス、アルゼンチンの海外スタッフと仕上げたおいしすぎる作品。 劇場で予告編を見て、すごく楽しみにしていた作品。第1章は「だし 大自然のエッセンス」をテーマに、しょうゆやみりんといった調味料の「うまみ」のもととなる麹カビを特殊な撮影によるミクロ映像で楽しませてくれる。第2章「しょうゆ ミクロの世界との対話」は、長い歴史の中で磨かれてきた日本人の知恵と和食創世のドラマ。 料理

おいしいってなんだろう?『人間は脳で食べている』伏木亨

とっても興味をそそられるタイトルの本。いくつものトピックがほどよい文章でまとまっていて、その1つ1つが面白いです。でも、この本をまとめて何がいえるか、というとなかなか全体像がイメージしにくい。それは、著者の伏木先生も書いているように、おいしさに関わる脳の情報処理のメカニズムは、未だよくわからないことが多いからなのかも。 ともあれ、内容がおもしろかったことは間違いないです。例えば、甘味と旨味を感知する受容体は、人間に1種類づつしかないけど、苦味や酸味に対しては3

あたり前の今ができる限り続くように。『世界からコーヒーがなくなるまえに』ペトリ・レッパネン、ラリ・サロマ―

世界中で手軽に飲まれているコーヒー。コーヒー豆の世界の取引額は、原料の中で石油の次に多い。そして、石油と同様、産出される地域は限られている。ブラジル、ベトナム、コロンビア、インドネシア、エチオピアが5大生産国。数百万人以上がコーヒー産業に従事している。 コーヒーの灌木は、赤道を挟んで北回帰線と南回帰線に挟まれた地域が自然の生育に適した地域で、コーヒーベルトと呼ばれている。気温は年間通じて摂氏二〇度を超え、火山灰の土壌が好ましく、日光と雨量がバランスよく降り注ぐ必要がある。

金城武がひたすらステキ。映画『恋するシェフの最強レシピ』中国、2017年。

明日、ワクチンを打ちます。副作用が不安です。解熱剤でいいといわれる薬を3種類、それからポカリスエットの粉を一箱、さらに食欲ない時用にフルーツ味のこんにゃくゼリーを全6種類。それでも、やっぱり不安です。 なので、なにも考えなくて良さそうな映画を見ることにしました。金城武と周冬雨主演の楽しい恋愛コメディです。周冬雨の役は、若いけれど才能がある、上海の老舗ホテルの料理人。金城武は、ホテル買収を目論むグローバル企業の御曹司。2人は、偶然全くホテルと関係ないところで出会い、第一印象か

600万分の1の出会い。映画『めぐり逢わせのお弁当』インド他、2014年。

名作だと評判なので、週末の夜、娘と観ました。普通、インド映画と聞くと連想するのは「3時間越え、歌あり、ダンスあり」ですが、この映画はどれも当てはまりません。インドを舞台にした上品な恋愛物語です。 インドのムンバイには、お弁当配達を専門にするダッバーワーラーという人たちがいて、彼らは大量のお弁当をとても効率よく運んでくれます。各家庭から集める人、行き先ごとに分ける人、そして職場に配達する人。誤配率は、なんと600万分の1だとか。 彼らの伝統は百年以上。インドがイギリスの植民

牡蠣好きにはたまらない。『牡蠣礼讃』畠山重篤

牡蠣大好きな私は、よくスーパーや魚屋の特売コーナーで牡蠣を買っていました。ただ、娘が甲殻類や貝がダメなので、ほとんど買わない年もあれば、自分の仕事のためにエネルギー確保で買う年もありした。 手頃な牡蠣が入手できたときは、以前はブロッコリーと牡蠣のグラタンが定番でした。でも、最近ではおいしいものを少しだけ食べたい年齢になったので、年に一、二度くらいが普通になっている気がします。 夫が職場から持ち帰ってくれる、殻付き牡蠣を電子レンジで1分ちょっとチンして、白ワインと一緒にいた

おいしいと楽しいがつまってる。『リンゴの文化誌』マーシャ・ライス

マーシャ・ライスは、ニューヨークの歴史と建築に関する本を書いているライターさん。ガーデナーでもあるので、植物に関する本もあるとのこと。本書は、自宅にあるリンゴの木の由来から、世界各地のリンゴまで、幅広く語ってくれる内容になっています。 中央アジアからシルクロードを経て、世界に広まったリンゴ。そんなリンゴにまつわる、山盛りの知的コラムとステキなカラー写真が最高です。なんせ、写真がオールカラー! なのに、お値段が手頃で本当にすごいです!! 例えば、1935年にアメリカ・ヴァー

北海道を旅したくなる名作でした。『ゴールデンカムイ』野田サトル

『ゴールデンカムイ』は、日露戦争後の北海道を舞台に、アイヌが隠した大量の金塊を探す物語。戦争帰りの元日本兵杉元佐一とアイヌの少女アシリパのバディものでもあります。明治日本の歴史文化紹介と北海道サバイバルに、アイヌ文化&グルメ紹介などなどを追加して、とにかく内容てんこ盛りの作品。読んでいると、ものすごく北海道に行きたくなります。 アイヌに関しては専門の中川裕教授が監修されているので、専門性もバッチリです。主人公の相棒アシリパちゃんは賢くて強い(というか、たくましい)。父親直伝

【鳥取】三朝温泉と倉吉白壁土蔵群と梨の旅

出張ついでに、ちょっと足を伸ばして観光する。家族もそれぞれ、奈良、香川から合流しました。3人が倉吉駅についたときには、ちょっと天気が心配でしたが、なんとか雨にも振られずにホッ。 まずは、お昼に倉吉名物の牛骨ラーメン。牛骨ごっつおらーめんさんは、駅から5分もかからない場所にあるし、なによりおいしいので通ってしまいそうです。 倉吉駅からバスで旧市街の白壁土蔵郡へ。江戸、明治時代の建物をリニューアルして使っているとのことで、昔のままの雰囲気が残りつつ、地元の人がそれぞれ小さいお

シェフと料理と人生の物語。映画『マーサの幸せレシピ』ドイツ・オーストリア・イタリア・スイス、2001年

映画の舞台はドイツのハンブルクのレストラン。主人公は腕のいいシェフのマーサですが、彼女は精神的なストレスを抱えていました。料理に絶対の自信があるのに、理解のあるいいお客ばかりではないからです。レストランのオーナーは彼女を信頼してくれていますが、客に対してはマーサに譲歩をうながします。でも、マーサは料理に関して絶対に譲らず、お客とケンカもしばしば。 マーサは親しい友人もいなければ、パートナーもいない一人暮らし。レストランのオーナーにはカウンセラーに通うように指示されて、一応通